【きょうのテーマ】見つけよう 「美」の楽しさ 福岡市美 「どこでも美術館」がやってきた

鬼本さん(左)からカンガの多彩な着こなしを学んだ
鬼本さん(左)からカンガの多彩な着こなしを学んだ
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並べられた「ヤセ犬」に見入る。銀色の玉は獲物をイメージしている
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遊ばれなくなったおもちゃが作品「ヤセ犬」として新たな命を得た
遊ばれなくなったおもちゃが作品「ヤセ犬」として新たな命を得た
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鬼本佳代子さん
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 ●1枚の布から広がる世界 「ヤセ犬」に込められたメッセージを読み解く

 3月21日に再オープンする福岡市美術館同市中央区)は、休館中も美術の魅力を市民に伝える体験型講座「どこでも美術館」(DOCOBI・どこび)に取り組んでいます。担当の鬼本佳代子学芸員(45)は美術館の所蔵品を携えて学校や公民館などを訪問しています。こども記者らが同市の西日本新聞社で「DOCOBI」を体験しました。

【紙面PDF】きょうのテーマ=見つけよう 「美」の楽しさ

 会議室に入ると、机の上にカラフルに染められた布が並んでいた。東アフリカの布「カンガ」だ。鬼本さんは「1枚の布でさまざまなファッションが楽しめる」と説明し、多彩な着用法を実演した。おなかの前にポケットのような袋を作る着方もあった。「私もエプロンとして使用しています」と聞き、そんな使い方もあるのかと感心した。

 私たちもカンガを1枚選び広げた。大きさは横1・5メートル、縦)1メートルほどで素材は手触りのいい綿だ。鬼本さんが「体で布を鑑賞しましょう」と呼び掛けた。マント風、頭に巻くターバン風など自由な発想で身に着け、お互)いの姿を見比べた。

 布には花や幾何学模様と並んで文字があった。「母の愛は驚くべきもの」「恋人よ、あなたより優れた人は決していない」など布ごとに違う言葉が添えられている。「けんか相手に見せて仲直りするなど言葉に出せない気持ちを伝える」と聞き、アフリカの生活や文化を身近に感じた。

 ■作品がいとおしく

 次に鬼本さんは重そうな旅行用のトランクを運んできた。手袋を着けた鬼本さんは中から5体の犬の彫刻を取り出した。福岡県糸島市在住の現代美術作家、藤浩志さんが「DOCOBI」のために制作した作品「ヤセ犬」だ。

 鬼本さんに作品を見た感想を聞かれ、私たちは「弱そう」「飼い犬ではなさそう」などと答えた。古いミニカーやぬいぐるみなどを接着して作った犬は少し「気持ち悪い」とも感じた。

 藤さんは、パプアニューギニアでやせ細った野良犬が野性のブタを狩る様子を目撃。生気を失っていた犬が獲物を前に躍動する姿に心を打たれた。役に立たないと思われている物に新たな価値を与えたい-。そんな思いを藤さんは「ヤセ犬」に込めた。作品の意味を知り、気持ち悪いと思った犬もいとおしくなった。

 ■手作りの犬に個性

 藤さんのメッセージを胸に新聞紙とテープを使い、それぞれで「6匹目のヤセ犬」を作った。おてんばな感じ、人見知りな感じ…。完成した犬はどこか自分に似ているような気がした。作品を見比べるとみんな違う個性が光っていた。作品を作ることは自分を見つめ直すことにつながると感じた。作品が並んだ会議室はまるで「ヤセ犬」をテーマにした美術館の展示室のようだった。「どこでも美術館」の意味が伝わった。

 ●美術と社会つなぐ、学芸員の仕事 鬼本さんに聞いた

 鬼本佳代子さんは福岡市美術館で教育普及専門の学芸員として、子ども向けのワークショップなどさまざまな企画に取り組んでいる。私たちが学芸員になった理由を聞くと、「美術に関わる仕事がしたかった。美術と社会をつなぐことができる学芸員の仕事がいいなと思った」と答えた。

 鬼本さんは大阪府出身で阪神大震災を経験。全国の美術館と博物館が連携し、東日本大震災の被災地の子どもを支援する「こどもひかりプロジェクト」に参加している。「被災地の子どもたちを笑顔にしたい」と2011年のプロジェクト立ち上げから関わり、子ども向けの文化事業などに取り組んでいる。「参加した子どもが喜ぶ姿を見て大人も元気になる」という鬼本さんの言葉が心に残った。

 福岡市美術館の再オープン後も「DOCOBI」は病院や高齢者施設を中心に続けていくという。私たちは「美術には人を元気にする力がある。美術館に行けない人にDOCOBIを届けてほしい」と思った。

 ●わキャッタ!メモ

 ▼福岡市美術館 1979年11月に開館。老朽化による改修工事のため2016年9月から休館。3月21日に再オープンする。子どもが遊びながら美術に親しむコーナー「キッズスペース 森のたね」(同館2階)も展示を一新する。問い合わせは同館=092(714)6051。

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=2019/02/19付 西日本新聞朝刊=

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