【はてなのミカタ みんなで考えよう】AIと私たちの未来 こども記者in九州工業大

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研究室にあるペッパーとのやりとりにいやされ笑顔になった
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九工大 中茎隆教授
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 自動運転、医療、農業…さまざまな分野で人工知能(AI)の導入が進んでいます。便利な生活への期待が高まる一方、「人間の仕事が奪われる」という予測もあり、「私が将来、つきたい仕事はどうなるの?」と心配する子もいます。今回の「はてなのミカタ」では、こども記者が九州工業大学情報工学部(福岡県飯塚市)で、コンピューターの操作を体験。AIの進化で社会がどうなるのかを考え、AIと人間が共存するためのルールを「AI愛憲法」としてまとめました。

【紙面PDF】はてなのミカタ みんなで考えよう=AIと私たちの未来

 ●救急救命士を仕事に 飯塚 拓人記者

 ▼絶対、戦争に使わない

 僕がなりたい仕事は救急救命士。AIがけが人や病人を受け入れる病院を探し、自動運転の救急車で渋滞を避けて運んでくれれば、より早く命を救うことにつながる。救命士は運ばれる人のケアに集中し、優しい言葉をかけて元気づける。同じことをAIがしても励まされた気分にはならないのではと思う。

 算数や科学的な問題などの答えはAIに従うが、人の気持ちや道徳に関わる問題はAIが人間の感覚に従うべきだ。心や体が疲れないAIを戦争に使っては絶対にいけない。結果は必ず人間にはね返ってくる。

 AIについて考えることは、人間の幸せとは何かと考えることだ。AIに頼りすぎない人間の「五感」が生かせる未来にしたい。 (大分県日田市・大明小5年)

 ●薬剤師になりたい 岡 小夏記者

 ▼社会に余裕できれば

 将来は薬剤師になりたい。AIとうまく共存できれば社会に余裕ができ、ストレスなどが原因で起こる病気を減らせると思う。

 私たちはAIのことをよく知らない。人間がAIを恐れるのは「AIの方が人間より上」と信じ込み、漠然とした不安をおぼえるからだ。AIに何ができて、どう使うのかは専門家の間でも意見がまとまっていないそうだ。AIと人間は、お互いのできること、できないことを尊重し、人として許されないような悪いことをAIには教えない、というルールを作るべきだ。中茎先生の話を聞いて、AIは人の仕事を奪うのではなく、人がすべき仕事の時間を与えくれると思った。「AIとは愛だ」と思える未来にしよう。 (福岡市・奈多小6年)

 ●産婦人科医をめざす 小野 絢菜記者

 ▼平和のため力を貸して

 私は産婦人科医になりたい。妊婦さんや赤ちゃんを相手にする仕事なので、人間でなければできない、本当に心のこもった思いやりを大事にしたい。AIは画像データの分析や管理を手伝ってくれたら便利かな。

 人間はAIが人間の知能を超え、暴走したら手に負えなくなる可能性を恐れている。AIには人間とつきあうための最低限のマナーやモラルを学んでほしい。人間の気持ちを理解して傷つけるようなことは言わないとか、いきなり大声で話しかけないとか。

 人間の世界で「悪」とされることも知り、手を貸さないでほしい。どうすれば世界から核兵器や貧困、食糧問題をなくせるのか、私たちと一緒に考え、平和のために力を貸してほしい。
 (福岡市・有田小6年)

 ●夢はロボットエンジニア 藤原アレックス偉智朗記者

 ▼人間守ること最優先に

 僕の夢はロボットエンジニア。ロボットを作るための新しい発想は人間にしかできない。それを実現する手伝いをAIがすることは将来的に可能だと思う。

 AI愛憲法の中に「義務教育」を入れたのは、AIが人間の生活を侵害する行為に使われてはいけないからだ。必ず法律や道徳を学び、人間を守ることを最優先に考えてほしい。人間が自分の都合のいいようにしたがる統計のような分野はAIに任せ、厳しく管理してもらった方がいい。人間にも正しくAIを使う教育を義務づけるべきだ。

 AIの考えと僕の考えが違う場合は、他の人と一緒にAIの考えを聞く。AIの進化次第では、人と同じように接し、人と同じ権利を認めることも必要だ。 (福岡市・博多小6年)

 ●将来は小学校の先生に 淵上 尚輝記者

 ▼「いじめ」なくせるかも

 僕は小学校の先生になりたい。AIは世の中の動きを分析したりするのは得意だが、人を教育するようなことはできないと思う。AIにテストや宿題の問題を考えて出してもらい、丸付けまでしてくれるようになると、先生の仕事に余裕ができていいなと思う。

 先生がやるべきことはそれぞれの子どもにあわせて、勉強の仕方、問題の解き方を教えることだと思う。生徒に向き合うことにもっと時間を使えれば、いじめなどの問題をなくすことができるかもしれない。

 AIが便利なものになるのか期待外れに終わるのか、まだ分からない。ただ「人間が本当にしなければならないこととは何か」と考えさせてくれるのはとても意味があると思う。
 (福岡県大野城市・大野南小6年)

■九工大 中茎隆教授に聞く

 こども記者は、知的システム工学科の中茎隆教授(44)の研究室を訪ねた。コンピューターに命令・実行を指示する「プログラミング」の教育が2020年度から小学校で必修化されるのを前に、中茎さんは飯塚市内の小中学校で、ソフトバンクグループが開発したAIロボット「Pepper(ペッパー)」を使う授業に取り組んでいる。中茎さんにAIのことを教えてもらった。

 ▼主導権は人間にある 体験すれば親しみも

 一口で説明するなら、AIとは、蓄積された過去のデータから現在の状況を分析し、これからの変化を予測する技術のことです。

 これまでAIには何回かのブームがありました。第1次はコンピューターの開発が進み、人工知能という言葉が生まれた1950~60年代。第2次がコンピューターが普及した80年代です。いずれもデータ量やコンピューターの情報処理能力の不足で思うような成果が出ませんでした。

 現在の第3次AIブームが起こった背景には、ビッグデータ(情報の集積)が得られるようになり、コンピューターが人間の脳神経回路のように高度な情報処理を行う機能「ディープラーニング」(深層学習)ができるようになったことがあります。AIがプロ棋士と対局し好成績を収めた将棋の電王戦などもAIの技術的成熟を社会にアピールしました。

 「AIが人間の仕事を奪う」といった脅威論は、AIが急激に進化した反動から生まれたのでしょう。そこにはAIという未知の存在への不安があります。しかし、ペッパーを使ったプログラミングを体験することで、子どもたちは、AIに仕事をさせるためには、いろいろなお膳立てが必要だと分かり、運用の主導権はあくまでも人間にあることが理解できます。自分のプログラムでペッパーが身ぶりを交えて会話することで、AIへの親しみや興味もわいてきます。

 AIが本当に社会に定着するかどうか結果を見極めるには数年かかるでしょう。未来をハッピーにする方向で、子どもたちには人間とAIの役割分担を考えてほしいですね。

【編集部から】

 スマートフォンが普及し、音声でAIにネット検索を頼める時代。取材に参加したこども記者たちは、最初からAIを一つの「人格」として見ていた。プログラミングを体験し、中茎さんを交えてAIについて考えるうちに、脅威論よりもAIをどう活用するかに子どもたちの関心は移った。

 「憲法」を考える過程では「AIを傷つけない」「人間がいばらない」など、クラスのルールづくりののりでさまざまな案が出た。憲法名は小野記者が考えたものが議論の中身をよく表していると思い採用した。小学校でのプログラミング教育が始まれば、AI開発を将来の仕事にしたい、と考える子も増えるだろう。こども記者のやりとりを聞きながら「AIと人間の未来は明るい」と感じた。   

【紙面PDF】はてなのミカタ みんなで考えよう=AIと私たちの未来

=2019/03/07付 西日本新聞朝刊=

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