<61>かものこクラブ 創設

5キロレースで「かものこクラブ」の知的障害児の伴走をする小鴨さん(左)
5キロレースで「かものこクラブ」の知的障害児の伴走をする小鴨さん(左)
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●バルセロナ五輪女子マラソン日本代表 小鴨 由水さん

 私が道下美里さんの伴走をしていた2010年度、福岡市立障がい者スポーツセンターがある試みに乗り出しました。知的障害児向けのランニング教室。運動指導員の私やスタッフが先生役となり、特別支援学校などに通う8人に、大濠公園で走り方を教えました。

 知的障害児といっても、その特徴は十人十色。他人とのコミュニケーションが苦手な子もいれば、大人の言葉がうまくのみ込めない子もいます。もちろん指導マニュアルなんてなく、さすがの私も不安でした。

 ところが、大人たちの心配を尻目に、子どもたちは純粋に走ることを楽しんでくれました。指導する側が一人一人の特徴を理解して関わっていくと、子どもは付いてきてくれるのですね。少しずつ走れる距離も延びて、教室は大成功。私も大きな自信になりました。

 すると、保護者たちから「せっかく走る楽しさを覚えた子どものため、ぜひ教室を続けてほしい」と、強い要望が。そこで私は一念発起して、11年に個人でクラブを創設しました。「小鴨」が教える子どもたちですから、名称は「かものこクラブ」。

 以来、毎月1回、大濠公園で教室を開いています。現在の参加者は小2から40歳すぎの知的障害児・者計17人。私が個人的に教えている市民ランナーの方や、西日本短大の学生などが運営を手伝ってくれます。

 私たちはそれぞれ数人の子に付いて、「あとちょっと頑張ろう」などと声を掛けながら伴走するのですが、さすがに17人もいると、子どもたちはいろんな行動をします。鳥を追い掛け行方不明になる子、1周するたび同じトイレにこもる子、反対回りに走りだす子。しかし、誰もそれをとがめたりはしません。それが一人一人の「個性」ですから。ただ、あんまり子どものことが気になって、何とこの私がこけたこともありましたね。大勢の市民が走る公園なので、さすがに恥ずかしかったです。

 運営が軌道に乗った13年秋、私はかものこたちを「海の中道海浜公園リレーマラソン」に挑戦させたいと思い立ちました。10人一組でたすきをつなぎ、42・195キロを走りきるのです。ただ、一般レースなので4時間の時間制限がありました。保護者からは「ちょっと無理かな」との声が多かったのですが、計算上では1キロを5分40秒で走れば間に合います。「この子たちにならできる」。私は大会にエントリーしました。 

=2018/06/14付 西日本新聞朝刊=

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