【きょうのテーマ】大衆演劇の魅力を探る 飯塚セントラル劇場 子どももお年寄りも大笑い

大塚伸一支配人に話を聞くこども記者たち。後ろにはこれまで公演してきた劇団のポスターがはられていた
大塚伸一支配人に話を聞くこども記者たち。後ろにはこれまで公演してきた劇団のポスターがはられていた
写真を見る
公演の最後は華やかな舞踊ショーで幕を閉じた
公演の最後は華やかな舞踊ショーで幕を閉じた
写真を見る
前半の芝居が終わり、楽屋で化粧直しなどをする様子も見せてもらった
前半の芝居が終わり、楽屋で化粧直しなどをする様子も見せてもらった
写真を見る
役者に近づき、着物の帯に花の首飾りをはさむ観客
役者に近づき、着物の帯に花の首飾りをはさむ観客
写真を見る
写真を見る

 ●役者と観客、距離近く

 「大衆演劇」とは、その名の通り、一般の子どもからお年寄りまでの「大衆」のための芝居だ。こども記者たちは、昔ながらの娯楽を味わえる飯塚セントラル劇場(福岡県飯塚市)を訪れ、その魅力を探った。

【紙面PDF】きょうのテーマ=大衆演劇の魅力を探る

 ■ ■

 「ちょいと待っておくんなせえ!」。江戸時代を思わせる着物姿の若い男が、けんかをする2人の男を止めに入った。スポットライトに照らされた険しい表情と力強い声にドキッとした。上演されていたのは「劇団花月」による時代劇「安中草紙」。若い男とその親分や母親たちとの人情物語で、腰につけた刀を振り回すなど迫力も満点だ。

 観客や劇場の雰囲気によってセリフや動きを変える「アドリブ」が楽しい。「おまえは飯塚から出て行け」「ここの劇場のシューマイ弁当はうまいよ」。役者が物語にたくみに盛り込むアドリブに、私たちと客席のお年寄りたちは一緒に何度も大笑いした。観客は、役者が登場すると「よっ」と声をかけたり、友達と弁当を食べたりして、くつろいで盛り上がっていた。

 ■ ■

 芝居の後は、劇団花月の一條こま座長(24)があいさつや出演者を紹介する「口上」をのべた。役者たちは客席を回って、前売り券などを直接販売していた。休けいをはさみ、第2部は舞踊ショー。日本舞踊や宝塚歌劇団のような派手なダンスなどが次々と披露された。踊り終えた舞台上の役者に近づき、着物に何かをはさむ観客がいた。ひいきの役者へのおこづかい「ご祝儀」や花の首飾りだそうだ。

 終了後は役者たちが劇場の出口に並び、観客一人一人に手を振り、握手をして見送った。あっという間の3時間がすぎた。劇場支配人の大塚伸一さん(51)は「お客さんが『また来るね』と言って帰っていくのがうれしい」と目を細めた。

 ■ ■

 観客の中には、毎週のように公演を見るという人もいた。隣の田川市から来た60代の女性は「役者の一生懸命な姿」に魅力を感じるという。70年以上の大衆演劇ファンだという女性もいた。大塚さんは「飯塚では昔、石炭を掘る炭鉱の労働者たちの娯楽として大衆演劇が人気だった」と教えてくれた。今も、毎年全国の劇団の座長が競演する「座長大会」が市内の嘉穂劇場で開かれるため、芝居好きが多いという。

 もともと映画館やイベントホールだった所を改装し、昨年12月に開館したセントラル劇場は全120席と大きくはない。その分、役者と観客の距離が近く、会場が一体となって盛り上がるという。私たちも観劇し、「かた苦しくて古い」という大衆演劇のイメージは吹っ飛んだ。友達にもおすすめしたいと思った。

 ●全国を旅して公演 「劇団花月」一條こま座長に聞く

 大衆演劇の専門誌「演劇グラフ」によると、全国には約150の大衆演劇の劇団があり、全国を旅しながら、劇場や温泉施設などで公演している。飯塚セントラル劇場の出演劇団は月替わり。11月29日まで出演する「劇団花月」の一條こま座長(福岡県大牟田市出身)に話を聞いた=写真。

 劇団花月には、小学3年~73歳までの14人の団員が所属する。一條座長の初舞台は2歳の時。劇団は毎月別の場所で公演するため、子どもの頃は毎月学校を転校。勉強とセリフを覚えることに必死だった。「友達とも遊べずやめたいと思ったこともある」そうだ。

 それでも、現在の総座長の母親から19歳で座長を引き継ぎ、今では「舞台が好き」と笑う。観客の反応が直接伝わる大衆演劇ならではのおもしろさがたまらないという。

 こども記者も見学した楽屋では、1部と2部の幕あいに役者たちが忙しく化粧直しや着替えをしていた。1回の公演で約10回衣装を変えるという。カツラは約50個、着物も約千着あり、トラック2台にのせて運ぶというから驚いた。

 公演中は毎日来場する観客もいるため、芝居や舞踊ショーの演目は毎回異なる。「若い人にも興味を持ってもらうため、宝塚風の衣装や流行のKポップも取り入れる工夫をしている」とアピールしていた。

 ●わキャッタ!メモ

 ▼飯塚セントラル劇場 火-金曜日と千秋楽が午後1時開演、それ以外は午後1時と午後6時開演。前売り券1500円、当日券1800円、高校生まで800円。11月20日の1周年特別記念公演は8劇団の座長が出演し、午前11時と午後5時開演の2公演。当日券は6000円など。劇場は飯塚市吉原町のセントラルビル4階。飯塚バスターミナル徒歩3分。劇場=0948(26)7177。

【紙面PDF】きょうのテーマ=大衆演劇の魅力を探る

=2018/11/20付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]