世界の児童労働なくそう ベビー服工場を設立 バングラからの挑戦 「親に働く場を 子どもには教育を」

中村将人さん
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 ●福岡市の31歳 中村将人さん

 いま世界の子どもの10人に1人が、国際条約が禁止する「児童労働」に従事させられている。そんな子どもを1人でも減らそうと、福岡市の企業「サンデーモーニングファクトリー」がバングラデシュでベビー服作りに乗り出した。社長の中村将人さん(31)に思いを聞いた。

 まだ6、7歳だろうか。少年は黙々と棒を振り下ろし、ココナツの実を割っていた。表情はなく、空虚な目。学校には行かず、毎日この工場で働いているという。小さな肩に一家の生活がのしかかっていた。

 中村さんは、社会問題の解決をビジネスとする企業「ボーダレス・ジャパン」(東京)の一員として、2012年に初めてバングラデシュを訪れた。それまでの「社会のために何かしたい」という漠然とした思いは、ココナツ工場の少年らに出会って、「俺が児童労働を何とかする」という決意に変わった。

 《児童労働とは、就業が認められていない原則15歳未満の子どもによる労働や、18歳未満が行う危険で有害な労働。合法なアルバイトなどとは区別される。子どもの健康で安全な成長や教育の機会を妨げるとして、国際労働機関(ILO)が2025年までに根絶を目指す。ILOが昨年発表した報告書によると、世界の児童労働者数(5~17歳)は1億5160万人。地域別では、バングラデシュを含むアジア太平洋とアフリカの子どもで全体の9割を占める》

 子どもが働かざるを得ないのは、親に十分な収入がないから。バングラデシュの縫製技術を生かして親の働く場をつくろう-。中村さんはボーダレス社の子会社としてサンデー社を設立。昨年3月に現地工場を稼働させ、子どものいる女性を中心に8人を雇用した。

 「ベビー服」を選んだのは、流行に左右されにくく、一年を通じて販売できるからだ。また、ベビー服を手にするとき人は子どもの未来を考える。親世代だからこそ「『児童労働をさせない製品』が選ばれる社会にしたい」という思いを共有できると思った。

 ブランド名は世界展開を視野に、日本らしい響きの「Haruulala(ハルウララ)」とした。インターネットなどで販売を始めたが、生地の納入が遅れて売り上げが途絶えた月も。だが新規事業に「想定外」はつきもの。これまでも養蜂でハチに逃げられたり、ココナツ栽培で他国との価格競争に敗れたり挫折があった。やってみては修正を繰り返し、「地域の強みを生かし世界で通用するもの」を目指してきた。

 《バングラデシュ統計局の最新の調査では、同国の児童労働者169万9千人のうち71%が学校に通っていなかった。ILOの報告書でも、世界の児童労働者(5~14歳)の32%、3600万人が学校に通っていない。通っている68%も、児童労働をしていない場合と比較すると学力や進学で後れを取る傾向がある。教育からの隔絶が将来の不安定な雇用や貧困につながっている》

 中村さんの工場は従業員8人から、1年足らずで24人にまで増えた。「今日も児童労働で苦しんでいる子どもはたくさんいるのに、まだ24人。でも『いい工場』を作れば社会的インパクトはもっと大きくなると分かった」

 適正な賃金をきちんと支払い、作業環境が整っているのが「いい工場」。バングラデシュではまだ当たり前でないため、うわさを聞きつけた人々が毎朝、雇ってほしいと工場前に列をつくる。働き手を奪い合っていい工場が増えれば、社会全体の労働環境が改善し、みんなの暮らしも変わる。その頃には「ベビー服といえばHaruulala」と言われる存在になれているはずだ。

=2018/02/20付 西日本新聞朝刊=

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