家庭で「高齢者ソフト食」 宮崎の管理栄養士 黒田留美子さんに聞く つなぎ活用 下ごしらえ工夫

黒田留美子さん
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 食事をかんだり、のみ込んだりする力が弱った高齢者でもおいしく食べられる介護食「高齢者ソフト食」。11月22日の生活面で紹介したところ、読者から「自宅でできるレシピを知りたい」との声が寄せられた。考案した宮崎市の管理栄養士、黒田留美子さん(67)に、家庭で上手に取り入れるこつを聞いた。

 高齢者ソフト食は、舌で押しつぶせる軟らかさながら、普通食と変わらない見た目が特長。調理する際に、(1)食材は軟らかいもの、脂肪の多いものを選ぶ(2)つなぎ食材を使う(3)調理器具と下ごしらえを工夫する-のがポイントだ。

 (1)は、肉は赤身よりもしゃぶしゃぶ用肉やヒレ肉を使い、ひき肉はまな板の上でたたく。野菜は玉ネギやナス、根菜類がお薦め。しっかり皮をむき、繊維を断ち切るように繊維と直角に切るのが大切だ。

 (2)は、卵や山芋、玉ネギなどの粘りやとろみのある食材、油や生クリームなど口の中の滑りをよくする油脂を「つなぎ」として活用する。食材がまとまりやすくなり、すりつぶした肉や魚に加えると団子状に成形しやすくなる。

 (3)は、電子レンジや蒸し器、圧力鍋などを活用する。野菜は下ごしらえ時に、少量の塩と砂糖をまぶし、ぬらしたクッキングペーパーとラップをかけて電子レンジにかけると軟らかくなる。こうしてレンジにかけたり蒸したりゆでたりした後、煮るという「2段階調理」がお勧めだ。

 どのくらいの大きさならのみ込めるか、介護する相手をよく観察し、切り方や一口量を決めよう。茶わん蒸しは卵を多めにする、玉ネギをじっくり炒めるなど、普段の調理法を少し変えるだけでできることもある。市販品を活用したり、まとめて作って冷凍したりしながら、無理せずに取り入れてほしい。

 調理のこつやレシピは「家庭でできる高齢者ソフト食レシピ」(河出書房新社、1620円)などで詳しく紹介している。

 ★レシピ 肉じゃが

【材料4人分】

牛ももひき肉150グラム/玉ネギ200グラム/ジャガイモ150グラム/ニンジン50グラム/サラダ油小さじ2

A=玉ネギ150グラム/サラダ油大さじ1

B=卵黄1個/サラダ油小さじ4

C=薄口しょうゆ小さじ1/片栗粉小さじ1

D=砂糖大さじ2/薄口しょうゆ大さじ1と1/2/みりん大さじ1/2/酒大さじ1/だし汁1/2カップ

【作り方】

 (1)Aの玉ネギを3ミリ以下のみじん切りにし、耐熱皿に入れ、サラダ油を加えてよく混ぜる。ぬらしたクッキングペーパーをのせてラップで密閉し、500ワットの電子レンジで透明になるまで約7分加熱し、冷ましておく(2)Bを白っぽく乳化するまで混ぜ「卵のもと」を作る(3)ボウルにひき肉、(1)、(2)、Cを入れ、粘りが出るまでよくこね、一口大に丸める(4)ジャガイモとニンジンは短冊切り(幅1.5センチ、長さ3センチ、厚さ2ミリ)、玉ネギは繊維と直角(長さ2センチ、幅5ミリ)に切る(5)鍋にサラダ油をひき、ジャガイモ、玉ネギ、ニンジンの順に炒める。野菜に透明感が出てきたら(3)の肉団子を野菜の上にのせ、クッキングペーパーをかぶせる(6)Dの合わせ調味料を加え、沸騰したら弱火にして20分ほど煮る。

 ●味良く、むせる人も減った 2年前から導入 福岡の老健「舞風台」

 福岡県広川町の介護老人保健施設「舞風台(ぶふうだい)」(100床)では2014年4月、高齢者ソフト食を本格的に導入した。管理栄養士の石橋有紀さん(39)が「見た目も味も良く、食欲をそそる食事を提供したい」と、導入の2年前から宮崎市で黒田さんの研修を受けるなど、準備した。

 チキン南蛮、牛すじ煮など毎食1品はソフト食だ。肉はひいたり、蒸したりしてから調理し、野菜は葉と芯に分けて切り方を変えるなど手間はかかるが、普通食と変わらない見た目で、かむ力が弱い人も食べられる。

 食事介助をする介護職には「楽しそうに食べてくれる」「むせる人が減った」などと好評。入所者の口腔(こうくう)ケアに力を入れる歯科衛生士西島智恵子さん(60)は「歯間に残る食べかすが減り(食べ物などが誤って肺に入ることが原因の)誤嚥(ごえん)性肺炎がかなり減っている」と話す。

 入所者の男性(90)は「ここでの一番の楽しみはご飯。今日のは軟らかくて食べやすい」と、牛すじ煮をかみしめた。石橋さんは「食べたいという意欲が生まれれば元気になる。実際に食べられると栄養が取れ、かむことで脳が刺激されるなどの好循環が生まれる」と、ソフト食の効果を実感している。


=2016/12/15付 西日本新聞朝刊=

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