農業インターン 就労へ広がる間口 多様な業務が体験できる

経営支援や流通で農業と関わるクロスエイジの会社説明を聞く学生たち
経営支援や流通で農業と関わるクロスエイジの会社説明を聞く学生たち
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 日々の暮らしに欠かせない食。それを生産する農業を職業として選ぶとしたらどうすればいいのか。大学生の就職活動ではインターンシップ(就業体験)が盛んだが、農業にもあった。

 9月上旬に訪れたのは就業体験を主催したクロスエイジ(福岡県春日市)。農産物のブランド化や販路拡大などで農家を経営支援する会社だ。説明会は既に始まっていた。「AKB48を音楽プロデューサーが世に送り出したように、農業のプロデュース業を成立させてスター農家を育てたい」。藤野直人社長(34)が力を込める。学生たちも「農業の産業化はどの程度進んでいるのか」「御社と農協との違いは」などと質問、農業を取り巻く今を探ろうという熱意がうかがえた。

 今回の就業体験の特徴は、クロスエイジだけでなく、ネギの生産農家やNPO法人を日替わりで訪れ農業関連のさまざまな仕事を体験できること。

 この合同方式を発案したのは同社の営業統括、松永寿朗さん(31)。佐賀大の大学院で農業を研究していた時代、生産現場を知りたくて情報収集したが、思うようにはいかなかった。たまたま「農業コンサルティング」をインターネット検索し、たどり着いたのが今の会社だった。「農業界の多様な仕事を紹介する機会を提供し、広い視野を持った優秀な人材を受け入れる流れをつくりたい」と狙いを語る。

 参加したのは就職情報サイト「リクナビ」などを通して応募した学生約30人。その一人、宮崎国際大2年の女性(20)は「農業は興味もなく、仕事選びの枠の外にあった」が、国際関係の仕事を探す中で食の流通の仕組みにも興味が湧いて参加を決めた。実際に現場の話を聞き「農業に国と国をつなぐ大きなビジネスの可能性を感じた」と考えを改めた。

 「生産・加工・流通、さらにNPO法人も見て、農業について小さく見ていたと気付いた」と言うのは佐賀大大学院、農学研究科の女性(22)。やはり「夢のあるこれからの仕事」と語り、公務員志望から就職先の選択肢を広げた。

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 農業への若い世代の取り込みには農林水産省も力を入れる。高校・大学の就職担当者向け説明会を開催し、要望があれば職員が就農制度などの説明に学校へ出向く。12年には、新規就農を後押しするため年間150万円を5年間支給する給付金制度を導入。その成果もあって、15年の20代以下の新規参入者は620人となり、制度導入前の11年(260人)から2・4倍の伸びを見せる。

 農業法人に雇用される形でこの世界に入った20代以下の新規学卒者の増加も目立ち、15年は2050人で前年比43%増だった。

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 大学を中退して農業を始めた男性が宮崎県日南市にいる。この男性(23)は学生時代、農家の空き部屋に寝泊まりする「農家民泊」をあっせんするサークルで活動しているうちに自身で農業を語りたいと思った。自転車で全国を巡りながら今の移住先を決め、出身地でもある東京を離れた。1年間の農家での研修を経て今年3月、10アールのビニールハウスにイチゴを植えた。「農家は自分の哲学や思想をキャンバスに描くように畑で表現できるアーティスト」と魅力を語る。

 実家の家庭菜園でハーブを育てる西南学院大4年生(22)はNPO法人循環生活研究所(福岡市)で土づくりなどを体験。土の温かさと作業する人同士の距離の近さを感じ、感想文にこう記した。「人間の暮らしは自然と深く、温かく、密接につながっている」

 間口は広がり、そこをのぞく人も意外と増えているのかもしれない。

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 【ワードBOX】農業インターンシップ

 民間や自治体主催の他、国の補助事業としては、公益社団法人日本農業法人協会(東京)が事務局となり常時受け付けている。全国の農業法人など約350社(九州内85社)から紹介。体験期間は1~6週間。社会人向け週末コースも。無料。2015年度は高校・大学生ら645人、社会人302人が体験した。


=2016/10/12付 西日本新聞朝刊=

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