夏休み明け、痩せて登校する小学生も…子どもの虐待防ぐ解決策は?

勝部麗子さん(大阪府豊中市社協のCSW)
勝部麗子さん(大阪府豊中市社協のCSW)
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谷村幸子さん(ななっこ料理道場運営委員会代表)
谷村幸子さん(ななっこ料理道場運営委員会代表)
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堀井智帆さん(福岡県警「福岡少年サポートセンター」係長)
堀井智帆さん(福岡県警「福岡少年サポートセンター」係長)
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井上幸雄さん(アジアに生きる会・ふくおか)
井上幸雄さん(アジアに生きる会・ふくおか)
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 子どもの虐待を防ぐ解決策を探ろうと「子ども虐待防止市民フォーラム」が先月、福岡市・天神のエルガーラホールで開かれた。9回目となる今年のテーマは「ひとりぽっちをつくらない~このまちで共に生きる」。多様な問題を抱える家族を地域の人たちがどう支えていくか、議論を深めた。

 基調講演したのは、大阪府豊中市社会福祉協議会のコミュニティソーシャルワーカー(CSW)、勝部麗子さん。講演後、福岡市城南区で小中学生対象の料理教室「ななっこ料理道場」を運営する谷村幸子代表▽少年の立ち直りを支える福岡県警「福岡少年サポートセンター」の堀井智帆係長▽親が外国人の子どもの教育問題などに取り組む「アジアに生きる会・ふくおか」の井上幸雄さん-の3人がゲストとして登壇し、トークセッションが行われた。

 CSWは2004年から大阪府で全国に先駆けて始まった取り組み。ひきこもりや「ごみ屋敷」など、制度のはざまにいたり複数の問題を抱えていたりする人は行政支援の網からこぼれがちなため、CSWが中心となって住民と連携し、当事者を支える仕組みづくりを進めている。豊中市社協もさまざまな分野の人と連携し、発達障害児や乳児の家族会など約50のプロジェクトを立ち上げてきたという。

 勝部さんは「経済的貧困やドメスティックバイオレンス(DV)、虐待などが複雑に絡み合っている」と解決の難しさを説明する。「子どもの6人に1人が相対的貧困というが、私たちの身近にはそれだけ多くの苦しい家庭がある。誰もが滑り落ちてしまう可能性がある社会で、地域のみんなが声を掛けてくれる町づくりが大切だ」と語った。

   ◇    ◇

 トークセッションでは、具体的な地域の関わりについて議論を進めた。

 地域の児童委員も務める谷村さんは2年前、給食がない夏休みが明け、痩せて登校する小学生の姿を見て、「子どもが安心できる居場所をつくり、自分で料理して食べられるように」と教室を始めた。「料理を覚えたい子はいらっしゃい」と広く呼び掛け、月1回平均18人がカレーや団子汁など簡単な料理を学ぶ。

 これに対し、勝部さんは「気軽に来られる居場所づくりから、個別支援につなげることは意義がある」とした上で、谷村さんのような取り組みや全国に広がった「こども食堂」が、本当に必要な人に届いているか、という見方も依然としてあることを指摘した。

 支援が必要な人に、どうしたらつながれるのか。堀井さんは「埋もれた親子」に出会うため、幼稚園や保育所での講演活動に力を入れている。保護者は毎日送り迎えがあり、先生との距離が近いため参加してもらいやすい。「実は私も悩んでいる」と打ち明けやすい環境をつくろうと心掛けているという。「問題行動を起こす子の背景には、家庭で満たされない寂しさや孤独があり、彼らの心の傷や孤独に寄り添うことが大切だ」とも話した。

 複数の問題を抱える人たちが、「外国人」であるためにさらに困難が増えるケースもある。

 井上さんは、外国人女性の支援活動を通じて、子どもの虐待に遭遇することがある。日本人男性とフィリピン人女性の間に生まれた子を巡り、父親が認知や養育費の支払いを拒否する状況があり、「究極のネグレクト(育児放棄)」と語気を強めた。他にも、発達障害の子どもがいる中国人の母親が、日本人の夫や義父母から孤立し、「自分が子どもを虐待してしまいそうで怖い」と母国へ一時帰国した話などを紹介。「言語や文化が違い、家庭や地域で孤立しやすい外国人に想像力を持って関わって」と呼び掛けた。

 勝部さんは以前支援した若者に、泣きながら「来世で幸せになってもいいかな」と言われた話を紹介した。幼少期から親の離婚や再婚により家庭に居場所がなく、住居を確保してくれる大人の元で「危ない橋」を渡りながら一生懸命働いたが、体調を崩して21歳で路上生活になったという。「行政の問題は、こうした子どもに対し、居住や生活指導など包括的に支援できる機関がないこと」と指摘した。

=2018/09/07付 西日本新聞朝刊=

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