<56>依頼受け短大講師に

約30キロを踏破する西日本短大の課外活動に参加した学生や関係者。最前列右から2人目が小鴨さん
約30キロを踏破する西日本短大の課外活動に参加した学生や関係者。最前列右から2人目が小鴨さん
写真を見る

●バルセロナ五輪女子マラソン日本代表 小鴨 由水さん

 2010年のこと。私の父親の立郎(りつろう)に、大阪府立大農学部時代の同級生から、こんな電話がありました。

 「久しぶり。お宅の娘さん、今、どうしてる? 実は、同級生のよしみで、娘さんに頼みたいことがあるんだけど」

 この同級生の方は、福岡市にある西日本短大の教授、岡本均さんでした。

 「うちの短大に08年、健康スポーツコミュニケーション学科が新設されたんだが、娘さんに、ぜひその学科の非常勤講師に就任してもらいたいんだ」

 思いも寄らない依頼でした。私自身、キャンパスライフに憧れて、一度は実業団を辞めて短大に進んだ身ですが、教わる側と教える側では立場が大きく違います。取りあえず、短大に出向き、学科長の陶山(すやま)三千也さんにお話を伺うことにしました。

 「非常勤講師って、どんなことを教えればいいのでしょう」。私が率直に尋ねると、陶山さんはこんなことをおっしゃいました。

 今の学生に、スポーツの真の楽しさを知っている子は少ない。それは悲しむべきことだ。小鴨さんは、バルセロナ五輪出場という貴重な経験をお持ちだ。それは、目標を持って、子どもの頃から努力を積み重ねた成果でしょう。小鴨さんにしか話せないことを、ぜひ学生たちに伝えてほしい。そして、日常的に運動したいと思うような若者をたくさん育ててほしい。

 私はその言葉に感銘を受けました。「小鴨さんのやりたいようにやってください」。最後には、そんな言葉まで頂きました。

 10年4月、私は短大の非常勤講師に就任しました。担当科目は「ウオーキング&ジョギング」と「ジョギング&ランニング」。前者は「健康運動実践指導者」という資格を取るための必修科目で、前期(4~9月)に履修します。後者は、さらに走ることを学びたい学生が選択科目として、後期(10~3月)に履修するのです。

 私は週に1回、25人の学生と向き合うことになりました。思えば、この学生の大半は、私がバルセロナ五輪に出場した年は、まだ1歳です。月日が過ぎるのは本当に早いですね。

 さて、どんな授業にするか考えました。座学中心の授業は学生も嫌でしょうし、私も得意ではありません。「とにかく実技中心で、楽しい授業にしよう」。そう決めた私は、あとはいつもの出たとこ勝負で、キャンパスに踏み出しました。

=2018/06/07付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]