LGBT拒む児童養護施設 カミングアウト認めぬ例も 職員の理解不足浮き彫り

児童養護施設への聞き取り調査結果を報告するレインボーフォスターケアの藤めぐみさん(左)=9月末、東京都文京区
児童養護施設への聞き取り調査結果を報告するレインボーフォスターケアの藤めぐみさん(左)=9月末、東京都文京区
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 全国の児童養護施設で、性別違和のある子どもの受け入れを拒むケースが起きていることが、一般社団法人レインボーフォスターケア(さいたま市)の調査で分かった。背景には、施設のハード面の整備や職員の理解が十分でないことがある。藤めぐみ代表理事(44)は「保護が必要な子どもが行き場を失うことはあってはならない。早急に環境を整えてほしい」と訴えている。

 児童養護施設220施設が回答した2016年の先行調査では、45%に当たる99施設が性的少数者(LGBT)とみられる子どもを受け入れた経験があるとしていた。実態を知るため、17~18年に当事者や35施設に聞き取り調査を行い、報告書にまとめ公表した。

 聞き取りでは、複数の施設が個室がないなどを理由に、LGBTの子どもの受け入れが難しいと答えた。

 ある施設は、心と体の性が異なるトランスジェンダーの子どもを「知識のない職員が安易に預かれないし、他の児童が戸惑う」と入所を断った。子どもは他の施設にも断られ、最終的に「養育が困難」とされたはずの家庭に戻ったという。

 受け入れ後の対応に問題がある事例もあった。ある施設は「女の子になりたい」という子どもに対して、周囲にカミングアウトしないよう指導した。職員が「みんなが理解できるものではないと伝えることが大事」と判断していたという。別の施設ではホルモン治療を認めなかった結果、子どもが「苦しい。生きている価値がない」という手紙を書いて施設を飛び出し、一時行方不明になった。

 「女子の服しか選べず、集団での入浴や着替えも苦痛だった」。小学校低学年から性別違和があったが、女児として施設で過ごした20代のAさんは、藤さんにこう語ったという。高校生になると、男女でフロアも区別され接触を禁じられたのがつらかったそうだ。調査でも、生活空間を男女で厳格に区切っている施設は、部屋割りやトイレなどハード面で受け入れに不安があると答えた。

 職員の知識や理解不足も浮き彫りになった。先行調査では、職員向けのLGBT研修を行う施設は半数にとどまる。今回も「当事者から相談を受けてもどう対応していいかわからない」「固定観念などで多様性を受け入れられない職員がいる」といった声が出た。

 厚生労働省は昨年8月、児童養護施設で過ごすLGBTの子どもに対してきめ細かな対応を求める通知を、全国の自治体に出している。藤さんは「施設は生活の場なので、(LGBTの)子どもが困難を感じる場面は非常に多い。個性を尊重し、個別にケアしていくことは、すべての子どもにとって大切なことではないか」と話している。

 報告書は同法人のホームページで公表している。

 ●なぜ ご飯よそう女児 座って待つ男児 性別役割分担 九州の元職員が問題提起

 九州の児童養護施設で約10年間働いていた30代の航太郎さん=仮名=は「多様な子どもたちに対応するため、ハード面もソフト面も個別化していくべきだ」と力を込める。

 出生時の性別は女性だが、幼い頃から違和感を抱いていた。施設に就職後、性同一性障害の診断を受けてホルモン治療を始めた。

 その施設では、男女の役割分担が明確だった。食事のときは男児が座って待ち、女児はご飯をよそうルール。子どもたちは職員を「兄さん」「姉さん」と呼ぶ。職員の仕事内容も、男性は主に屋外、女性は屋内と分けられていた。

 航太郎さんは、施設長から繰り返し「女性として雇っているのだから、母性が感じられる振る舞いを」と注意を受けた。他の施設の目を気にして、外部の研修には行かせてもらえない。カミングアウトして働きたい、と相談すると「子どもに悪影響を与えるし、混乱するからやめてほしい」と止められた。

 子どもたちとは離れ難かったが、女性として働くのがつらくなったことから退職。九州を離れ、今は理解のある職場で男性として働いている。

 「男らしさ、女らしさを押し付けるのは、子どもたちにとってもしんどいと思う」と航太郎さん。かつて勤めた施設で、ゲイだと打ち明けてくれた男児は「他の人にはどうせ理解してもらえないから」と傷つき、諦めていた。

 「『LGBTだから』ではなく、目の前に困っている子、苦しんでいる子がいるんだと受け止めて、寄り添った支援をすることが大切だと思う」

=2018/11/06付 西日本新聞朝刊=

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