もっこ 熊本発 おんぶの輪 「密着して安心」 ふれあいたくさん 熊本地震で活躍、話題に

グランモッコは、健やかな成長を願う刺しゅうの「背守り」が、手縫いで施されている。価格は1枚1万8360円から=グランモッコ提供
グランモッコは、健やかな成長を願う刺しゅうの「背守り」が、手縫いで施されている。価格は1枚1万8360円から=グランモッコ提供
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 熊本県天草地方に古くから伝わるおんぶひも「もっこ」。子育て中の親たちが3年前、現代風にアレンジして製品化してから、インターネットを中心に評判が広まった。昨年4月の熊本地震の際には「避難生活に役立った」との声も上がり、「もっこで育児を楽しもう」と、全国にファンの輪が広がっている。

 「抱っこしているときより軽い」「子どもと密着していて安心」-。6月下旬、東京都台東区のカフェで開かれた「もっこ」の交流会。もっこを初めて使った母親たちは、おんぶの心地よさにほほ笑んだ。

 もっこは、大きな布の両端にひもが付いたシンプルな形。布で赤ちゃんをくるむようにしてリュックのように背負い、赤ちゃんの尻の下でひもを交差させ、前か後ろで結んで固定する仕組み。市販のおんぶひもは、背中から首辺りに赤ちゃんの頭がくるものが多いが、もっこは顔の高さが同じくらいになるほど高い位置でおんぶするため、背負う人の肩や腰への負担が少なくてすむ。

 もっこの使い方を教える「アンバサダー」の井上友子さん(39)は、「赤ちゃんは肩越しに同じ景色が見える。たくさん話し掛けて好奇心を刺激して」と参加者に呼び掛けた。生後4カ月の長男をおんぶした女性(34)は「子どもは視界が広がってうれしそうだし、両手が空いて家事ができるのは助かる」と語る。保育の仕事に携わる井上さんは「なかなか泣きやまない子も、もっこでおんぶすると寝てくれて大ファンになった」といい、1年前から都内で交流会を開いている。

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 もっこは、天草市牛深町など海沿いの地域に戦前から伝わる。磯で仕事をする際などに使われ、家庭で手作りされた。販売する店もあったが、時代とともに廃れていったという。

 熊本市東区の田代健太郎さん(44)、佳織さん(41)夫妻は、天草の友人からもっこを譲り受けたのをきっかけに、2014年10月に普及目的のプロジェクトを結成した。子育てグループのメンバーで手縫いしたり、型紙を配布したりしていたが、追いつかなくなり製品化し、「おんぶもっこ」としてインターネットでの販売を始めた。

 15年12月には、お笑いタレントくわばたりえさんがブログで紹介したことで注文が急増。その後、もっこのファンを増やそうと、「アンバサダー」の養成も始め、国内外に約200人が誕生した。現在、全国各地でもっこの体験会や交流会が開かれ、販売枚数は1万4千枚を突破した。

 今年1月には、田代さんは代表となって会社を立ち上げ、商品名を「グランモッコ」として、デザインも一新している。

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 もっこの使い勝手の良さは、熊本地震のときに際立った。金具がなく一枚布のため用途は幅広い。布団代わりに赤ちゃんに掛けたり、授乳ケープにしたり。おむつ替えの際は敷物にもなり、椅子に巻けば転落防止のチェアベルトにもなる。

 田代さんらは震災後、寄付を募って約400枚を製作。寄付した人のメッセージを添えて、被災者に無料で貸し出した。利用者からは、「おんぶしたままトイレに行けた」「両手が空き、足元が見やすいため避難のときに助かった」「ひもの端を結んでプライベート空間を作れた」などの声が寄せられたという。

 その様子はテレビなどで紹介され、「災害時にも役立つ」ともっこの知名度が上昇。昨夏には田代さんらが、広島や神戸など過去に災害を経験した地域を訪れ、もっこの利点を伝えて回った。

 田代さんは、「家事ができるから、寝てくれるからと大人の都合でおんぶするのではなく、子どもとふれあう方法としておんぶをしてほしい。もっこを、子育てを楽しくするツールとして使ってもらえたら」と話している。

 グランモッコ=096(221)1161。


=2017/07/04付 西日本新聞朝刊=

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