【きょうのテーマ】補聴器ってなんだろう 耳を聞こえやすくする機械 難聴者の「体の一部」

工場長の池間義浩さん(中央)に耳の中のつくりや補聴器の部品について教えてもらうこども記者たち
工場長の池間義浩さん(中央)に耳の中のつくりや補聴器の部品について教えてもらうこども記者たち
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耳穴型(左二つ)と耳掛け型の補聴器
耳穴型(左二つ)と耳掛け型の補聴器
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耳穴型補聴器を作っているNJH。技術者たちがそれぞれの机で製造作業を分担している
耳穴型補聴器を作っているNJH。技術者たちがそれぞれの机で製造作業を分担している
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機械を使って耳型を削る技術者。耳の穴にぴったりとはまる着け心地の良い補聴器を作るのに大切な作業だ
機械を使って耳型を削る技術者。耳の穴にぴったりとはまる着け心地の良い補聴器を作るのに大切な作業だ
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耳の穴に粘土のようなものを入れて取った耳型
耳の穴に粘土のようなものを入れて取った耳型
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 ●使う人のこと考え製造 オーダーメード工場を訪ねた

 補聴器のことを知っていますか? 耳が聞こえにくい難聴の人が聞こえやすくなるための機械です。難聴者の「体の一部」とも言える補聴器について、こども記者が取材しました。

【紙面PDF】きょうのテーマ=補聴器ってなんだろう

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 耳の中などの障害で起こる難聴は生まれつきの人もいれば、大人になって病気でなる人、高齢になってなる人もいる。子どもから高齢者まで幅広い人が使う補聴器は、音をその人の聞こえ方に合わせて調整し、聞き取りやすいように雑音を抑えるなどして鼓膜に届ける。私たちは使う人の耳の形や要望に合わせて、オーダーメード補聴器を製造するニュージャパンヒヤリングエイド(NJH)福岡支社(福岡市)を訪ねた。

 「これが耳の穴の入り口に入れて使う耳穴型。使う人の耳によって補聴器の大きさや形もさまざまですが、小さく作る工夫をしています」。工場長の池間義浩さん(57)が大人の指先ほどの小さな補聴器を見せて、中に入っている主な部品を説明してくれた。(1)マイク=音をキャッチする(2)アンプ=音の種類や雑音などを調整する(3)レシーバー=音を鼓膜に届ける(4)電池-の4種類だ。池間さんは「耳が小さい人の補聴器に部品を上手に入れるのに苦労します」と教えてくれた。

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 池間さんによると、子どもは体の成長とともに耳も大きくなるため、耳穴型は大人になってから使うのがおすすめだそうだ。

 補聴器には他にも、耳の上に掛ける耳掛け型、小型ラジオのような形でコード付きイヤホンで聞くポケット型などもある。「どのタイプが人気ですか」と聞くと、「日本では小型の耳掛け型や地味な色で目立ちにくい耳穴型を好む人が多い」と池間さん。ヨーロッパではカラフルな耳掛け型を選ぶ人も多いそうだ。「日本でも恥ずかしがらず、おしゃれをする感覚で着ける人が増えたらいいのに」と思った。

 技術者たちが仕事をする部屋に入ると、1人ずつ机に向かって黙々と作業していた。耳型を削ったり、部品を埋め込んだり10段階ほどの作業を分担している。注文する人からは「帽子をかぶる仕事だから邪魔にならないように」「手が不自由なので操作は簡単に」「とにかく目立たないように」などの要望がある。

 29年の経験があるベテラン技術者の池間さんは「使う人が何を求めているか想像しながら作ることが大切。『体の一部になった』と思ってもらえたときがうれしい」と話した。満足して使ってもらおうと努力する技術者の優しさを感じた。

 ●耳型取りも体験 専門店を取材した

 補聴器が必要になった人はどうすればいいのだろう。医師の診断を受けて補聴器を使うことを決めたら、専門店などを紹介される。そこで、耳穴型や耳掛け型など自分に合う補聴器を購入できる。こども記者は専門店の一つ、日本補聴器九州(福岡市)を取材した。

 販売員の渡辺愛子さん(41)がショーケースに並ぶさまざまな種類の補聴器を見せてくれた。店では、耳の聞く力を測る聴力測定や補聴器を作るための耳型取り、購入後の補聴器の調整もしているという。

 耳型とは、耳の中の形を再現したもので、聴力測定の結果とお客さんの要望を書いた注文書と一緒に工場に送られる。完成品は1週間ほどで手元に届くという。こども記者たちも同店で耳型を取り、NJHで耳穴型補聴器のダミーを作ってもらった。マイクや電池など部品が入っても重さは約3グラム。着けると自分の耳にぴったりとはまった。

 補聴器の値段は種類や機能などによって数万~50万円ぐらい。18歳未満の難聴者や障害者手帳を持っている人などには、購入費用の一部を支給する国や自治体の制度もある。

 ●聞こえにくい世界って? こども記者・稲葉悠太君の場合 人それぞれ…… 僕は小さくぼやけた音 耳に頼るのは3割 相手の口の形や表情で感じ取る

 今回の取材に参加した稲葉悠太記者は、難聴で補聴器を使っています。一口に難聴と言っても、その種類や程度によって聞こえ方は人それぞれ。稲葉記者が自分の「聞こえにくい世界」を教えてくれました。

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 お風呂の湯にもぐってドアを閉め、脱衣所のドアも閉めてください。外にいる人の声が小さくぼやけて聞こえませんか? そんな感じが僕の聞こえ方です。僕の場合、低音が軽度、高音が中高度の感音性難聴です。

 あ行は低くて大きな音なので聞こえやすく、か、さ、た、は、ら行は高くて聞こえにくいです。逆に大きな高い音は突然耳に飛び込んできて、うるさく感じることがあります。補聴器を着けてもみんなのようには聞こえませんが、音が少し大きく聞こえます。ぼやけていた音に少し輪郭もつくので話の内容が予想しやすくなります。

 話を聞くとき、耳に頼るのは3割、残りは相手の口の形や表情、周りの状況を見て感じ取ります。話の内容は、まず音と口の動きなどから「ひらがな」で受け取り、それを一瞬で頭の中で漢字に置きかえて理解します。本を読み、知っている言葉を増やすことや授業の予習が役立っています。

 僕は生まれつき難聴なので周りの人の声を聞いて発音をまねできませんでした。そのため、6歳頃から言語聴覚士の先生に口や舌の動き、息の出し方の指導を受けて練習しました。聞こえなくてもみんなと楽しめるスポーツが好きです。見て覚えることが得意なのであまり迷子になりません。

 後ろから話されると気づきにくいので、肩をたたくか、前から話してくれると助かります。数人で話すときは静かな場所で早口にならずに、1人ずつ話してくれるとうれしいです。

【紙面PDF】きょうのテーマ=補聴器ってなんだろう

=2019/02/14付 西日本新聞朝刊=

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