難航する「総合事業」 市町村で4月移行 要支援者向け新サービス 九州各県の実施0~89%

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 ●担い手不足/顕著な格差

 介護保険で全国一律だった要支援者向けのサービスは4月以降、市町村が実施するサービス(介護予防・日常生活支援総合事業)になる。この移行に伴い、国は介護費の抑制と、地域の実情に応じた多様なサービス提供を期待しているが、移行期限まで2カ月を切っても、新しいサービスを実施している市町村は少ない。九州では、大分県で移行した市町村が約9割に上る半面、佐賀県などでは難航している。新制度検討の当初から懸念されていた、担い手不足や自治体間格差が顕著になっている。

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 総合事業は2015年の介護保険制度改正で導入された。7段階ある要介護度のうち、最も軽い要支援1、2の人への訪問・通所介護を総合事業に移行し、市町村が実施する。移行期限は17年4月となっている。

 厚生労働省によると、昨年4月現在、全国で総合事業を実施している保険者(自治体・広域連合など)は32・7%。昨年の九州各県の実施率は、大分が88・9%、福岡が70%と高いが、鹿児島39・5%、熊本35・6%などは低調だ。佐賀は全20市町が移行していない=表参照。

 佐賀は、杵藤地区広域市町村圏組合(7市町)が3月、13市町は4月に移行予定だ。県によると、4月以降も大半は従来と同様の料金やサービス内容で、行政手続きだけを変更する「現行相当」。住民主体でごみ出しや見守りなどきめ細かなニーズに対応したり、利用料を下げたりする新しいサービスを提供できるのは、7市町にとどまる見通しだ。

 宮崎も26市町村中11市町村が移行しているものの、新しいサービスを提供しているのは都城市と川南町くらいという。

 利用者にとっては従来と変わらないサービスが受けられる半面、サービスの多様性や介護費抑制の趣旨からみると効果は期待できない。厚労省は「移行当初は従来と同じサービスだけでも仕方ないが、利用者の選択肢を増やし、重度化を予防するためにも多様なサービスを提供する態勢を整えてほしい」としている。

 これに対し、佐賀県長寿社会課は「市や町には少しでも前倒ししてほしいと話していたが、人材が不足しており、準備に時間がかかっている」と説明。宮崎県長寿介護課は「新しいサービスが必要ない場合もある。まずは移行を終わらせた上で、新しいサービス内容を本格的に検討したい」と話す。

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 自治体による多様なサービス提供が進まないのは、担い手不足が大きい。

 福岡県古賀市は昨年2月、県のモデル事業として、新しい訪問サービスを担うヘルパー養成講座(9日間)を実施したものの、受講者が10人しか集まらず、担い手が確保できなかった。担当者は「軽度者の介護支援は地域の力に頼る時代になる。今後、事業の意義を説明したり、研修を簡素化したりして人材を確保していきたい」と言う。

 訪問介護を担うヘルパー事業所からは「総合事業で報酬が下がり、事業所が倒産している」「現状より安い時給では働き手を確保できない」「現状でも経営が厳しいのに、報酬単価が下がれば廃業する所が多い」などの悲鳴が上がる。福岡県内の介護事業所の責任者は「新しいことに取り組もうにも人材が足りない。経営も厳しく、報酬に結びつくことしかしない傾向がある」と漏らす。

 一方、九州最大の都市、福岡市は住民主体のサービスは実施せず、従来の7割程度まで報酬を下げた上で、介護事業所による新サービスを提供する。「報酬単価を下げても、手を挙げる事業所があり、多様なサービスを提供できる」との構えだ。

 介護保険に詳しい久留米大の鬼崎信好教授(高齢者福祉論)は「各自治体に横並び意識が強く、様子見が続き、3年で順調に準備が進んだとは言い難い。地域に合わせたサービスを提供する態勢づくりに本気で取り組むべきだ」と指摘している。

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 【ワードBOX】介護予防・日常生活支援総合事業

 「要支援1」「要支援2」の人を対象にした訪問介護と通所介護(デイサービス)などとして、新しく市町村が始める事業。各市町村は2017年4月までに、全国一律の内容や料金の介護保険サービスから新事業に移行させる。移行後は市町村が事業の内容や料金、人員基準などを決められる。新サービスには、報酬単価を下げるなどした「緩和型サービス」のほか、地域住民主体のサービスなどが想定されている。


=2017/02/09付 西日本新聞朝刊=

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