「全国的にも珍しい」100人の若手農家が連携 害獣駆除へネットで資金、ICT活用も

箱わなの前で「害獣被害による離農ゼロを目指したい」と話す宮川将人さん(中央)
箱わなの前で「害獣被害による離農ゼロを目指したい」と話す宮川将人さん(中央)
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「罠ガール」第2巻表紙
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 イノシシなどによる農作物への食害が深刻化する中、熊本県内の若手農家が「くまもと☆農家ハンター」を結成、本格的な駆除に乗り出している。インターネットで資金を募るクラウドファンディングや、遠隔監視システムなどの情報通信技術(ICT)を活用、20~30代を中心に約100人の農家が連携した試みは「全国的にも珍しい」(農林水産省担当者)という。

 かんきつ類の栽培で知られる熊本県宇城市三角町。代表で洋ラン農家の宮川将人さん(39)を訪ねると、わなを仕掛けた竹林へ案内してくれた。餌の米ぬかを置いた箱わなに、イノシシが入ればセンサーが反応して、扉が閉まる。

 近くの木には自動撮影カメラが据え付けられ、センサーが作動したことを即座に通知、害獣を撮影して画像データとしてメンバーのスマートフォンなどに届ける仕組みだ。「これで見回りを省力化でき、成果も共有できるのでモチベーションの維持につながる」と宮川さんは説明する。

 「もう農業やめようと思うとたい」。結成のきっかけは、知り合いのデコポン農家の一言だった。苦労して育てたデコポンが収穫直前に食べ尽くされ、がっくりと落ち込んでいた。食害は農家に精神的なショックや経済的な打撃を与えるだけでなく、畑に近づくことへの恐怖心まで植え付ける。作り手を守らなければ-。2016年4月、宮川さんは仲間と会を立ち上げ、同じ悩みを持つ参加者を募った。

 メンバーが作る農作物を返礼品としたクラウドファンディングで350万円を集め、箱わな40基とカメラ10台を購入。必要な狩猟免許は約30人のメンバーが取得し、それ以外の人も畑に野菜かすを残さない、見通しをよくするといった害獣を寄せ付けない工夫を学び合い、実践を始めた。活動が本格化した昨秋以降、捕獲したイノシシは100頭を超える。

 国の調査によると、野生鳥獣による農作物被害額は全国で172億円(16年度)。イノシシとシカによる被害で100億円を超える。イノシシの推定個体数は25年間で約3倍に増加しているが、狩猟免許所持者数は3割以上減少している。

 「消防団のように農地を自分たちで守る活動を通して、地域を元気にし、絆も深めていきたい」と宮川さん。今後は捕獲したイノシシを食肉にしたり、堆肥やペットフードに加工したり有効活用する取り組みも本格化させるつもりだ。

 ●コミックの世界では女子高生猟師が活躍 緑山のぶひろさん「罠ガール」

 “農家ハンター”はコミックの世界でも話題を呼んでいる。親が農業を営む田舎町の女子高生が、作物を守るために害獣を捕獲する姿を描く「罠(わな)ガール」(KADOKAWA)。作者の緑山のぶひろさんは福岡県在住で、漫画家兼農家。わな猟免許を所持し、捕獲にも取り組む。わなの仕組みや解体の様子など、現場を知るからこその具体的な描写が売りだ。

 緑山さんは大学卒業後、東京で漫画家のアシスタントなどをして、出身地の福岡に戻ってきた。両親と米や野菜を作りながら漫画を描いている。

 久しぶりに戻った古里で驚いたのがイノシシやシカによる農作物被害の拡大。近隣農家の多くも頭を抱えていた。現状を知ってもらいたいと漫画の題材にし、親しみやすいよう高校生の女の子を主人公に据えた。「農業とは無縁の若い人たちにも興味を持ってもらえたらうれしい」と話す。

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 コミック誌「電撃マオウ」で連載中の「罠ガール」第2巻(27日発売)を緑山さんのサイン入りで読者3人にプレゼントします。住所、氏名、年齢、電話番号、紙面の感想を書いて、はがきは〒810‐8721(住所不要)西日本新聞生活特報部「罠ガール」係へ。メール、ファクスでも受け付けます。20日必着。当選者の発表は発送(発売日以降)をもって代えます。

=2018/07/10付 西日本新聞朝刊=

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