<70完>しなやかに走り続け

大濠公園で「ありがとうございました」と手を振る小鴨さん
大濠公園で「ありがとうございました」と手を振る小鴨さん
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●バルセロナ五輪女子マラソン日本代表 小鴨 由水さん

 私のホームコース、大濠公園。緑があり、水辺があり、こんな快適なランニングコースが都心にあるなんて、福岡市民は恵まれていますね。この1周約2キロの池の周りを、私はいったい何周したことでしょう。

 なんてことを考えながら走っていると、この前、擦れ違った見知らぬランナーから「あ、人生走快の人だ」と声を掛けられました。この聞き書きを読んでくださっているんだな、とうれしくなりました。「涙が出ました」などと、おはがきやフェイスブックで激励のメッセージもたくさん頂きました。この場を借りて、お礼申し上げます。

 こんな話をすると、お分かりですね。きょうでこの連載は最終回です。今の私が取り組んでいることを少し紹介しておきますね。

 「放課後等デイサービス」ってご存じですか。6~18歳の障害児を放課後や長期休暇中に一時預かる福祉サービスです。私はその中で月に3回の運動教室を担当し、特別支援学校の子どもたちと駆けっこやボール遊びを楽しんでいます。

 もちろん、知的障害児の伴走をする「かものこクラブ」、子どもや一般のランニング講習にも力を入れています。福岡市立障がい者スポーツセンターの運動指導員、西日本短大の非常勤講師も続けていますよ。

 こうした活動をまとめる受け皿として、一般社団法人「R-WAN(ワン)」を設立しました。富国生命の仕事はこの春に正社員を卒業し、代理店契約を結びました。保険の勧誘をするのは同じですが、出社の必要がないので、その時間をいろんな活動に充てています。

 それにしても、本当に忙しい人生だなあ、と、われながら思います。マラソンで日本最高記録を出した後、五輪で惨敗。引きこもりをして、短大生になり、実業団に復帰。結婚、出産、ママさんランナーでまた走り、元夫とは死別して…。まさに波瀾(はらん)万丈ですね。

 でも、それが小鴨由水の生き方です。亡くなった祖父によると、小鴨家は代々、女性の名前に「水」の字を入れるのが習わしです。水は、どんな器に注がれてもその形になり、氷にも湯気にも変化できます。そんな水のように、しなやかに人生を生きてほしいという願いを込めたそうです。

 これからも私は、爽快に風を切って、細く長く、時にはちょっと休みつつ、走り続けていきます。どこかで私を見掛けたら「人生走快!」と声を掛けてください。

 =おわり

=2018/06/25付 西日本新聞朝刊=

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