パワハラ対策 極意とは 福岡ジェンダー研究所 倉富史枝さんに聞く 「許さない」職場づくりを

「パワハラと思ったら、まずは身近な人に相談して」と話す倉富史枝さん
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 ■新訳男女 語り合おう■
  ●増える非正規からの相談 
 組織における力関係を背景にした人権侵害「パワーハラスメント(パワハラ)」。国の調査では会社員の4人に1人が被害に遭っており、近年はスポーツ指導や教育の現場でも大きな問題となっている。ブックレット「そこが知りたい! パワハラ対策の極意」の改訂版を出したNPO法人「福岡ジェンダー研究所」の理事、倉富史枝さん(55)に最新事情と対策を聞いた。

 パワハラのうち、性的な嫌がらせであればセクシュアルハラスメント(セクハラ)、大学など教育機関ならアカデミックハラスメント(アカハラ)と呼ばれます。

 最近では、体罰を受けた大阪の男子高校生の自殺や柔道女子の五輪代表選手らが暴力的指導を告発したことから、スポーツ指導におけるハラスメントが大きく注目されました。また、働く女性が妊娠・出産を理由に解雇されたり、肉体的、精神的な嫌がらせを受けたりすることがマタニティーハラスメントと名付けられるなど、パワハラは多様化しています。

 厚生労働省は昨年、有識者でつくる円卓会議で初めてパワハラに関する提言をまとめました。暴力や暴言のほか、遂行できない仕事を押しつける、業務上必要のない仕事を強要することなど六つの定義に分類し、上司からだけでなく、同僚や部下からの行為も含まれるとしました。

 ただ、どこまでが適切な指導でどこからが権力を乱用した人権侵害か、実際には線引きがとても難しい。職場や慣習にもよるし、同じ言動でも、相手や状況によって受け止め方が違います。パワハラの認定自体は、被害者の感じ方を基に幅広く行い、加害者は問題のレベルに応じた責任を取るべきでしょう。

 NPOで相談事業に取り組んでいて感じるのは、非正規労働者からの相談が増えていること。「正規社員から仲間外れにされている」「宴会の幹事などの雑用を常に押しつけられる」など、不安定な雇用状況にあるため立場が弱く、被害に遭いやすいのです。

 「これってパワハラ?」と思ったら、まずは身近な人に相談してください。我慢し、悩んでいるだけでは改善は期待できません。被害者は「自分が悪いのかもしれない」という心理に陥りやすいのです。問題解決に向けては、組織内の相談窓口のほか、行政やNPOといった外部の相談機関を活用しましょう。

 企業側はどんな対策を取ればよいのでしょうか。昨年の国の調査では「過去3年間に従業員からパワハラの相談を受けた」と回答した企業は45・2%でした。しかし、予防・解決に向けて取り組んでいる企業は全体の半数以下にとどまっています。

 まずは、文書でパワハラ防止に関する規則を定め、対策委員会と相談窓口を設けましょう。メンバーは兼任させてはいけません。委員会は事実関係の確認や対策を検討するため、弁護士など社外の専門家を交えるのが理想的です。相談員もメンタルヘルスに詳しい専門家を配置しましょう。管理職向けの研修会も定期的に開いてください。

 何よりも大切なのは「パワハラを許さない」という職場の雰囲気を育てること。周囲の人が被害を黙認すれば、被害者は孤立し、パワハラがまん延する恐れもあります。普段からコミュニケーションを取り、相談し合える風通しのよい組織づくりを心がけましょう。

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 ●ブックレット「そこが知りたい! パワハラ対策の極意」改訂版発行

 ブックレット「そこが知りたい! パワハラ対策の極意」は女性研究者9人の共同執筆で2008年に初版を発行。改訂版では、近年のパワハラ問題や最新の統計データなどを盛り込んだ。A5判、120ページ、840円。問い合わせは西日本新聞社出版部=092(711)5523。

=2013/09/21付 西日本新聞朝刊=

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