嚥下食はリハビリの要 誤嚥性肺炎を防ぐ のみ込みやすさに基準

湯煎でいったん液状にした商品を小鉢などにいれて固める。肉や野菜の型枠に入れるとより実物に近くなる
湯煎でいったん液状にした商品を小鉢などにいれて固める。肉や野菜の型枠に入れるとより実物に近くなる
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ニンジンなどの野菜もペースト状にしてパックに。商品は冷凍して発送される
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 飲食物をうまくのみ込めない人にとって最も誤嚥(ごえん)しやすいのは、意外にも水だという。引っ掛かりが何もなく、誤って気管に流れ込みやすいためだ。高齢者の死因で上位にランクされる「誤嚥性肺炎」の大半は食物や唾液が口の中の細菌と一緒に気管から肺に入って起きる。高齢者にとって安全な食事は施設や病院、在宅介護の現場では欠かせない。

 人は食べ物をどのようにのみ込み、食道に送るのか。ものをのみ込む嚥下(えんげ)機能の仕組みを突き詰めると誤嚥を防ぐための「嚥下食」が見えてくる。

 「まずかみ砕いて、それを唾液と混ぜ、粘りをもたせながらまとめるようにして『食塊』を作る。この塊を舌でのどの方に送り、最後にのみ込んでいます」。そう説明するのは宮崎市で嚥下食を製造・販売する「まごころ食託宮崎」の社長、西川抒良(のぶよし)さん(49)だ。

 ミキサーにかけて細かく刻み、とろみをつければ大丈夫と考えがちだが、ばらけずにまとまりやすいことも重要になる。口の中からのどにストンと落ちず、なおかつ張り付かずに食道までいくのが理想。それが食塊をつくる意味だ。

 こうしたちょうど良い硬さ、くっつきやすさ(付着性)、まとまりやすさ(凝集性)について国が定めた「嚥下困難者用食品許可基準」に従って製造されるのが嚥下食となる。

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 具体的にはどのように作るのだろうか。加熱した肉や野菜、おかず類をミキサーでペースト状にして、規格を満たす硬さになるようゲル剤を投入。真空パックして再び加熱し、急速冷凍する。食べるときは湯煎で70度ぐらいまで温め、いったん液状にして器などに移す。常温に戻ればゼリー状に固まる。

 これを適度な大きさにスプーンでそぎ取ってあげると良い。「作りやすさ、食べさせやすさなどから時間的余裕も生まれ、介護する人にもメリットがある」と西川さんは言う。

 同社はもともと病院や学校に給食の食材として水産物を納入していた。病院や介護施設などを営業で回る西川さんは、患者や入所者のほぼ1割が上手に食べられないことを実感し、社会的貢献やビジネス性の観点から介護食への進出を決めた。宮崎県食品開発センターとも共同研究し、メニューは現在、ひじき煮、大根とさつま揚げの煮物など80種類ほどになる。病院や介護施設との取引に加え、一般家庭向けの通信販売も行っている。例えば「お任せセット」の価格は1日当たり770円(主食なし、3食分・税別)、または888円(主食付き、同)などで10日分か15日分をセット販売している。

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 超高齢社会の日本で嚥下食の重要性は日に日に増している。医療・福祉分野と食と農の連携で、国内産の農林水産物の消費拡大を図る農林水産省は2013年、「医福食農連携」の先進事例として、まごころ食託宮崎の商品を表彰している。

 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会は同年、食品ののみ込みやすさに従って嚥下食を大きく5段階に分類する基準を発表。関係省庁なども、食べやすさの度合いの統一基準づくりに乗り出している。特定分野の知識や技術に優れた認定看護師の資格制度でも「摂食・嚥下障害看護」分野を認定している。

 NTT東日本関東病院(東京)の専門医、稲川利光リハビリテーション科部長は「摂食・嚥下のリハビリは病気の回復にとって要で、嚥下食も重要な要素の一つ。ただ病院や施設によって取り組みに差がある」と指摘する。「健康維持に栄養は欠かせず、日ごろから口の衛生や歯の健康を意識する大切さを市民に知ってもらう教育も必要だ」と話している。

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 まごころ食託宮崎の問い合わせは電話=0985(28)5959。


=2017/04/12付 西日本新聞朝刊=

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