「液体ミルク」と「粉ミルク」の違いは? 来春販売へ 育児の負担軽減に期待

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江崎グリコが来春の発売を目指す乳児用液体ミルクのサンプル品。125ミリリットル入りで、価格は未定
江崎グリコが来春の発売を目指す乳児用液体ミルクのサンプル品。125ミリリットル入りで、価格は未定
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 赤ちゃんの貴重な栄養源となるミルク。国内では粉末状のものしかなかったが、8月に厚生労働省令が改正され液体ミルクの製造、販売が可能になった。江崎グリコ(大阪市)は先月、製品化に成功し来春の販売を目指すと発表しており、いよいよ店頭に並ぶ見通しだ。粉ミルクと違ってお湯で溶かす必要がないため、災害時に役立ち、育児の負担軽減にもつながると期待されている。 

 「粉ミルクと同じ成分で、安心安全を追求しました」。11月末、都内で江崎グリコが開いた報道機関向けの液体ミルクの説明会。サンプル品を前に、同社マーケティング本部商品開発研究所の乳業グループリーダー永富宏さん(41)は力を込めた。

 開発した製品は、高温殺菌した乳成分を無菌の紙パック容器に詰めており、常温で半年間の保存が可能だ。封を開けて消毒した哺乳瓶に移し替えれば、そのまま飲ませることができる。計量やお湯の温度調節が必要な粉ミルクと比べて手間がかからず、外出時でも授乳しやすい。来春の販売に向けて、国への申請の準備を進めている。

 液体ミルクは、欧米では40年ほど前から普及していたが、国内では8月の同省令改正まで規格基準がなく、企業が製造、販売できなかった。少子化が進む中、メーカーも利益が出にくいことなどを理由に開発に二の足を踏んでいたという。

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 風向きが変わったのは2016年4月の熊本地震だ。フィンランドから救援物資として液体ミルクが被災地に届けられ、利便性が注目を集めた。同年9月には、グリコ社内で液体ミルク開発のプロジェクトが始動。永富さんは「災害弱者の赤ちゃんを守るためにできることがあると、使命感を覚えた」と振り返る。

 政府も、災害対策に加えて育児負担軽減につながるとして、解禁に向けた検討を本格化させた。同省の審議会で安全性などを検証し、改正省令では加熱殺菌などの製造方法や常温を超えない温度での保存などを規定した。

 同社が今年10月に千人の親に行ったアンケートでは、液体ミルクを「使ってみたい」と答えた人は54・5%に上った。9月に第1子を出産した福岡市南区の女性(32)も「もしものときの備蓄としてだけでなく、夫や親に赤ちゃんを預けて授乳してもらうときも安心。店に並ぶのが待ち遠しい」と歓迎する。

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 課題もある。9月に発生した北海道地震では、東京都が被災地に支援物資として海外製の液体ミルクを送ったが、使用方法などの理解が進んでおらず、ほとんど使われなかった。日本栄養士会は、災害時の液体ミルクの活用指針を来年1月にもまとめ、全国の自治体、医療従事者などに周知する計画だ。

 液体ミルクは、未開封の保存期間が粉ミルクの約1年半に比べると短い。東京都文京区は来春から約2千パックを備蓄し、期限が近づいたものは、乳児健診などで無料配布して普及に役立てる。成沢広修区長は「いざというときのために日常的に使うことが大切。取り組みを全国に拡大させたい」と意気込む。

 海外品の場合、価格は粉ミルクの2~3倍となっており、コストは割高になりそうだ。開封後は細菌が繁殖しやすいため、すぐに飲ませ、飲み残しは与えないことなど、適切な使用法について注意喚起することも大切だ。

 一般社団法人乳児用液体ミルク研究会(東京)の代表理事、末永恵理さん(39)は、ネット署名を集めるなど液体ミルクの解禁を求めて4年間活動してきた。末永さんは「ようやくここまでこられて、本当に感慨深い。保存料は使っておらず、赤ちゃんに安心して飲ませられることなど、これからは知識や使い方を広めたい」と話している。

=2018/12/14付 西日本新聞朝刊=

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