障害児の偏食、好き嫌いとは異なる問題も 「カリカリ」食感の野菜で工夫 管理栄養士の取り組み

きめ細かな調理法で障害児の食を改善してきた藤井葉子さん
きめ細かな調理法で障害児の食を改善してきた藤井葉子さん
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右端にあるのがシラス入りの卵焼きとミニトマトの普通食。左側にあるのが、ペースト状にしたシラスやムース状の卵焼きなど
右端にあるのがシラス入りの卵焼きとミニトマトの普通食。左側にあるのが、ペースト状にしたシラスやムース状の卵焼きなど
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野菜などを低温の油でじっくり揚げた「カリカリ」
野菜などを低温の油でじっくり揚げた「カリカリ」
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 偏食の激しいわが子に何をどう食べさせればいいのか-。障害がある子はかむ力の発達が遅れたり、料理の色などの受け止め方が独特だったりし、一筋縄では食の幅が広がらないケースがある。そうした子に対し、一人一人に合わせた給食を提供し、ほぼ全員の食生活を改善させている施設が広島市にある。市の外郭団体が運営する「西部こども療育センター」。その取り組みを取材した。

 献立作りを一手に引き受ける管理栄養士の藤井葉子さん(51)が、センターの調理場に出てくるのは毎朝午前8時。そこから、約70人分の給食を3人の調理員とともに作り始める。

 「誰が何をどれだけ食べられるかを頭に入れてます」。3時間半の調理時間。この日の献立は、シラス入りの卵焼き、カブのサラダ、薩摩汁、白米、イチゴ。

 卵焼き一つにしても(1)胃ろう用(2)ペースト状(3)ムース状(4)軟固形(5)具なし(6)通常のもの(7)カリカリにした薄焼き(8)スクランブルエッグ‐の8種類を作る。同じメニューでも最大10種類近くの異なる調理法により、オーダーメードの給食を実現している。

 多くの子が気に入るのが、薄く切った野菜などを低温の油で10分ほど揚げた「カリカリ」。食感はスナックに近い。「食材の風味を少しずつ覚えてもらえる。苦手な素材でも、吐き出さなくなる」。藤井さんが揚げ物の端を好んで食べる子を見て着想した。

 このカリカリはすぐには出さない。もう少し素材の味が残った料理を全て食べるか、一定の時間が経過した後に、追加で食卓に並べる。給食中は保護者が隣で手伝っており、苦手な食材を口に入れた子はみんなで褒める。

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 相当な労力と時間を要する取り組みだが、藤井さんの原動力になっているのは、かつて勤めた高齢者施設で見た光景だ。

 入所者の中に知的障害がある人や、アルコール依存症の人がいた。糖尿病、そして透析。便秘と下痢を繰り返し「壮絶な最期」を迎えていた。乱れきった食生活が、病気の根本にあると藤井さんには思えた。

 2004年にセンターが完成し、働き始めると、給食をほとんど食べない子どもたちがいた。脳裏に浮かんだのは、苦痛の中で息絶えた高齢者たち。「若いうちから、少しでも食べられるものを増やさないと」。その一心で試行錯誤を始めた。

 発達障害がある子の場合、単なる好き嫌いとは異なる問題もあった。汁物の素材が汁と一体化したように見えたり、ごまは虫に、こげは異物に映ったりする特徴があるという。

 「子どもの見え方を想像した」と藤井さん。複数の皿に少しずつ盛るなどの工夫をし、まずはその子が好む食感、形状、味から食べさせた。徐々に通常の給食に近づけていくが、その改善は数カ月単位だ。

 17年度までに対応食を出した子ども102人のうち、48人は通常の給食がほぼ全て食べられるようになり、45人は一部の野菜が食べられるように成長したという。対策が確立してきた最近は、ほぼ全員に改善が見られるという。

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 実践例の成果は「自閉症の偏食対応レシピ」として15年にまとめた。センター食育研究会のウェブサイトからダウンロードできる。カリカリの作り方は素揚げ、小麦粉を付けて揚げる、天ぷら、フライ、フライパンで焼くという手法があり、キュウリや魚などの調理法を載せた。

 バランスのいい食事で健康に過ごしてほしい。そう願ってはいても、改善方法に気付かない家庭も多いはず。藤井さんは「食べる力」を育てることで、子どもの「生きる力」に着実につなげている。

=2018/05/23付 西日本新聞朝刊=

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