依存症の回復目指して 北九州マック 本音で話す 分かり合うために 言いっ放しの聞きっ放し 無力さを実感することから

ミーティングの意義について語り合う坂本〓(〓は「かねへん」に「英」)輔さん(左)と高田和久さん
ミーティングの意義について語り合う坂本〓(〓は「かねへん」に「英」)輔さん(左)と高田和久さん
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 柔らかな日が差し込み、秋風が通り抜ける。ビルの3階にある1室で10人が輪になって椅子に座り、語り始めた。ここは依存症者が回復を目指す施設「北九州マック」(北九州市小倉北区)。アルコール、ギャンブル、薬物、ゲーム、性依存症などを抱える人が通う。活動の柱は、自分の経験を振り返る「ミーティング」。参加者にとってどんな場なのだろうか。

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 「病気だとは思わず、いつでもやめられると思っていた」「家族がばらばらになった」「今でも(依存の対象に)手を伸ばしそうになる」「当時は(覚醒剤や酒などに)依存しなければ生きられなかった」…

 ぽつりぽつりと語られるのは、後悔や、家族への謝罪。依存の対象は違っても、そこには分かり合える経験や思いがあった。

 「ミーティングを通して自分の心と生き方を見つめ直したい」と語った男性(61)は薬物とアルコール依存症だという。27歳のとき「スナックのボーイに勧められて5千円で」初めて、覚醒剤を買った。好奇心から使ってみると、すーっと気分がよくなった。「それ以来たまぽん(ときたま使う)になっちゃいました」

 逮捕されてもやめられず、覚醒剤を断とうとする中で、酒にも依存してしまう。マックに出会い、初めて過去を振り返り、元妻や子どもを傷つけたことに思い至った。つらい過去に向き合うことで「悲惨な生活に戻りたくない。人間らしい暮らしがしたい」と、日々決意を新たにしているという。

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 午前と午後に約90分ずつ、土日も毎日開かれる。「言いっ放しの聞きっ放し」が原則。聞き手は黙って耳を傾け、内容は胸の中にとどめておく。だからこそ、安心して本音で話せる。

 ミーティングには、米国発のアルコール依存症者自助グループ「アルコホーリクス・アノニマス(AA)」のプログラムを導入。自分が無力であることを認めることが回復のスタートで、大事にされている。

 親に「のたれ死ぬか、マックに行くか」と迫られ2年ほど前から通うギャンブル依存症の男性(27)は、いったんやめてまた手を出す“再発”の体験談などを聞くうちに、「自分は欲求をコントロールできないんだ」と心から無力さを感じ、「誰かに助けてもらってもいい」と思えるようになった。

 借金してもパチンコがやめられず7年ほどの間に800万円をつぎ込んでいた。今もパチンコ店の前を通ると、気持ちが揺れる。

 ほぼ同じメンバーが集まるので、以前聞いた話を繰り返し聞くこともある。「自分の状態によって、感じ方が変わるんです。自分の過去を照らし合わせて共通点を見つけたり、新たな発見があったり」。人の話が自分を映す鏡のような存在でもあるという。

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 看護師で、精神科での勤務経験もある施設長の高田和久さん(56)は医療現場の治療にはない当事者のミーティングの力をこう語る。「医師など医療従事者との関係を上下関係のように感じ、心を閉ざしてしまうケースもある。同じように悩みもがいている仲間の話は、一体感と共感を生み、一人じゃないという実感が回復の原動力になる」

 1~2年ほどで“卒業”していく人が多いという。ミーティング以外にも調理実習や清掃、運動、職探しや資格取得などの支援活動を通じて、回復と同時に自立の道も探る。

 自身もアルコール依存症で30年以上断酒を続ける坂本〓(〓は「かねへん」に「英」)輔(えいすけ)さん(76)は、スタッフとして支援に当たっている。「依存症に完治はない。依存の対象に手を出さない日を一日一日と積み重ねていくしかない」。気持ちが揺れたときは「共に頑張る仲間の存在が何よりの重しになる」と、力を込めた。

 ▼北九州マック 依存症者の支援に取り組むNPO法人ジャパンマックが2012年に開設。障害者総合支援法の地域生活支援事業に位置づけられ、運営費の補助を受ける。利用者は無料で通え、あとは寄付などで賄う。マックの施設は各地に53あり、九州では福岡市にもある。北九州マック=093(967)7691。

=2018/10/12付 西日本新聞朝刊=

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