【生きる 働く 第4部】やりがい求めて 就活を考える<5完>ミスマッチ減らす試み

「シゴトヒト」はオフィス1階のカフェバーで、週に3~4回、多彩なゲストを招き、お酒を片手に語り合う「しごとバー」を開く。カウンターに立つナカムラケンタさん(右)
「シゴトヒト」はオフィス1階のカフェバーで、週に3~4回、多彩なゲストを招き、お酒を片手に語り合う「しごとバー」を開く。カウンターに立つナカムラケンタさん(右)
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 せっかく苦労して就職しても、わずか数年で辞めてしまう。新卒者の3年以内の離職率は大卒で3割、高卒で4割。そんな中、新しい形で企業と学生のマッチング(出会い)を進める試みが出てきた。

 「日本仕事百貨」は一見、求人サイトのように見えない。働く風景や人々の思いが4千字の文章と写真でつづられ、雇用条件は最後に記されている。

 運営会社「シゴトヒト」(東京)のナカムラケンタ代表(35)は「実際に働いてみたらという求職者目線で企業を取材し、ネガティブ(否定的)な面もありのままに書きます」と語る。

 掲載した約千社のうち、3分の2が採用に至った。「長い文章を読んだ上で真剣に働きたいという人しか応募しないので、入社後辞める人も少ないと聞きます」。営業は一切しない。口コミで広がり、中小企業を中心に全国から月100件以上の掲載問い合わせがある。

 人材派遣会社「アドヴァンテージ」(横浜市)が今春始めた就活サービス「ベツルート」。「やりたいこと」ではなく、「営業は嫌」「通勤ラッシュは苦手」など「やりたくないこと」を明確にし、許容できる企業の中から志望先を決める。

 マッチングは占いとくじ引きで行う。企業と学生は焼き肉やスポーツ観戦などで仲を深め、意気投合すれば採用。今春卒の学生向けイベントには、延べ24社と学生110人が参加し、5人が内定、40人が選考中だ。中野尚範社長(43)は「やりたくないことを除外した上で、偶然の出会いに身を任せてみる実験的な試み」と説明する。

 企画責任者の内山マリオさん(30)は、別の就職サービス「就活アウトロー採用」で1月に入社した。NPO法人キャリア解放区(東京)が昨年から始めたこのサービスは、服装髪形自由で、エントリーシートも面接もなし。企業と学生が互いに名前を出さずに交流し、仲良くなれば選考に進む。

 二つの就職サービスの企画に関わる慶応大の若新雄純特任助教は「社会の変化が激しく、現在のシステムでは多様な人材を柔軟に採用することができなくなっている。もっといろんな採用方法があっていい」と語る。

 模索は始まっている。就活のスタイルは少しずつ変わっていくのかもしれない。だが、基本にある「新卒一括採用」が変わらない限り、現状が大幅に改善するのは難しいのも現実だろう。

 今回の連載取材中、多くの人に「自殺する学生がいるほど追い詰められる今の就活システムをどう思うか」と聞いた。「自分や親が知っているような知名度の高い会社ばかりを探す志向があるため、競争倍率が上がり、落ち続けて悩む学生は多い」(就職情報会社担当者)「自己否定されたと感じるのは分かるが、日本にある何百万という会社の中で、自分に合う企業を見つける努力をどれほどしたのか」(大学関係者)。システムより学生の姿勢に対し、疑問を呈する人が少なくなかった。

 だが、取材で見えてきたのは、学生と企業の出会い方が乏しい▽多段階にわたる選考や見えない選抜基準など学生に掛かる負担が大きい▽新卒一括採用により、就職の機会が少なくなる‐など、学生1人の努力では超えられない現実だった。

 千葉商科大の常見陽平専任講師(雇用・労働)は「選考には学歴などの差別や区別がある。企業側は平等な選考を装うのはやめるべきだ」「学生も自分の大学からどの企業にどのくらいの人が就職しているかを調べたり、大学のキャリアセンターを利用したりして1人で就活をしないことが大切」と指摘する。

 =おわり


=2015/04/21付 西日本新聞朝刊=

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