「消費者ニーズに逆行」コメ等級検査、農薬ありきの実態 見直し求める農家

カメムシが汁を吸った跡が残る斑点米
カメムシが汁を吸った跡が残る斑点米
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田植えを終えたばかりの福島さんの水田
田植えを終えたばかりの福島さんの水田
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日本穀物検定協会九州支部で研修用に準備された1~3等の玄米。表面のしわなど形質が異なるという。ひと皿の米が約1000粒
日本穀物検定協会九州支部で研修用に準備された1~3等の玄米。表面のしわなど形質が異なるという。ひと皿の米が約1000粒
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 「消費者ならやっぱり気になりますよね、黒い米が混じっていたら。だから防げるものなら防ごうと思って買いました」。農薬や化学肥料を使わない米作りを続ける福岡県宗像市の福島光志(ひとし)さん(32)が手に入れたのは色彩選別機。カメムシが穂の汁を吸った跡が褐色や黒いしみで残る斑点米をはじき出す機械だ。小型車並みの投資だったが「これに通せばほとんどなくなる」と性能の良さを実感する。

 斑点米は、買い取り価格を決める農産物検査制度の検査項目の一つ。米の場合、整った形の米粒の割合や石などの異物混入、それに斑点米を含む着色粒の混入率などを調べ1~3等級、規格外に分ける。現在、1等と2等の間には60キロ(1俵)当たり600円、2等と3等には千円の差がある。例えば10ヘクタールの水田なら、平均的な収穫量で計算すると1等と3等には約110万円の差が生じる。

 着色粒の混入率は1等0・1%以下▽2等0・3%以下▽3等0・7%以下。ざっと言えば千粒の中に1~7粒あるかないかの違いで大きな差が出るわけだ。

 つまり、農家はカメムシを除去して1等米の基準以内に収めるため、農薬を使っているのが実情なのだ。その農薬とは、大量死や失踪などミツバチ被害の原因とされるネオニコチノイド系農薬。6月13日付の本欄で取り上げた。

    ◇   ◇

 斑点米は実は、米の味にも品質にも影響はない。しかも色彩選別機で除去できるため、現在流通する米には、元の等級にかかわらず斑点米が混入することはほとんどないという。

 必ずしも必要ではない斑点米の検査項目が、ネオニコ系農薬使用を助長している-。そうした指摘が生産者からも出ている。6月26日には、秋田県の「生き物共生農業を進める会」の今野(こんの)茂樹代表と長崎県養蜂協会の清水美作(みまさか)会長が、斑点米の規定廃止を含む検査制度の抜本的改正を求める共同提言を国に提出した。

 そもそもこうした検査制度は戦後間もない1951年、食糧確保と需給・価格調整に主眼を置く食糧管理法の下で制定された。米、麦などを商品として流通しやすいように一定の規格を定めて分類し、公正な取引ができるようにするための制度。管理法が廃止となった95年以降もほぼ変更されていない。

 米の検査は、水分以外は検査員が目で見て判断する。いわば見てくれの問題。そこに味や栽培法に関する項目はない。「食の安心・安全を求める近年の消費者のニーズに逆行している」と今野さんは強調する。

    ◇   ◇

 検査制度の見直しを求める動きは2002年にさかのぼる。米どころ秋田県の大潟村で「農薬を使わなければならなくて困っている」との農家の声を発端に、今野さんらの市民グループが村議会に見直しを求める請願を提出。2年後には、県内の64%に当たる44市町村議会が同様の請願を受け、採択した。

 運動開始から16年が経過し、農林水産省はようやく検討を始めた。自由な農業経営ができる環境整備を目的に16年に決定した「農業競争力強化プログラム」で、流通ルートや消費者ニーズに即した合理的なものに見直す、として触れている。

 ただネオニコ系農薬については「稲作のカメムシ防除に重要」と位置づけ、使用ありきの姿勢を変えていない。ミツバチ被害には農家と養蜂家が情報を共有し、農薬散布時期に巣箱を避難させる対策で被害を減らしたい考えだ。

 そのかたくなな姿勢には「農薬メーカーと癒着しているのでは」といった臆測まで聞こえてくる。

 福島さんは米の検査を受けていない。顧客の注文を受けて販売する直売方式を取るからだ。「制度の等級があるため、無農薬などの付加価値やおいしさよりも等級ばかり気にする取扱業者もいる。やっかいな制度です」と実感する。

 消費者にも制度や斑点米のことを正しく知ってほしい。そんな思いもあって、近く計画する法人化を機に商品ラベルに「未検査米」と表記し、その意味も説明するつもりだ。

=2018/07/04付 西日本新聞朝刊=

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