台湾の女性国会議員38%に クオーター制着実に効果 西南大 王貞月さん講演 「男性中心の選挙文化を変えたい」

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講演する申〓榮さん
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 「政治分野の男女共同参画推進法」が5月に成立したことを受け、女性の政治参画を考える講演会が先月、福岡市で開かれた。テーマの一つは、候補者や議席に占める女性の割合を一定以上にする「クオータ制」。既にこの制度を導入している台湾の状況について、講演会で報告した台湾出身の王貞月(ていげつ)さん=西南学院大非常勤講師=に話を聞いた。

 台湾は立法委員(国会議員)の女性比率が38%。2005年の憲法改正で、定数の約3割を占める比例代表において、各政党は半数以上を女性にしなくてはならないと定められた。以降、女性議員は着実に増えている。

 王さんは今春、約20人が参加した台湾へのスタディーツアーに同行。台湾の女性議員と交流し、体験や考えを聞いた。

 「男性中心の選挙文化で、選挙期間は朝から夜までずっと動き続けている。家庭持ちの人は選挙に出るのは難しい。選挙運動を含む文化を変え、女性が社会進出しやすいように変革していくことが大事」「ベビーカーを押して就任式へ出席したことで、子連れで議会へ来ることについて議論が始まった。出産後の女性が社会復帰しにくいことをアピールしていきたい」。家庭との両立などの面でまだ課題はあるが、一人一人の行動が問題提起につながり、変化が起きている。

 王さんは、24日に投開票された統一地方選でも現地を訪れた。台湾は地方議会にもクオータ制が導入されており、4議席ごとに1議席は女性に割り当てるよう定められているという。台北市議に占める女性の割合は、今回の選挙では38%(25日時点)で、前回より数ポイント上昇した。

 王さんは「ジェンダー平等な社会を実現しようと努力する台湾の女性議員の活躍を見て、女性議員そのものへの評価が高まっている。クオータ制の果たす役割はやはり大きい」と説明する。一方、政治の場により多様な声を反映させるには「全ての議席を比例代表にし、性別だけでなく年齢や出身地、職歴などが異なるさまざまな属性の人をバランスよく候補者名簿に載せるのも一つの方法」と訴えた。

 この講演会を主催した実行委のメンバーで、台湾へのツアーを主催したNPO法人ジェンダー平等福岡市民の会理事長の富永桂子さんは「女性議員が増えたらどう社会が変わるのか、多くの人に関心を持って考えてもらいたい」と話した。

 ■同質な顔ぶれ 社会とギャップ 政党の擁立姿勢を見定めて

 「政策に性別は関係ないのになぜ?」「男性への逆差別だ」。女性の政治参加を促進する「政治分野の男女共同参画推進法」が5月にでき、このテーマで取材していると、こうした懐疑的な声をいまだに聞く。今回の講演会で登壇したお茶の水女子大ジェンダー研究所准教授の申〓榮さんも、日本の現在の政治家を「同質なメンバーで社会とギャップがある」と評した。

 衆議院議員の約9割が男性。40~60代が大半を占める。国会議員の平均所得は2412万円。政治を家業としてやっているような2世、3世議員も-。申さんはこう続ける。「私たちの実社会では所得はもっと低いし、年齢もバラバラで多様な人が生きているのに」

 申さんの言う通り、「女性」という以前に、そもそも「同質な人」ばかりが政治をしていることが極めて不自然なのだ。これでは多様な声、特に小さな声は切迫感を持って響かず、国の政策に反映されない。私が取材してきた子育てや介護など暮らしに根付いた問題は、女性議員が増えれば国会での議論はきっと変わってくるはずだ。

 世界の国会議員が参加する列国議会同盟によると、女性国会議員比率の世界平均は24%。これに遠く及ばない日本が、同法で劇的に変わるのか。この法律では候補者を「できる限り男女均等」にすることや、目標を定めることを政党へ促す。ただ、あくまで理念法で努力義務にとどまり、クオータ制のような即効性はない。効果は限定的だとする見方もある。

 女性が参画しにくい環境も問題だ。内閣府が昨年、全国の女性地方議員に実施したアンケートで、女性議員が少ない原因を尋ねたところ(複数回答)「議員活動と家庭(子育てや介護など)の両立が難しい」(79%)が最も多かった。夜遅くまでの会合など、男性中心の長時間労働が前提になっている点も改革が求められる。

 来年は統一地方選や参院選がある。女性候補者を積極的に擁立することは、多様な声に耳を傾けようとしている表れだ。申さんは女性擁立に関し「私たちが各政党の姿勢をしっかり確認することが大事」と訴える。有権者がプレッシャーを与えれば各党は取り組まざるを得ない。

 ※〓は「おうへん」に「其」

=2018/11/30付 西日本新聞朝刊=

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