【君(ペット)がいるから】<3>「最後のとりで」協力と絆

ペット同伴避難所で笑顔を見せる飼い主
ペット同伴避難所で笑顔を見せる飼い主
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 予想もしていなかった突然の熊本地震。動物を飼っている人たちは、必死の思いでがれきの中からペットの動物を救い出し、避難所にたどり着く。そこで言われたのは「動物は外にお願いします」という一言。ほとんどの避難所で動物は外につないでおくしかなかったようです。

 一緒に連れて避難することすら許されていない所もありました。肩身の狭い思いをしながら、車中泊を選んだ人も多かったようです。動物が嫌いな人もいるでしょうし、断水が続く状況では衛生面の心配もあります。さまざまな人が集まる避難所では、ペット同伴避難が難しいのはやむを得ないのかもしれません。

 そんな中、熊本市中央区の「竜之介動物病院」に開設した避難所は、むしろ動物が一緒でないと肩身が狭いような避難所でした。病院と併設の専門学校「九州動物学院」が入る4階建てのビルは、いざというときに役立つように設計しており、一時は全フロアを開放。16日の本震直後のピーク時は飼い主230人と犬や猫、ウサギ、フェレットなど300匹が避難しました。

 ここでは動物たちが懸け橋となり、初対面同士の避難者も会話が弾みます。飼い主たちは「この子(ペット)を私が守らなきゃ。何かしなきゃ」と積極的に動きました。動物の存在があったおかげで、自然と避難所に協力と絆が生まれました。

 ペットの猫と一緒に避難してきた年配の女性は、体調不良や心労のせいか、炊き出しを取りに行くのもつらそうな様子でした。それでも、猫のために毎日、支援物資の配布場所まで足を運んでいました。スタッフが運びます、と伝えても「自分の猫のためだから」と頑張っていました。そのおかげでスタッフと話も弾み、周囲とも仲良くなりました。

 私の病院にたどり着くまでつらい思いをしてきたと、着いた途端に泣き崩れる人もいました。動物と一緒に避難できる場所という「最後のとりで」があるだけで頑張れるという人もいました。

 私は、こうした現状と同伴避難できる場所の存在を伝えなければと思い、できる限りマスコミの取材を受け「動物は家族。家族は引き離してはいけない」と訴えました。

 避難所の動物を診て回ると、飼い主に感謝されたり、拝まれたりしました。震災前と変わりなく、いつも通りのことをしているにすぎなかったのですが、何とも気恥ずかしい気分でした。

 ただ、私たちの動物同伴避難所は一時しのぎでしかありません。早くからペットと一緒に住める住宅に関する情報を収集し、避難者に提供したことで、専門学校の授業を再開した5月7日までに避難者全員の行き先が決まりました。

 (竜之介動物病院長、熊本市)


※この記事は2016/08/18付の西日本新聞朝刊(生活面)に掲載されました。

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