【きょうのテーマ】「110番」もっと知ろう 福岡県警で取材した

通信指令室内の映像パネルにはパトカーの位置などの情報が映し出されていた
通信指令室内の映像パネルにはパトカーの位置などの情報が映し出されていた
写真を見る
合田さん(中央)から110番通報の仕組みを聞いた
合田さん(中央)から110番通報の仕組みを聞いた
写真を見る
写真を見る

 ●「通信指令室」が市民と警察つなぐ ためらわず通報を

 毎年1月10日は「110番」の日です。事件や事故を目撃した市民からの通報を24時間受け付け、いち早く現場に警察官を出動させる役割を担うのが、都道府県の警察本部に置かれた「通信指令室」です。福岡県警(福岡市博多区)の通信指令室を取材し、その仕組みや電話でどんなやりとりをするのかを聞きました。

【紙面PDF】きょうのテーマ=「110番」もっと知ろう

 「通信指令室は県民の皆さんと警察官をつなぐ重要な部署です」と通信指令指導係長の合田一貴さん(45)は説明し、私たちを室内が見渡せる所に案内した。映画館のスクリーンのように大きい映像パネルには福岡県の地図が表示され、矢印がついたマークがいくつも映し出されていた。合田さんは「走行中のパトカーの位置と進行方向が分かるようにマークで示しています」と説明した。

 パソコンが置かれた机で十数人の通信指令室勤務員が忙しそうに電話を受けていた。パネルにある「436」という数字が気になった。「今日の0時から現在(午前10時)までの通報件数。福岡県では1日平均1500件、年間で55万件の通報がある」と聞き、件数の多さに驚いた。

 ■いたずらは罪にも

 通信指令室では110番を受ける勤務員が、事件や事故の内容や発生場所、発生時間などの情報をシステムに入力する。同時に、指令を担当する勤務員は入力情報を確認し、無線で現場付近のパトカーを緊急出動させる。

 外国人からの通報には通訳ができる警察官が協力する。耳が聞こえない人や話せない人から電子メールで通報を受ける「メール110番」も運用している。合田さんは「事件では警察官が現場に到着するまでの時間が短いほど、素早い犯人の逮捕につながります」と力を込めた。

 通信指令室の仕事で困ることを聞くと、合田さんは「いたずら電話」と答え、「無言電話でも『声を出せない状況では』と疑い警察官を現場に行かせる。いたずら電話は虚偽通報で罪に問われることもあります」と厳しい顔をした。

 ■通報を体験した

 携帯電話を持った子どもからの通報もある。交通事故を目撃したという設定で、飯塚記者が110番のやりとりを勤務員の増田昌司さん(42)と体験した。

 増田さんは「110番。警察です。事件ですか。事故ですか」と落ち着いた声で聞いた。飯塚記者が「車の事故です」と答えると(1)けが人はいますか(2)そこに目印になる建物や信号はありますか(3)何色のどんな車ですか(4)近くに大人の人はいますか(5)最後に名前を聞かせてください-と優しく話を聞き出してくれた。

 「あわてず僕たちが聞くことに答えてくれれば大丈夫だよ」とほほ笑む増田さんの表情に、私たちはためらわずに110番する勇気をもらった。

 ●「相手と自分を落ち着かせる」

 通信指令室勤務員の増田さん=写真(左)=と尾崎かなえさん(30)=同(右)=に取材した。仕事で大切にしていることを尋ねると、尾崎さんは「通報してくる人のあわてる気持ちに自分が巻き込まれてはいけない。ゆっくり話すことで相手と自分を落ち着かせる」。増田さんは「電話から叫び声が聞こえることもある。人の命に関わることが起こっていると常に考え、相手の言葉に集中する」と答えてくれた。

 子どもから通報があったらどうするか。「子どもでも聞く内容は大人と一緒だが『絶対お巡りさんが行くからね』と伝えて安心させる」(尾崎さん)。「『住所は?』と聞かれたら、大人でも緊張していると答えられない。『どこの小学校に通ってますか』など答えやすい質問から話を引き出していく」(増田さん)

 勤務員には、現場での経験による冷静な判断力と県民に寄り添う気持ちが必要だという。増田さんは「東日本大震災後の被災地警備で東北に派遣された」。尾崎さんは「刑事時代に子どもを巻き込んだ事件を担当した」。それぞれの経験が今の仕事に生きているそうだ。私たちは「通信指令室を動かしているのは、誰かを助けたいという警察官の強い思いだ」と感じた。

 ●わキャッタ!メモ

 ▼メール110番 耳が聞こえない人や話せない人が事件や事故にあった場合や、犯人が近くにいるなど声を出せない状況にある人が、パソコンや携帯電話から電子メールで警察に通報できる仕組み。アドレスは各都道府県の警察本部ホームページを参照。

【紙面PDF】きょうのテーマ=「110番」もっと知ろう

=2019/01/10付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]