里親家庭や養子縁組した親子… 日常を知ってほしい 家族、さまざまなかたち

 ●願う幸せ 来春から全国で写真展 協力も募る

 里親家庭やファミリーホーム、養子縁組した家族の日常を写真で伝えるプロジェクト「フォスター」が始まった。現在、撮影を進めると同時に写真を募集しており、来年3月から全国各地で展示する計画だ。企画には、子どもを養親に託した生みの母親も参加しており、主催者は「さまざまな家族のかたちがあることをたくさんの人に知ってほしい」と協力を呼び掛けている。

 「私は3年前、初めて出産した娘を養子に出しました」。10月中旬、横浜市の子育て支援施設。助産師や子どもを望むカップルなど約10人の前で、女性(34)は静かに話し始めた。

 子どもの父親とは、結婚を約束して一緒に暮らしていた。妊娠をとても喜んでいたのに、ある日警察から電話があり、その後連絡がつかなくなった。妊娠5カ月。中絶することも考えたが、病院のエコー検査で小さな命が動いているのを見ると、できなかった。

 貯金は男性とともに消えた。1人で働いて育てようにも保育所は空きがなく、実家は離島のため戻っても仕事がない。「子どもにはやりたいことをやらせてあげたい。幸せになってほしい」。悩んだ末、妊娠8カ月のとき特別養子縁組を支援するNPO法人に連絡し、養親に託すことを決めた。

 「生まれてきたわが子は想像以上にかわいくて、いとおしくて。別れが切なくて何度も泣きました」

      ◇

 女性は現在、この法人のスタッフとして、産んだ子を養子として託す母親たちのカウンセリングを行っている。「つらかったことや今後どう立ち直るかなど、自分の体験が少しでも他の人たちの力になれば」との思いだ。

 別れた彼の子を妊娠したけれど家がなく車上生活を送っている、ネグレクト(育児放棄)されて育ち風俗でお客さんの子を妊娠した…。女の子たちからのSOSは全国から寄せられる。妊娠したことを誰にも相談できず、産科未受診というケースも少なくない。

 「かわいい子を手放すなんてと非難される存在。でも、喜んで手放したわけじゃない。子どもの幸せを願っていることを知ってほしい」。体験を人前で話し、写真展へ協力することを決めたのはそんな理由だ。

 女性の娘はまもなく3歳。年に1度、養親から送られてくる成長アルバムを心の支えにしている。

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 「フォスター」は英語で、血縁や法的親子関係でなく育てるという意味。プロジェクトは、静岡大人文社会科学部教授の白井千晶さん、写真家の江連麻紀さん、母子支援に取り組むNPO法人「Umiのいえ」(横浜市)代表の斉藤麻紀子さんの3人が企画した。

 親元で暮らせない子どもは全国に約4万5千人おり、8割以上が児童養護施設や乳児院などの施設で暮らす。家庭的な環境での養育を増やそうと、厚生労働省は8月、未就学児の施設への新規入所を原則停止し、里親やファミリーホームで暮らす割合を7年以内に75%にするなど、新しい方針を打ち出したばかり。同時に、行政が養育を「委託」する里親制度ではなく、冒頭の女性のように、戸籍上、養親の実子扱いとなる特別養子縁組も5年で倍増し、年千件以上の成立を目指す目標も示された。

 9月からファミリーホームなどを訪れ、撮影を進めている江連さんは「家族って、笑ったり、泣いたり、怒ったり…何げない日常の中で培われていくものと実感した」と言い、「写真を通じて他の家族と変わらないんだと、身近に感じてもらえたら」と力を込める。

 白井さんは「子どもたちもカメラを持って撮影するなど、みんなが参加でき、成長していく写真展にしたい」と話す。里親や養子縁組への理解を深めてもらうため、トークイベントも合わせて開催する計画だ。

 写真の応募や寄付の協力など問い合わせはメール=foster.photo2017@gmail.com=へ。


=2017/10/31付 西日本新聞朝刊=

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