「夢を追う時間もらえた」 給付奨学金 あしなが育英会がスタート バイト漬けから解放 九州共立大 堀之内諒さん

「同じ立場の子どもたちに、前向きになってもらえるような生き方をしたい」と語る堀之内諒さん
「同じ立場の子どもたちに、前向きになってもらえるような生き方をしたい」と語る堀之内諒さん
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 病気や災害、自死などで親を亡くした人を支援する「あしなが育英会」が、30年ぶりに奨学金を増額し、増額分は返還の必要がない「給付型」とする制度を4月からスタートさせた。貸与型を受ける全奨学生が対象で、高校生が月2万円、大学生が月3万円上乗せされる。北九州市八幡西区の九州共立大2年の堀之内諒さん(19)は、生活のためにアルバイトに追われていた昨年度を振り返り「夢を追う時間をもらえた」と語る。

 宮崎県都城市出身の堀之内さんは、3歳の時に父ががんで他界した。中学生でいじめを経験し、その教諭の対応に疑問を抱いたことから「自分が教育を変えたい」と教師を目指すように。通信制高校を卒業後、体育教師になるために九州共立大スポーツ学部に進学した。

 毎月の貸与型奨学金はあしなが育英会から5万円、日本学生支援機構から6万円。都城市で暮らす母親は自分の生活があるため頼れない。学費に加え、家賃などの生活費を稼ぐため、部活後に朝5時まで居酒屋でアルバイトに入り、エナジードリンク(カフェイン入り清涼飲料水)で眠気を覚まして大学に通っていた。多い日は週に5~6日。そんな生活だった。

 後期に入ったころから、めまいや頭痛を繰り返すように。「病院に行く時間があったらバイトしたい」と無理を続けた結果、体が動かなくなり、後期の単位の大半を落としてしまった。

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 4月から導入された給付型奨学金は、堀之内さんのような奨学生をアルバイト漬けから解放する目的で創設された。堀之内さんは「夢に費やせる時間をもらった、という気分」と語る。月の増額分を昼間の時給850円で計算すると、約35時間分に上る。給付であるのもありがたかった。高校生のころから貸与型奨学金を受けているため、卒業すれば約750万円の返済が待っているからだ。

 生活することばかり考えていた自分から解放されると、抱く夢にもバリエーションが出てきた。「体育教師として学校に勤めることだけを考えていたけど、教育的支援のできる会社を興せないか、とかいろいろ思い浮かぶようになったんです」

 あしなが育英会によると、2018年度の奨学金の対象は5111人。給付型奨学金の導入で、前年度より約15億円の財源が必要になる。その協力を呼び掛ける「あしなが学生募金」が、4月21、22日と28、29日に全国各地で行われる。福岡市・天神地区に立つ予定の堀之内さんは、この街頭活動が自分にとっても大切だと語る。街頭で「頑張ってね」と声を掛けられ、温かい人々に支えられている実感を得られるからだ。「僕らは期待されてるのかなって思うようになりました。支えてくれている人を知る機会だと思って街頭に立ちます」。あしなが育英会=03(3221)0888。

 ●「貸与型」 返済負担が重荷に

 貸与型が中心の奨学金だが、学生が数百万円の借金を背負った状態で社会に出ることになる。返済に窮したり、それ以前に進学を諦めたりするケースも少なくない。そこで注目を浴びているのが給付型奨学金だ。子どもの貧困問題を背景に国が創設した給付型も今春から本格実施が始まる。

 運営する日本学生支援機構によると、先行実施した昨年度は2503人に給付された。住民税非課税世帯の進学者などが対象で、高校の推薦が必要だ。給付額は月2万~4万円。本格導入の本年度からは対象を2万人に拡大するという。貸与型との併用も可能。

 あしなが育英会では、こうした国の流れに加え、遺児の調査(2016年度)で、高校卒業後に就職を希望する理由を「経済的に進学できないから」と答えた高校3年生が44・1%を占めたことが分かり、上乗せ分を給付型とした。工藤長彦事務局長は「のびのびと学業に力を入れて、将来を見据えてほしい」と話している。

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