大分・杵築の団体 海藻肥料 再評価の動き 果物の成長良好、糖度増 博多湾のアオサ活用も模索

ユズの木の幹周りに海藻を置く神鳥一さん
ユズの木の幹周りに海藻を置く神鳥一さん
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 海藻を肥料として使う。そう言うと「塩害は大丈夫なの?」と心配する人が多いかもしれない。ところが1950年代までは各地の沿岸地域で使用されていたという。化学肥料の普及とともに廃れ、現在は長崎県の対馬の一部地域などに残るのみだ。近年、その良さを見直す動きが出ている。

 大分県・国東半島の別府湾に面した海岸。浜辺に上がったホンダワラ類などの海藻を軽トラックに積む作業が続いた。

 「これを畑に置くだけで肥料になるんです」。杵築市の「狩宿(かりしゅく)里海・里山プロジェクト」(13人)の代表神鳥一(かんどりまこと)さん(67)が海藻を手にする。車で約10分、自宅横のユズ畑に運び、幹を囲むようにまいた。雑草を防ぐ敷き草代わりにもなる。

 「果実は普通よりも大きく、えぐみも少ない。植物が強くなるせいかアブラムシなどの害虫も着きにくくなり、無農薬で済むからカマキリなどの益虫も増えた」。神鳥さんが感じる海藻の効果だ。

 他に栽培するバジルも葉が大きくなるなど変化を感じている。イチゴを育てる別の会員も、糖度が2度アップして粒の重さも増加、以前より日持ちすることも実感するという。

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 同プロジェクトは2011年、広くアピールできる農産物を作ろうと設立。カキ養殖の漁民も巻き込み、山からしみ出す地下水を生かすなど地域に伝わる循環型農業を模索している。

 海藻のメリットについて、同プロジェクト顧問の環境調査会社「海藻研究所」(福岡県新宮町)の新井章吾所長(59)はこう説明する。海藻には陸から長い年月をかけて海に流れ込んだミネラルが濃縮され、多糖類も豊富に含む。これによって微生物が増え、土壌の有機物を分解。植物はこれを養分として吸収する。

 自治体などからの海底調査を請け負い、海底や藻の研究を長年続ける新井さんは「農業者も含めて海藻は塩害を招くという間違った常識が広がっている」と嘆く。限られた区域に大量に使用しない限り、大丈夫という。発酵させたりすき込んだりする必要もなく、土の上に置くのが伝統的な農法と強調した。

 神鳥さんは「高齢の農業者にも加わってもらい、季節に合った他品種少量のブランド野菜を全国に売り出したい」と意欲を見せる。

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 日本土壌肥料学会(東京)や鳥取県の地域連携組織「海藻農法普及協議会」などによると、海藻肥料の歴史は江戸時代以前にさかのぼり、欧州諸国にも長い歴史がある。60年代以降、化学肥料の普及で農地の連作障害も起き始めたが、海藻が改善に有効なことも分かっているという。

 海藻肥料の取り組みは各地に見られる。鳥取県内では、中海の海藻オゴノリを乾燥させて粉砕しペレット状に固めた肥料を同協議会が販売。千葉県習志野市は谷津干潟にたまるアオサを除去、周辺の学校や公園での肥料化を実験中という。

 神鳥さんたちが現在、注目するのは福岡市・博多湾のアオサだ。大量発生し、同市東区の和白干潟に打ち寄せて腐敗、悪臭を放つなど問題となっている。同市は2013年度、回収船で約410トンを集め人工島に埋め立て処分した。同グループは近くに打ち寄せる海藻だけでは肥料として足りなくなっており、福岡市や地元の環境団体の協力を得て昨年10月、和白干潟から6立方メートルを搬送した。

 今年も運搬を検討中だが、問題は費用。水を含んだままでは効率が悪く、天日干しなど作業面の協力を求めたい考えだ。同市港湾局も「アオサの有効活用につながり、協力の道を探りたい」と話す。海藻肥料が広がれば、アオサの解決につながる可能性もある。

 杵築市を含む大分県国東半島・宇佐地域は13年5月、国連食糧農業機関(FAO)から世界農業遺産に認定された。対象は「クヌギ林とため池がつなぐ農林水産循環」だが、循環という点で古くて新しい海藻肥料もその典型ともいえる。


=2014/10/01付 西日本新聞朝刊=

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