<49>育児と配達員を両立

「ヤクルトレディー」となり、配達先の玄関で写真に納まる小鴨さん
「ヤクルトレディー」となり、配達先の玄関で写真に納まる小鴨さん
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●バルセロナ五輪女子マラソン日本代表 小鴨 由水さん

 長男の松永悦司(えつじ)を出産した後、2002年4月から私は再び福岡市立障がい者スポーツセンターでスポーツ指導員として働き始めました。長男は生後8カ月から保育園に預けましたが、困った問題に直面するようになりました。

 当時、0歳児を保育園に預けられるのは、親がいずれも月15日以上、働く家庭でした。私のセンターでの勤務日数は月12日で、基準を満たしません。そこで、いろんな大会へのゲストランナーとしての出場と、そのための練習も労働として認めてくださいという申立書を年度ごとに提出して、特例的に受け入れてもらっていたのです。

 また、急に長男が発熱して園に呼ばれることもありました。ですが、センターは勤務のシフトが決まっています。私が途中で抜けると、同僚に大きな迷惑を掛けてしまいます。肩身が狭いとはこのことです。

 もう少し、子育てしながら働きやすい職場はないかな-。そんな思いを募らせていると、保育園のママ友が「私がやってる仕事を紹介しようか」。それは、多くの方におなじみの乳製品の配達員、そう「ヤクルトレディー」でした。

 私は福岡市城南区友丘地区の担当になりました。長男を保育園に預けた後、平日は毎朝、午前9時に営業所に出勤です。前日に準備しておいた商品をクーラーボックスに入れ、バイクで配達して回ります。最初に「よろしくお願いします」と手書きしたカードを持って行ったら、かなりのお客さんが私のことを知っていてくれて、行く先々でおしゃべりが弾みました。

 また、私たち配達員には地域の高齢者を見守る役目もありました。独居のお年寄り宅に商品を届けたら、必ず「お元気ですか」と声掛けをします。受け取りに出てこないとかおかしなことがあれば、営業所を通じ市に知らせました。

 地域をくまなく配達して感じたのは、福岡もかなり高齢化が進んでいるなあということ。独居高齢者の増加が、今、深刻な社会問題になっています。ほんのちょっとでいいから、いろんな人と顔見知りになっておく。地域の住民同士でそんな関係を築いておくことが、大切だと思います。

 また、当時の体験を振り返ると、乳幼児の育児と仕事を両立させるのは大変です。そんな母親への支援がもっとあればと感じます。政府も「1億総活躍社会」を掲げるのなら、そのあたりを考えてほしいです。

=2018/05/30付 西日本新聞朝刊=

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