風邪予防に「あいうべ体操」 口呼吸やめて感染減 学校や職場で実践広がる

大きく口を開けて「あいうべ体操」をする太宰府南小の児童
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 冬から春にかけ、毎年大流行するインフルエンザ。外出後の手洗い励行、ワクチン接種、お茶でのうがいなど、各地でさまざまな予防法が取り組まれているが、病の入り口とも呼ばれる口に目を付け、口の体操「あいうべ」を実施する学校や職場が増えている。合言葉は「口呼吸を鼻呼吸に」だ。

 ■治り早くなった

 福岡県太宰府市の太宰府南小学校。1年1組の教室の前方に並んだ日直4人の口の動きに合わせ、クラス全員が「あー」「いー」「うー」「べー」と大きく口を動かし、舌を出す運動を10回、繰り返した。

 2011年度から、PTAや校医、住民などで組織する学校保健委員会で、歯科保健の推進をテーマとした同校。多くの児童の口が開いていることに危機感を持った学校歯科医師の提案で、2学期から始業時と終業時、家庭で各10回のあいうべ体操を始めた。

 秋にはインフルエンザ感染者が出て、きょうだいなどが罹患(りかん)したが、流行することなく収拾。「保健指導などを通じて再度、口の大事さを職員、児童で共有したところ、近隣の校区に感染者が出る中、昨年より良好な状態が続いている」と養護の西岡裕美教諭は言う。

 長崎県南島原市の口之津小学校では10年、口と歯の学習をした6年生からあいうべ体操が広がり、全校レベルで実践を継続中。取り組みは市内の他校にも広がり、小林小学校では11年秋から、朝のミニマラソンの後に全員で20回、あいうべ体操を行っている。

 3年間実践した口之津小の福田泰三教諭は「口が閉じた子は明らかに風邪をひきにくいし、ひいても治りが早い。教師は子どもの目だけではなく口元にも気を配るべきだ」と力説する。

 ■鍵握る舌の位置

 なぜ、この体操がインフルエンザ予防に効果があると考えられるのか。

 「それは口呼吸が鼻呼吸に変わるから」。「あいうべ体操」を考案した福岡市博多区の「みらいクリニック」院長で内科医の今井一彰医師は言う。

 説明はこうだ。

 成人が1日に吸う空気の量は約1万リットル以上。重さにして15キロを超えるが、この中には相当量のほこりやちり、細菌、ウイルス、カビなどの異物が含まれる。口から空気を取り込むと、そうした異物と一緒に乾いた冷たい空気が直接体に入るため、口腔(こうくう)内やのどが乾燥し、免疫力が落ちる。

 一方、鼻呼吸なら、鼻毛や絨毛(じゅうもう)、扁桃(へんとう)リンパ組織などである程度ブロック。さらに副鼻腔(びくう)で温められ、湿った空気が肺に入るため、感染リスクが減るというわけだ=イラスト。

 口呼吸する人には特徴がある。

 「口を閉じたとき、本来、口蓋(こうがい)(口の天井部分)に付くべき舌先が、下の前歯の裏側あたりにあるんです」(今井医師)

 確かに、口の開いた状態で舌先が上に付いている人はいない。あいうべ体操をすれば、口の周りの口輪筋と舌の筋肉が鍛えられ、舌先の位置が自然と上がり、鼻呼吸になる。

 ■行政から発信中

 大分県佐伯市企画課は11年3月、今井医師を招いた食育講演会を開いた翌週の朝礼から「あいうべ体操」の実践を始めた。以来、研修で健康教育の一環として組み込むなど、職員への浸透を徹底。健康増進課も体操のやり方を書いたチラシを作製し、市民の健康指導で活用するなど、その輪を広げている。

 職員や市民からは「風邪をひかなくなった」「花粉症が和らいだ」といった感想が寄せられ、反応は上々という。知的障害者施設などでも実践されており、企画課食育推進係の柴田真佑さんは「あいうべ体操はお金もかからず、副作用もない。習慣化することで健康への意識も高まる。インフルエンザが流行する今後、さらに普及に力を入れたい」と話している。

=2013/01/16付 西日本新聞朝刊=

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