認知症の母87歳 寄り添う父95歳 「記録残すことは使命」娘が映画に 支え合う姿 1月から九州でも公開

信友直子監督
信友直子監督
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 認知症の87歳の母と、その母を介護する95歳の父の日常を、娘が記録したドキュメンタリー映画「ぼけますから、よろしくお願いします。」が、大きな反響を呼んでいる。11月3日の公開から口コミで上映館が次々に増え、全国約50館での上映が決定。1月5日からは福岡市のKBCシネマなど九州でも公開される。

 撮影・監督は、東京でドキュメンタリー番組のディレクターとして活躍する信友直子さん(57)。家族の思い出を残そうと、2001年から故郷の広島県呉市に帰省するたびに、両親の姿を撮り始めた。

 物忘れが増え始めた母が認知症と診断されたのは14年。仕事を辞め、故郷で介護することも考えたが、若い頃に夢を諦めた父から「わしがやる。あんたはあんたの仕事をせい」と言われ、両親の記録を残すことが自分の使命だと感じるようになった。

 「だんだんばかになってきよる」「分からん、分からん」。認知症を自覚して苦しむ母。一切家事をしなかった父が、リンゴの皮をむき、両手に買い物袋を提げて何度も休みながら歩く。認知症が進んだ母が「邪魔にされるなら死んだ方がええ」と泣き、普段は穏やかな父が声を荒らげる-。

 信友さんは、すぐに抱き締めたい、手を差し伸べたいと何度も葛藤し、時には涙を流しながらも、カメラを回し続けた。「家族にしか見せない認知症の母の本音は、娘の自分しか撮れない」と思ったからだ。映像を公開するかどうか迷ったが、両親は「おまえの仕事なら」と快諾してくれた。

 映画は14~17年の約1200日間を追ったものだが、撮影は今も続ける。父は98歳、母は89歳になった。母は9月に脳梗塞で倒れて入院中で、これから家族がどう過ごすか、新たなステージに直面している。

 作品は老老介護や遠距離介護の厳しい現実を映しているが、印象に残るのは愛情を持って支え合う夫婦の姿だ。信友さんは「描きたかったのは、老いや夫婦の絆、親が子を思う気持ちなど普通の小さな家族の物語。映画を見て、自分の家族に重ねて感じてもらえたら」と話している。

 映画は佐賀、熊本、大分、宮崎でも上映される。劇場情報は公式サイトで。

=2018/12/28付 西日本新聞朝刊=

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