【「よかとこ」へ心一つ 高齢期のまちで】<4>買い物は施設の車に乗って

買い物袋を提げ、自宅前で降りる樋口シズ子さん(中央)。この日はボランティアの樋口義春さん(左)が付き添い、山本貴幸さん(右)が運転した
買い物袋を提げ、自宅前で降りる樋口シズ子さん(中央)。この日はボランティアの樋口義春さん(左)が付き添い、山本貴幸さん(右)が運転した
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 雨上がりの住宅密集地。狭く、くねった坂道をワゴン車が走る。ある民家の前で止まると、女性が会釈しながら乗り込んだ。「あら、まだ誰も乗っとらんと? お世話になります」と樋口シズ子さん(85)。

 「朝は雨がすごかったですね」。運転するデイサービス施設のサービス管理者、山本貴幸さん(35)が話し掛ける。シズ子さんは「買い物は自分で行けんけんね。助かりますよ」。顔をクシャっとさせて応じた。

 福岡市早良校区社会福祉協議会が昨年9月に始めた、校区内のお年寄りのための「買い物支援」。早良区南部の介護事業所などでつくる「さわら南よかとこネット」の加盟施設が、無償でワゴン車や運転手を提供、実現させたものだ。

 ●「困り事」を支える

 丘陵地の住宅団地は高低差が約60メートルとビルの高さに匹敵する所も。バス停は急な坂道を下り、離れた通り沿いにしかない。「往復1時間かけて買い物している方ばかり」と同社協会長の石井久光さん(65)は言う。

 同社協は昨年3月、男性ボランティアを募って「手つだい隊」を結成。庭の草取り、枝切り、電球替え…など「ちょっとした生活の困り事」を支える活動を始めたところ、「買い物に大変苦労する」「運転をやめたくても買い物があるから廃車できない」「買い物先が遠いからいずれは引っ越すつもり」など切実な声が相次いだ。送迎役として、地域を走る介護事業所の車に着目。同ネットに相談し、買い物に特化した支援の仕組みをつくっていった。

 無償での協力に賛同したのは校区外も含めて計11施設。毎週火曜、通常は4~6施設が交代しながら、日に5~6人程度を1台に乗せ、近くのスーパーまで送迎する。この日の利用は4人。「道が狭いし、ご高齢のドライバーも多いので気は使いますが、デイサービスの送迎でも当然のこと」と山本さん。「近所の人とも仲良くなれます」。事業所としても「地域密着」をアピールで
きる機会だ。

 ●利用は週1回だけ

 利用者は保険代として1回200円を支払う。希望者は公民館に申し込めば、地元の自治会長が自宅を訪れ、支援が必要かなどを確認して決める。利用登録は現在約20人。「まだ遠慮されている方が多いんですよ。田舎だから特に、そんなことまでしてもらって申し訳ないと。まだ一生懸命自分で頑張ります、という方がかなりいらっしゃるんですよね…」と石井さん。

 今のところ週1回に限定しているのは、事業所の好意に頼る以上「無理は言えない」ためだ。早良区南部でこうした買い物支援に取り組むのは早良校区だけだが、より山間部の校区などでも需要は少なくないとみられる。他校区でも同様の方法で始まれば、事業所の負担は増し、送迎役が不足するおそれもある。「始めた以上、利用者にもうできません、とは言えませんから」。周知チラシの配布も、今は控えている。

 ●善意頼みどこまで

 早良校区の買い物支援には乗り降りなどのサポート役として地元の男性ボランティア8人が当番制で1人ずつ付き添う。樋口義春さん(77)もその一人。この日も、利用者が雨にぬれないよう傘を差すなど目配りしつつ「個人的には、買い物が週1回じゃ少ないのかなと思う」。

 財政難を背景に、国はお年寄りが地域で住み続けられるよう、市町村を主体に地域の実情に合わせた仕組み(地域包括ケアシステム)づくりを促している。そのうち生活支援や介護予防の担い手として、ボランティアを想定する。

 男性の社会参画はまだ少ない。石井さんは「呼び掛ければ応じてくださる人は多い」と手応えを語る半面、より広域に永続的な取り組みが可能かといえば「今のボランティアも年を取り、人口も減る。限界は感じます」。「善意」頼みの地域づくりはどこまで可能なのか。

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 【ワードBOX】地域包括ケアシステム

 高齢者が重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で人生の最期を迎えられるよう、医療・介護・住まい・生活支援・介護予防を自助、公助、共助、互助を組み合わせて一体的に提供する仕組み。国が構築を推進しており、団塊の世代(約800万人)が75歳以上になる2025年までの実現を目指す。人口1万人程度の中学校区を単位として想定。在宅医療を充実させて病床数を減らし、医療費を抑制するのが狙い。

=2018/06/14付 西日本新聞朝刊=

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