王国・九州 競う和牛ブランド 歴史や文化まで、一緒に味わいたい

見事な霜降りの長崎和牛
見事な霜降りの長崎和牛
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料理を盛った器からのぞく唐子がかわいらしい
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長崎和牛の肉と脂を配合してつくる佐世保バーガー
長崎和牛の肉と脂を配合してつくる佐世保バーガー
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 牛車を引いた使役牛の産地を示す鎌倉時代の図説には、名牛として筑紫牛や御厨(みくりや)牛の名が残る。それぞれ長崎県の壱岐牛、平戸牛のことを指すらしい。そんな牛に関わる古来の歴史を持つのが長崎なのだ。

 「和牛オリンピック」とも称される5年に1度の全国和牛能力共進会で、長崎県は2012年、食肉処理した肉質を審査する肉牛の部で最高賞の内閣総理大臣賞に輝き、昨年の大会でも2席を獲得した。

 ただ昨年の大会では、9部門の得点を集計して競う団体賞は鹿児島県がトップ。肉牛の部は宮崎県、体形や毛並みの良さで審査する種牛の部は大分県が最高賞を射止め、それぞれ和牛日本一の称号を看板に県産牛をアピールしている。間違いではないけれど、一般消費者からすれば「どれを信じたらいいの」ということにもなりそうだ。

 そんな中「長崎和牛」のブランド化に向けて地元はPR強化に取り組んでいる。全国に誇れるブランドとして価値を高めれば、枝肉価格も上がり、農家の所得向上にもつながる。

 観光地としての魅力の一つとして長崎和牛を地元で食べてもらおうという仕掛けもある。佐世保観光コンベンション協会などで組織する「日本一長崎和牛ブランド強化県北協議会」は先月、長崎和牛を味わう取材ツアーを実施した。ホテルオークラJRハウステンボス(佐世保市)の鉄板焼き店で食したのは、A5ランクの長崎和牛。軟らかく、とろけそうとはまさにこんな食感を言うのだろう。見事な肉だった。

 Aは枝肉のうち食べられる部分の歩留まりが高いことを示し、5は霜降りの具合や肉の色、質感などの見た目の良さを示す。いずれも日本食肉格付協会(東京)の格付員が評価し、それによっておおむね取引価格が決まる。

 長崎和牛は確かに美味だった。ただ畜産王国・九州には、宮崎牛や鹿児島黒牛、豊後牛、佐賀牛など既に先行するブランドがひしめく。その中で霜降りと
いうだけでどれだけのアピール力が期待できるだろう。

 消費者の健康志向の高まりなどから、霜降り肉一辺倒の好みも変わってきた。「赤身肉ブーム」など多様な好みに応える生産体制の必要性を指摘する専門家もいる。長崎和牛の個性は何なのかを再考してもいいのではないだろうか。

 鉄板焼きをいただきながら、料理を盛った器にも目が行った。地元の三川内(みかわち)焼。唐子(からこ)と呼ばれる中国風の幼子が、表情豊かに器から顔をのぞかせる。食材と共に器の魅力も堪能できる演出だった。

 三川内焼美術館も訪れ、献上品でもあったという透かし彫り製品、卵の殻のように極薄の器など技術の粋を集めた秀作を鑑賞した。朝鮮出兵の際に日本に連れてこられた陶工に端を発し、平戸藩の藩窯だったという特筆すべき歴史も興味を引いた。しかし残念ながら知名度は、その価値ほどは高くない。十分に生かし切れていないと感じた。

 食のブランドに対し、消費者は味覚はもちろん、歴史や文化までも味わいたいと思っている。エキゾチックな長崎らしさがアクセントになれば、鹿児島や宮崎にはない個性が、より魅力的に映るのではないか。

 佐世保といえば「佐世保バーガー」も有名だ。15年のある人気投票でナンバーワンになった「バーガーショップあいかわ」を訪れた。社長の相川博幸さん(69)は、佐世保市内にある公設の食肉市場を自ら訪れ、肉を競り落とす。経営する精肉店、焼き肉店の肉だけでなくハンバーガー用の肉も最適な配合を施し、商品化する。「全国に通用する肉を地元で味わってほしい。それだけです」と相川さん。地産地消のハンバーガーは納得の味。米軍発祥という歴史物語も一緒に頬張った。

=2018/02/14付 西日本新聞朝刊=

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