避妊を考える<上>アフターピル、オンライン処方に賛否 「転売など悪用リスクも」

日本で2011年に承認された緊急避妊薬「ノルレボ錠」(あすか製薬のホームページより)
日本で2011年に承認された緊急避妊薬「ノルレボ錠」(あすか製薬のホームページより)
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野崎ウイメンズクリニック院長の野崎雅裕さん
野崎ウイメンズクリニック院長の野崎雅裕さん
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 避妊に失敗したり、性的暴行を受けたりした場合に飲むと、高い確率で妊娠を防ぐことができるアフターピル(緊急避妊薬)。海外では薬局で簡単に購入できるが、日本では医師の処方箋が必要だ。入手が困難と指摘される中、厚生労働省の有識者検討会は1月から、オンライン診療で処方できないか議論を始めた。

 「性的被害は大きな心の傷になり、受診はハードルが高い。初診からオンライン診療を認めてはどうか」「転売など悪用されるリスクがある」。8日、厚労省で開かれたオンライン診療の指針見直しの検討会。現行の指針では、初診は対面診療が原則となるため、緊急避妊薬の処方を受けるには医療機関に行く必要がある。検討会では指針の「例外」のケースに緊急避妊を加えるか議論が交わされ、賛否が分かれた。

 緊急避妊薬は、毎日計画的に飲んで排卵を抑えて避妊を図る低用量ピルとは別物だ。性交後できるだけ早く服用する必要がある。しかし人目が気になって産婦人科の受診をためらったり、休診や遠方で受診できなかったりして、入手が難しい人がいる。公的医療保険の適用外で、価格は1回1万5千~2万円程度と高額だ。

 そんな中、インターネット上では個人や輸入代行業者による安い緊急避妊薬の売買が横行している。今月1日には、ツイッターで客を募り、フリマアプリを悪用して無許可で国内未承認薬を販売したとして、仙台市の男が逮捕された。

 ナビタスクリニック新宿(東京)の久住英二医師は「違法に輸入された薬も多く、偽物が紛れている可能性もあるため、ネットで購入するのは極めて危険だ」と指摘する。同院は、独自の判断で昨年9月からオンライン診療による処方を始めた。スマートフォンを使って診察し、薬を郵送する仕組みで、1月までに約70人の利用があったという。

 厚労省は指針に反し「不適切」との見解だ。しかし久住さんは「対面診察でも性感染症チェックの必要性や今後の避妊方法などを伝えることが主になるので、オンラインでも対応できる。緊急避妊薬は望まない妊娠を防ぐ最後の手段。すぐ薬を入手できることが何より重要」と強調する。

 性教育に取り組むNPO法人「ピルコン」の染矢明日香理事長によると、緊急避妊薬は欧米などでは処方箋なしで買え、若者に無料配布している国も少なくない。一方、国内では2017年に厚労省の検討会で市販薬にするか話し合われたが、悪用や乱用の恐れがあるとの理由で見送られた。性感染症の予防効果もあるコンドームを避妊具として使わず、安易に緊急避妊薬に頼る人が出てくる可能性も指摘されている。

 染矢さんらは、昨年9月から緊急避妊薬へのアクセス改善を求めるネット署名を始め、これまで1万7千以上の署名が集まった。染矢さんは「日本の中絶件数は年間16万件以上。緊急避妊薬を必要とする人が入手できる環境と同時に、性教育を充実させていくことが重要だ」と話している。

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 緊急避妊薬はあくまで非常手段。子どもを望まないなら、セックスには普段から計画的な避妊が必要だ。次回(26日付)は女性が主体的に取り組める避妊法を紹介する。

 ●緊急避妊薬 野崎医師に聞く 72時間以内に阻止率は85%

 緊急避妊薬「ノルレボ錠」の効果や副作用、飲み方などについて、野崎ウイメンズクリニック(福岡市中央区)院長の野崎雅裕さんに聞いた。

 -どんな仕組みで妊娠を避けるのか。

 「薬に含まれる黄体ホルモンの働きで排卵を遅らせたり、抑えたりする。既に排卵後だった場合も、子宮内を着床しにくい状態に変える、精子を子宮内に入りにくくするなどの効果があるとされている。着床前に飲むものなので、着床し妊娠が分かってから行う人工妊娠中絶とは異なる」

 -飲み方や妊娠阻止率は。

 「性交から72時間以内に1錠を服用する。妊娠を阻止する割合は85%ほどとされており、100%ではないと理解してほしい。飲むのが早いほど阻止率は上がる。ただ服用後の性交には避妊効果がない」

 -副作用は。

 「吐き気や頭痛、腹痛などが生じる可能性があるが、頻度は低い。服用したのに妊娠した場合、胎児への影響はないとされている。授乳中の人も飲めるが、服用後少なくとも24時間は授乳を控えてほしい」

 -妊娠が阻止できたかは、どう判断するのか。

 「一般的に、妊娠していなければ服用後2週間前後で出血がある。出血がなければ受診を。出血があっても、不正出血や妊娠初期の出血である可能性もあるので、気になることがあれば受診してほしい」

=2019/02/19付 西日本新聞朝刊=

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