子どもの部活動、やり過ぎ? みんなのモヤもや会議

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名古屋大准教授の内田良さん
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ライターの梅津有希子さん
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 心の中にある「もやもや」を語り合う、月1回の「みんなのモヤもや会議」。今月のテーマは「子どもの部活動、やり過ぎ?」。朝、昼、放課後、休日と、部活漬けの毎日で疲れている中高生、いませんか。「休みがない」「時間が長過ぎる」など部活動の在り方が問題になり、国は練習時間の上限など指針を策定。自治体や学校でルール作りが進んでいます。教員の働き方改革の一環としても注目されています。「しっかり休んで効率が上がった」「休み無しだったがメリットは大きい」などさまざまな声があるようです。

土日休みなし…でもメリットは大きい
 教員男性(50代)=福岡県 部活の在り方を巡り、教員の働き方改革や「ブラック部活」の問題が声高に叫ばれている。マスコミは大きく取り上げ過ぎではないか。教員は逆に働きにくくなっていると感じる。そもそも教員の仕事は時間で区切れるようなものではない。教員の部活に対するやる気を損なわないでほしい。

 会社員女性(46)=福岡市 野球部の長男(中2)は、土日とも練習や試合がある。今は平日2日が休みだが、来年度からは平日1日、週末1日が休みに。土日に練習がないと時間と体力を持て余し、繁華街に出掛けたりして健全に過ごせなくなるのではないか。休養日は教員の負担軽減が目的の一つと思うが、親としては土日は練習してほしい。

 会社員男性(47)=福岡県筑紫野市 高校生の息子は中学時代、バレーボール部だった。練習は厳しく土日も休みなし。保護者も練習試合の送迎などで大変だったが、メリットは大きかった。保健室登校になった時、全部員が家に来て励ましてくれた。厳しい指導で礼儀作法も身に付いた。息子は今でも当時の顧問を「構ってくれて一番良かった」と言う。

練習時間短め…勉強と両立できた
 高校生女子(17)=福岡市 所属している運動部は、週末の1日だけ休み。春夏は大会続きで休みがない月もあった。平日は帰宅したら夕飯を食べて風呂に入って寝るだけ。毎日へとへとで、家で勉強なんてとてもできない。週の真ん中くらいにもう1日休みがあれば、疲れも取れてめりはりある生活ができるのに…と思う。でも強豪校は休みなく練習しているし、うちの部も伝統があるので、休みを増やそうと言い出せない。

 会社員男性(29)=福岡県那珂川市 中高とも野球部。そこそこ強かったが、週に1~2日が休みで、土日に試合が入れば平日が休みになることもあった。リフレッシュできるので、練習では誰もが集中していた。休むことがチームの向上にプラスに働いていたと思う。OBからは「自分たちの頃は休みがなかったぞ」と苦労話を聞かされたこともあるが。

 会社員男性(23)=北九州市 小学校から大学まで陸上競技に打ち込んだ。練習し過ぎによるけがを防ぐため、練習時間は短めで高校では週5日2時間程度。質の高い練習ができた。通学時間が長くても続けられ、勉強との両立もできた。大学の部活動は200人の大所帯で待機時間が長く、短時間練習が難しかった。練習を休んだりやめたりする人を「なぜ入部したのか」「周りの士気を下げる」と責める雰囲気もあった。

体をいたわる大切さ教えて
 主婦(40)=福岡県 中学生のわが子は運動部に所属している。国が指針を出しても、教育委員会や学校が、子どもや先生の健康や休む権利のために相当な覚悟を持たないと、現場は変わらない。どんなに「子どもに勝たせてあげたい」と思っても、そして子どもが「休みは要らない、頑張りたい」と言っても、自分の体をいたわる大切さを教えるのも大人の責任だ。休まず頑張ることが素晴らしいという風潮の下で育てば、何らかの理由で頑張れなくなったとき、自分に生きる価値がなくなったように感じるのではないか。

 自由業男性(47)=福岡市 朝は5時半から、夏休みは1日9時間の練習…という高校生の話を聞き、あぜんとしたことがある。子どもたちが寝不足になり、疲弊するまで追い詰めることに何の意味があるのか。時代とともに練習は「短時間で効果を上げる質の高いもの」に変わっていると思っていたが…。メディアが長時間練習を「○時間もの猛練習」と美談のように伝えることにも疑問を抱く。

 

「抜け道許さないルールを」

部活動の問題に詳しい名古屋大准教授・内田良さん 3月にスポーツ庁が策定した運動部の指針によって各自治体による部活動の対策が進んでいるが、「自主練習」などの名目で抜け道を探るような動きもある。部活動の問題は、この動きを繰り返した歴史がある。

 部活動とはそもそも自主的な活動なので、練習日の他に「自主練習」が存在する学校は是正が必要だ。毎日の練習は自主的な活動ではなく、半強制的になっているということ。本来なら家族旅行など個人的理由のために休んでいいはずだ。

 ガイドラインを守らず抜け駆けするような学校が出るのは、試合やコンクールが絡んでいるから。良い成績を取るために過熱するようなら、大会の在り方も考え直した方がいい。

 トップアスリート輩出を期待される強豪校もあるが、学校の部活動は、あくまでスポーツや文化活動を楽しむためのもの、という認識が必要だ。卓球やフィギュアスケート、体操、水泳など民間のクラブチームでの養成が成功している種目もある。養成役を民間や地域に移し、部活動に投じるヒト、モノ、カネを減らして練習を週3日にするなど、方法はあると思う。

 注目されている外部指導者の活用は、教員の負担が丸ごと減り働き方改革としては効果が出るが、子どもの負担は減らない。外部指導者が休養日に理解のない場合、指針と逆行し、部活漬けが過熱する可能性もあると、自治体は念頭に置く必要がある。

 

「子どもの“好き”を大切に」

吹奏楽部を取材するライター・梅津有希子さん 吹奏楽部を長く取材している関係で、ブログのコメント欄に部活動で悩む中高生から相談が寄せられるようになり、100件近くに上る。多くは人間関係。春には新1年生から「部活がきつくてついていけない」という相談もある。その応答を「部活やめてもいいですか。」(講談社青い鳥文庫)にまとめた。

 現場で感じるのは部活動を「やらされている」のではなく「好きでやっている」人が多いということ。問題は休みにくい状況にあり、練習量の規制より休みやすい環境づくりが重要だ。

 例えば大人の有給休暇のように、年に数日は「理由なく休める日」を作るなど工夫が必要だ。「1日休むと取り戻すのに3日かかる」。私が強豪の吹奏楽部に所属していた中高時代からささやかれていて今も言われているようだが、「そんなことないよ」と言うプロの奏者もいる。

 部活動は子どもの「好き」を大切にしてほしい。私自身も練習はハードだったが楽しかったし、やってよかった。しかし、楽しめなくなったらやめていい。

 内申書への影響を心配する声もあるが、現場で教員たちに聞く限り「内申書に『部活動を途中でやめた』なんて書くわけがない」と言う。「部活動を途中で投げ出すようでは、社会でも通用しない」という話もうそだ。活躍している人はたくさんいる。漠然とした不安にとらわれる必要はない。

 

部活動の練習時間と休養日】スポーツ庁は3月「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」と題した指針を策定し、全国の自治体や学校などに通知した。指針は中学校を対象にしているが、高校にも原則適用するとしている。部活動を学校教育の一環と位置づけ「合理的でかつ効率的・効果的に取り組むこと」と明記。週2日以上の休養日▽長期休業中は長期の休養期間(オフシーズン)を設定▽平日の活動は2時間程度、休日は3時間程度▽参加する大会数の上限の目安などを定める―などを盛り込んだ。

 吹奏楽部や演劇部など文化部に関しても、文化庁が今月、運動部に準じた指針をまとめた。日々の長時間練習に加え、地域行事への参加や運動部の試合の応援に同行するなど、休養日が取りにくい現状も、文化部特有の課題として盛り込まれた。

 

=2018/12/28付 西日本新聞朝刊=

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