社員全員が「ひきこもり」経験 IT企業が示す新たな働き方 体調はチャットで…無理せず働くためのルール

「ちょこれ~と」の初めての交流会では、お菓子を食べながらひきこもりの経緯などを語り合った
「ちょこれ~と」の初めての交流会では、お菓子を食べながらひきこもりの経緯などを語り合った
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パソコンがあれば場所を選ばず働けるため、山瀬健治さんは自宅やカフェで仕事をしている
パソコンがあれば場所を選ばず働けるため、山瀬健治さんは自宅やカフェで仕事をしている
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 ひきこもりの当事者たちが連携し、自分たちの声を発信しようとする動きが各地で起きている。支援機関へアクセスしづらい地域の当事者は、都会と比べ居場所が少なく、生きづらさを感じやすい。悩みを分かち合い、情報交換することで、社会とつながる一歩を踏み出そうとしている。

 ●悩み分かち合う当事者会 地方に拡大、福岡・筑後でも

 「誰かと話したいときに自由に来て、自分らしく過ごせる場所になればと思っています」。5月下旬、福岡県大牟田市であった当事者会「ちょこれ~と」の初めての交流会。呼び掛け人の玲子さん(26)=仮名=がゆっくりと語り始めた。

 中学1年で不登校になり、通信制高校を卒業して大学へ進むも中退。就職もしたが1カ月で退職し、介護が必要な家族の世話などをして過ごしてきた。発達障害があり、聴覚過敏で人混みが苦手といった生きづらさを抱えている。

 この日は5人の参加者がひきこもりになった経緯や今の課題を話し合った。「自分だけが頑張れていない」と誰かが思いを吐き出すと、「私も同じ」「あなたは十分頑張ってる」と共感したり、励ましたりして2時間を過ごした。

 玲子さんは昨年末に福岡市内であった当事者会に参加し「私だけじゃない、生きていていいんだとすごく救われた」という。都道府県と政令市には支援拠点「ひきこもり地域支援センター」があるが、筑後地域にはない。気軽に集まれる場所をつくりたいと会を立ち上げた。「都会に比べて支援情報を得にくい。この差を縮めていきたい」と話す。

 近年、こうした動きは各地で相次ぐ。4月には、当事者を主体とした初の全国組織、NPO法人「Node(ノード)」が発足。情報提供サイトを立ち上げたほか、相談窓口開設やオンライン当事者会も計画する。

 林恭子副代表理事は「行政は就労支援に力を入れるが、実際は買い物での外出すら困難という人も多い。実情を踏まえた支援も働きかけたい」と話している。

 ちょこれ~とは、次回は28日に福岡県みやま市で当事者会を開く予定。連絡はメール=hotchocolate0222@gmail.com=で。

 ●そのままの自分で働こう 都内のIT会社で生き方探し

 ひきこもりながら働く、という新しい生き方を模索する人たちもいる。昨年12月、東京都内に設立されたIT企業「ウチらめっちゃ細かいんで」は、11人の社員・アルバイト全員がひきこもり当事者や経験者。繊細さや感受性の高さを強みに変え、在宅勤務で働く。

 「おはようございます。今日は40%で始業します」。午前10時、山瀬健治さん(52)はパソコンに向かい、その日の体調をチャットで同僚に知らせた。無理せず働くためのルールだ。

 転職とひきこもりを繰り返していた昨年4月、当事者の交流会で佐藤啓社長(45)と出会った。佐藤さんもいとこが当事者で、別の会社を経営していた時に人手不足に悩まされ「在宅の仕事ならひきこもりの人に任せられるのでは」と、同社を立ち上げた。

 仕事はホームページ制作やアプリ開発、オンラインでのパソコン指導など。完全に在宅で働けるため、北海道や新潟在住の当事者もいる。「組織になじめず通勤も苦痛で仕事が続かなかった」山瀬さんも今はストレスなく働けている。

 佐藤さんは「みんなまじめで責任感が強く、きっちり仕事をしてくれる。今後は他企業への派遣にも力を入れ、働く場を増やしたい」と話している。

 ★ひきこもり 仕事や学校に行かず、家族以外とほとんど交流しない状態が6カ月以上続くこと。2015年の内閣府調査では15~39歳で推計54万人。40歳以上も含めると100万人近いとの見方もあり、ひきこもりの長期化、高齢化が課題となっている。

=2018/06/15付 西日本新聞朝刊=

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