森林経営管理法 来春施行 九州森林フォーラム 未来につながる森づくりを 伐採時期は、担い手確保は…課題多く

泉英二・愛媛大名誉教授
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 荒れた私有林を市町村が集めて管理する「森林バンク」制度を盛り込んだ森林経営管理法が来年4月施行されるのを前に、森づくりを考える「九州森林フォーラム」(NPO法人九州森林ネットワーク主催)が9日、福岡市で開かれた。新法は市町村が中心となり林業振興と森の管理を両立する狙いで、林業政策の節目といえる。一方で森林所有者の意向確認や伐採後の造林、制度運用に充てる新税「森林環境税」の使途など課題は多い。フォーラムを詳報する。

 基調講演した泉英二・愛媛大名誉教授は、新法を「林業の成長産業化で、伐採を進めて木材を出すことを重視している。持続性のある森づくりに逆行する」とし、複数の課題を挙げた。

 まず問題提起したのは山の造成の在り方だ。

 国は2006年の森林・林業基本計画で、植栽後50年程度で伐採する従来のサイクルと並行し、伐採期を100年近くまで遅らせる「長伐期化」を打ち出した。木は樹齢50年を超えると洪水防止などの公益的機能が高まる。環境面にも配慮する多様な森づくりにかじを切ったが、泉氏は「50年前後で伐採する方向に戻ってしまう」と懸念した。

 林野庁は国内の人工林について、多くが樹齢50年程度となり利用可能になった一方、木材価格低迷や担い手不足で放置されていると見る。新法はこれを背景に、所有者の責務に「適時の伐採、造林、保育」を挙げているが、泉氏は事実上の伐採の強要に当たるとした。さらに「伐採したとしても再造林はコストがかかり、自治体から委託された林業経営者ができるかは分からない」と指摘。伐採後に苗木を植え、数十年間育てる持続性と担い手の確保を課題に挙げた。

 所有者が責務を果たせない場合、行政から半ば強制的に委託を求められるとし、「木材価格が安い中、伐採しないのも経営判断。伐採の強要になれば財産権の侵害だ」と語った。

 新法では市町村から委託を受けた林業経営者が伐採後、その収益で植林し、一部を所有者に還元する。植林後の管理も15年以上担う仕組みだが、「所有者に取り分が出るかは分からないし、15年後に劣悪な状態の山が所有者に戻ってくる恐れもある」とした。

 国は新制度の財源として森林環境税を2024年度から徴収する計画で、19年度から前倒しで市町村や都道府県に配る。泉氏は「森づくりは木材生産と公益的機能を両立し続けることが重要。新税は山を守る人材育成に充て、市民も課題に声を上げてほしい」と呼び掛けた。

 ●パネルディスカッション 林業支援「多様性を重視する施策を」 新税使途「林業従事者の最低所得に」

 学識者や森林所有者、森林整備を支えるNPO法人、行政担当者などによるパネルディスカッションでは、森づくりや森林環境税の使途などで意見交換した。

 熊本県阿蘇市を拠点に林業を支援する「NPO法人ふるさと創生」の板東博暁(ひろあき)理事長は、高齢の森林所有者が担い手不足で伐採業者に森を売ると、伐採後に再造林がなされない現状を報告。「林業は3世代くらいの長いスパンで続く産業。林業を営む世帯が山に住み、管理し続けるのは難しい。企業や自治体、集落などの組織が管理する方向にいくのがいい」とした。

 森林所有者の後藤国利・元大分県臼杵市長は「樹齢50年で切るサイクルは経済性だけを考えた制度。何年で切るか、どんな森をつくるかは多様性を重視すべきだ」と主張した。

 森林環境税を巡っては、市町村が林業経営に適さない森を管理する費用だけに充てないか、懸念する声が出た。会場からは森林組合の関係者が「林業現場の労働者は低賃金。新税を最低所得に充ててはどうか」と述べた。これに関連し、福岡県八女市の特例認定NPO法人「山村塾」の小森耕太事務局長は「森が荒れると広葉樹化や間伐など簡単な方向に結論がいきがち。森の環境はもっと複雑だと、一般の人に理解してもらう試みに充ててはどうか」と提案した。

 熊本県小国町の長谷部公博係長は「市町村は担当職員が2、3人しかおらず、使途を決めるのは難しいが、森林整備や担い手育成、木材のブランド化などを順々に行っていきたい」と語った。

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 【ワードBOX】森林経営管理法

 荒れた私有林を市町村が集約する「森林バンク」創設を盛り込んだ。森林所有者に伐採や植林など適切な経営管理をする責務があると明記し、できない場合は市町村に委託。市町村は意欲のある林業経営者に伐採や管理を再委託する。林業経営に適さない森林は市町村が管理し、自然林に戻す。対象は国内にある私有の人工林のうち荒廃した約450万ヘクタール(私有の人工林全体の約3分の2)。財源として森林環境税を創設し、2024年度から住民税に1人年間千円を上乗せする。税収は年間約600億円。

=2018/11/14付 西日本新聞朝刊=

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