【はてなのミカタ みんなで考えよう】第1回 こどもって?(下)

医師 宮崎親さん
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九州大大学院教授 野々村淑子さん
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弁護士 春田久美子さん
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工作にチャレンジ。作ってみることが、物の成り立ちやしくみを知る一歩になる
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飛行機の運航を支える仕事を体験。働くことのやりがいと大変さを知る
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収穫を通して農業や食について学ぶ。五感を使った体験が成長につながる
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考える力は、こつこつときたえることが大事だ
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 きのうに続いて、こどもの「?」をいっしょに考える新企画「はてなのミカタ」です。きょうは「こどもって?」というテーマの(下)。この疑問について「おとな」の専門家3人が、身体、法律、文化の各視点で話してくれました。

【紙面PDF】はてなのミカタ みんなで考えよう=第1回 こどもって?(下)

 ■おとなたちの意見を聞いた

 ●「心のひだ」を増やす時期 医師 宮崎 親さん(62)

 みなさんは大勢の前で、漫画のキャラクター「セーラームーン」のまねをできますか。「月に代わっておしおきよ!」と言えますか。できない、という人が多いでしょうが、幼稚園のころならできていた、という人もいるはずです。

 言いたいことは、その年代にしかない感性があるということ。それをフルに使うことが大事で、思いっきりセーラームーンになりきった経験もいいものなのです。これを私は「心のひだ」とよんでいます。ひだは多いほど、人生の豊かさにつながります。

 私は思春期の子をサポートする活動をしています。背伸びしたい気持ちなどから、望まない妊娠をする10代にも出会います。思春期には体の面ではおとなのようになりますが、お父さんやお母さんのようなおとなと同じとは限りません。体はおとなですが、例えば生理が始まって2年目の女の子は「おとなの2歳」。2歳児とあなたは違うでしょ? 心のひだの多さも違う。そして赤ちゃんを授かり育てるには多くのひだが必要です。

 今のあなただから感じるどきどきやわくわくを大事にしてください。そうすれば10年後のあなたはもっと輝くでしょう。

 ●「ふつう」疑うことが大切 九州大大学院教授(教育文化史) 野々村淑子さん(53)

 こどもは働かなくていい、学校に通わないといけない、育てるのは親の責任、おとなに守られるべき存在…。みなさんはこれを「ふつう」だと思いますか? 

 実はこのどれもが「ふつう」ではない時代がありました。例えば300年ほど前までのヨーロッパでは、こどもは「小さなおとな」とされ、特別扱いはされませんでした。7歳くらいで社会の一員として、農民なら農作業をし、職人なら弟子入りし、貴族なら別の貴族のお供として修業に出されることが当たり前でした。

 江戸時代の日本でも、7~9歳くらいの男女が寺子屋で読み書きや計算を学んだ後、奉公に出て商売の仕事を手伝いながら、社会の中で成長していきました。

 多くの人が持つ「ふつう」のこどものイメージは、明治時代にヨーロッパから伝わりました。「一家だんらん」「母性」「良妻賢母」などの言葉もそうです。

 学校に行かず、仕事をする環境にいるこどもは「かわいそう」で、そんな国は遅れているのでしょうか? でも、あなたが「ふつうじゃないから助けてあげる」と言われたら、自分の生き方に自信を失いませんか? 「ふつう」だと思うことを疑うことが大切です。

 ●「考える力」を身に付けて 弁護士 春田久美子さん(52)

 「おとな」と「こども」の違いを考えるとき、「責任」をキーワードにしたいと思います。

 民法が変わり、2022年からは18歳で成人とされますね。でも実は法律の面からは18歳未満でも「責任をとる」という“土俵”に上げられる年齢が、すでに節々にあります。

 例えば、非行をしたこどもについて手続きや処分を定めた「少年法」では、14歳以上で処分を受けることがあります。もし両親が離婚することになった場合、15歳以上の子は「父と母、どっちに付いていくか」について意見を求められます。こどもは守られるべき対象と考えられていますが、一定の判断はできると見なされる年齢があるのです。

 だから、あなたが「こども」であっても、判断する力や責任をとる力をきたえることは大事です。逆を言えば、考える力は「おとな」と呼ばれるようになったからといって、急に身に付くものではないのです。その点では「こども」と「おとな」の境目はないのかもしれません。こどもであっても、おとなであっても、他者の意見に耳を傾け、何が正義か、公平ってどういうことだろうと悩み、考えることは続くのですから。

 【編集部から】

 私自身の「こども」時代をふり返ると、一つの答えをさがす勉強をたくさんしていた気がします。“正解”を見つけて先生にほめられると、うれしかったことを覚えています。でも「おとな」になればなるほど、正解や真実は一つではないことの方が多いんだ、と強く思うようになりました。

 みなさんの「?」にも明確な答えがあるものも、そうではないものもあるはずです。物事にはいろんな見方があることを、みなさんといっしょに考える味方でありたい-。そんな思いで「はてなのミカタ」を始めました。こどもが物事を自由に考えられる環境を守り、寄り添うことが「おとな」の役割だと思うからです。
 (田中直子・37歳)

 「ボーっと生きてんじゃねーよ!」というテレビ番組のセリフが昨年話題になりました。5歳という設定の女の子が、素朴な疑問に答えられないおとなをしかる時の一言です。「考える」ということには、「こども」も「おとな」も関係ありません。自分の頭一つあれば、性別や国の違いもこえられると思います。人の意見にも耳を傾ければ、あなたの考えはより豊かになります。いっしょに「考える」を楽しみましょう。 (中野慧・32歳)

【紙面PDF】はてなのミカタ みんなで考えよう=第1回 こどもって?(下)

=2019/01/08付 西日本新聞朝刊=

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