治療と仕事 両立のために 企業の支援策 休職中もメール 体調に合わせ時短 福岡でセミナー

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企業における就労継続支援の在り方について意見が交わされたセミナー
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かなめクリニックで毎週行われている時間管理のリワークプログラム
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 医療技術の進歩を背景に、病気の治療をしながら働き続ける人が増えている。厚生労働省によると、1カ月以上連続して病気休業している従業員がいる企業の割合はメンタルヘルスが38%、がんが21%、脳血管疾患が12%。再び悪化させないためには、企業側のサポート態勢と、本人へのケアが欠かせない。企業の取り組みと医療機関での復職支援を紹介する。

 がんは約3割が20~64歳の働く世代での発症で、企業の受け入れ態勢が課題となっている。11月中旬に福岡市で開かれた「治療と仕事の両立支援セミナー」(同省主催)では、地元企業を例に支援の在り方について議論、企業関係者ら約100人が聴講した。

 産業医科大病院(北九州市)に1月新設された両立支援科の立石清一郎科長は、基調講演で両立支援の意義について「本人の生きがいになるだけでなく、その人の持つノウハウが失われず、社員の健康を大事にする会社として他の社員の帰属意識も増し、企業側にもプラスになる」と強調。配置転換や時短勤務などの配慮の方法を説明した。

 パネルディスカッションでは、靴製造大手ムーンスター(福岡県久留米市、従業員約870人)の田尻和真人事課長が、ある若手の男性社員が白血病になり、骨髄移植などで1年9カ月の休職を経て復職したときの経験を紹介した。

 実家近くの病院に入院したため会社から遠かったが、上司はメールなどで定期的に本人と連絡を取り、職場の状況を報告しつつ「みんな待ってるよ」と伝え続けた。産業医を通じて主治医にも病状を確認。自宅療養中は同僚が交通費を工面し忘年会に招いた。復職前は心配する両親に職場を見学してもらった。半日勤務、2時間の時短を経てフルタイムに戻ったという。

 田尻さんは社内で定めている職場復帰の手順や就業区分表=イラスト=を公開。本人に就業区分表を見せて自分の位置や目標を客観視してもらい、モチベーションを保てるようにしているという。「『焦らずゆっくり戻していこう』と語り掛けるようにしている。みんなの力があって商品ができている。一人一人を大切にしようという意識が社員に強い」と話した。

 一方、各社が自主的に定める傷病休暇や時短などの制度が未整備だったり、制度はあっても有名無実化していたりする企業は少なくない。従業員50人未満の企業は産業医の専任義務がない。福岡産業保健総合支援センター(福岡市)の織田進所長は「労働者の6割は産業医のいない小規模事業所に勤めており、そうしたところに医師や保健師を派遣している。ぜひ相談してほしい」と呼び掛けた。

 ●発達障害者の復職サポート 認知行動療法の講座

 メンタルヘルスの不調で休職した人の一部には、背後に発達障害が潜んでいる場合がある。対人関係を築くのが苦手だったり、集中力の持続が難しかったりするため、仕事をうまくこなせず周囲から責められ、二次的症状としてうつ病などを患ってしまうという。そうした自分の特性を知って対処法を身に付けてから職場復帰してもらおうと、各地の医療機関が発達障害に特化したリワーク(復職)プログラムを行っている。

 北九州市小倉南区のかなめクリニックでは、6月から発達障害の一つ、注意欠陥多動性障害(ADHD)と診断された人たちを対象に、時間管理の方法を学ぶ認知行動療法の講座を毎週火曜日に開いている。

 ADHDは時間のやりくりが苦手で、嫌なことを先延ばししがち。約束に遅れたり、締め切りを守らなかったりして、同僚や取引先の信頼を損ねることがある。書類の整理もままならない。うつ病などの治療をして復職しても、根本の課題が解決されていなければ再発を繰り返す恐れがある。このため8回講座でスケジュール帳の活用法ややるべきことの段取り、意識付けの方法など学ぶ。

 要斉(かなめひとし)院長は「うつ病で休職と復職を繰り返す人の一部に、発達障害の傾向がみられる。就労継続には職場の理解と環境改善のほかに、本人も自分をよく知り、振る舞い方を身に付ける必要がある」と話している。

 来年1~3月の時間管理講座(定員8人)の参加希望者を募っている。主治医の許可と紹介状が必要。健康保険や自立支援医療制度の対象で一部自己負担がある。かなめクリニック=093(931)4100

=2018/12/07付 西日本新聞朝刊=

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