フードバンク協力に壁、消費者恐れる企業 食品ロスの背景に「3分の1ルール」

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集まった食品を整理する「フードバンク福岡」の雪田千春理事長。所狭しと食品が並ぶ
集まった食品を整理する「フードバンク福岡」の雪田千春理事長。所狭しと食品が並ぶ
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子ども食堂から、お礼としてフードバンク福岡に届いたパネル。子どもの写真が張られている
子ども食堂から、お礼としてフードバンク福岡に届いたパネル。子どもの写真が張られている
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 食べられるのに廃棄される食品を企業などから譲り受け、生活困窮者支援団体に贈る「フードバンク福岡」(福岡市)が来年4月、活動の趣旨を食品事業者に知ってもらう試みを市と始める。これまで順調に取引企業を増やしてきたが、提供先の増加で、食品の確保がさらに必要なためだ。一方で食品業界には、無料提供が一般消費者の反発を招くことを懸念するなど、協力をためらう傾向もある。

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 棚に缶詰やレトルト食品、飲料水が所狭しと並ぶ。同市南区にあるフードバンク福岡の事務所。賞味期限が近づいたことなどで、食品業者が販売できないと判断した品々だ。食材は団体側が集荷し、子ども食堂などに無料で届ける。

 団体は2016年4月に発足。初年度は28社から約13トンを譲り受け、子ども食堂など19団体に届けた。本年度は食品提供を受ける企業が75社に増え、取扱量も70トンに上る見通し。それでも、この夏は在庫が不足がちになった。届け先も80団体に増えたからだ。

 一方、家庭での食べ残しを含め、まだ食べられるのに捨てられる「食品ロス」は国内で年間約646万トン(15年度推計)にも上る。国内約80のフードバンク団体に提供される食品は約4千トン。「食を求める団体は増え、貧困層は広がっている。食品がもっとフードバンクに届けば多くの人を救えるのに」。雪田千春理事長は表情を曇らせる。

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 食品ロスの原因の一つに挙がるのが、加工食品メーカーと卸売業者、小売業者の間にある「3分の1ルール」=図参照=と呼ばれる商習慣だ。

 例えば賞味期限が6カ月間の食品の場合、期限の3分の1に当たる「製造から2カ月目」が小売店への納品期限、3分の2の「製造から4カ月目」が販売期限になる。納品期限までに納められなかったり、販売期限までに売れ残ったりすると主に返品となる。

 国内の推計ではこのルールなどにより、卸売業からメーカーへの返品額が約562億円(17年度)に上る。メーカー側は返品された分の約7割を廃棄していたという調査結果もある。新商品が出たため撤去されたものや、売れ残った季節商品が廃棄されることも。年間646万トンの食品ロスのうち事業者分は357万トン、家庭分は289万トン。食品業界はルールの改善に動くが、なお廃棄は多い。

 全国のフードバンクは、こうした商品の提供を求める。企業はフードバンクに食品を寄付すると、廃棄のための運搬・処理費を削減でき、税の優遇措置も受けられる。イメージが向上する利点もある。

 それでも提供をためらうのは、事務量の増加をはじめ、商品に売れ残りのイメージが付くこと、消費者の反発を招くことへの懸念がある。農林水産省の担当者は「『無料提供するくらいなら値引きして』と消費者に言われるのを恐れ、企業も大っぴらに協力できない事情がある。また、寄贈したくてもフードバンク側が食料庫などの設備を整えていないとできない。提供する側、される側の両方に課題がある」と明かす。

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 食への信頼を揺るがした問題も、食品業界が提供を渋る要因になっている。

 16年、大手飲食店から食材の廃棄を請け負った産業廃棄物処理業者が、これを別の業者に横流しし、小売店に転売されていたことが判明した。食材は異物混入の疑いがあったが、購入した消費者もいたとみられる。フードバンクに提供した食品が転売されて不適切に扱われ、責任を問われる事態にならないか-。食品業界にはそんな懸念がある。

 フードバンク福岡が福岡市と共同で始めるのは、こうしたイメージを拭い去る試みだ。市内の食品事業者約2千社にアンケートし、何が協力の壁になっているかを調査。活動の趣旨や食品の衛生管理方法、配送実績を管理している点などを「フードバンク活用の手引き」として企業に配る。雪田理事長は「食品がどう使われているか、受け取った団体がどれほど助かっているか。企業にはそんな情報も伝えたい」と語る。

 フードバンク活動は食品ロス削減という環境対策と、貧困層を支える福祉と、二つの効果がある。16日は食や貧困問題を考える「世界食料デー」。まずは食品業界や家庭で捨てる分を減らす。余ったら食に困る人に届け、それを社会が許容する。そんなサイクルを進めたい。

=2018/10/10付 西日本新聞朝刊=

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