職業選択で初めて自覚も…「色覚障害」早期発見の必要性、指摘の声

原嶋理佳子さんが制作したアプリ。イラストをタップすると、色覚障害の人が見えている色に切り替わる
原嶋理佳子さんが制作したアプリ。イラストをタップすると、色覚障害の人が見えている色に切り替わる
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色覚障害の人向けに作られた折り紙「Piece of Cake」。通常の折り紙より青と水色が薄く、紫と区別しやすい
色覚障害の人向けに作られた折り紙「Piece of Cake」。通常の折り紙より青と水色が薄く、紫と区別しやすい
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NPO法人「カラーユニバーサルデザイン機構」が認証した製品に表示されるマーク
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 赤と緑、赤と黒、水色とピンクなど、特定の組み合わせの色が見分けにくい色覚障害(医学用語では「色覚異常」)。かつては小学校で色覚検査を行っていたが、2003年に健康診断の必須項目から削除された。このため自覚しないまま成長し、進路を選ぶ段階になってから、自衛官や消防士など色覚に関して採用制限がある職業を選べない現実に直面するという事例も表面化しており、早期発見の必要性が指摘されている。

 大学2年のユウイチさん(20)が幼稚園児のころ、友達から「ピンクのクレヨンを取って」と言われて渡したのは、灰色だった。指摘され「子ども心に衝撃を受けた」。小学生のときには緑のペンを黒と勘違いしたり、高校生になると赤ちょうちんの色を緑と言ったりした。色の見分けにくさに自覚はあったが、真実を知ることが不安で、検査は受けなかった。

 昨年、自らが通う九州大で、芸術工学研究院の須長正治准教授(53)が色覚障害の研究のため当事者を被験者として募った際「現実に向き合いたい」と参加した。検査の結果、視細胞の一種で色を識別する「錐体(すいたい)細胞」のうち、緑を識別するM細胞が欠けていることが分かった。

 高校生の頃からパイロットへの夢を抱いてきた。仕事について調べるうちに色覚障害のある人はなれないと知ったが、昨年の検査結果を手にするまで諦められなかった。親には検査したことすら伝えていない。「小学校で一斉に検査があれば、家族も含めて早く状況を認識でき、将来の職業もそれに基づいて考えられただろうが…」と語る。

   *   *

 色覚障害は、錐体細胞が機能しないことに起因する。錐体細胞にはMの他、赤を識別するL、青を識別するSもある。日本では男性の20人に1人、女性で500人に1人とされる。

 簡易検査表を使った学校での色覚検査は1958年に義務化された。しかし色覚障害は染色体異常に基づくため「差別につながる」として、2003年からしなくてもよくなった。現在、小学校では要望に応じて養護教諭が簡易検査を行い、問題があれば専門医の受診を勧めている。

 福岡市立こども病院の後藤美和子眼科科長(49)によると、パイロットや自衛官を志望する高校生が、適性検査などで初めて気付き、来院した例がここ数年で数件あるという。「幼児の頃は、塗り絵で独特の色使いをするなど保護者が気付く場合がある。子どもの気持ちを考えると進路を決める段階で急に知ることのないよう、早い時期での検査は必要だ」と指摘する。

 須長准教授のゼミ生だった原嶋理佳子さん(23)は今春、保育士などを対象にしたアプリを卒業研究で制作した。見分けにくい色の組み合わせをタップすると、色覚障害の人が見えている色に切り替わる。「子どもと長時間接する人が見え方の特徴を知ることで、早期発見につながるのではないか」と期待する。

 日本眼科医会は先月、会員向けに発行していた冊子の内容をホームページ(HP)で公開した。「早期発見には周囲の人たちが正しく理解することが必要」として、色覚障害の特徴や日常の注意点を詳しく説明している。

 ●折り紙、家電…見分けやすい色使い 広がる

 誰もが見分けやすいような色使いを広める取り組みも進んでいる。

 東京のデザイナー、石塚亜希子さん(41)は3年前、都内の文具メーカー「トーヨー」の協力を得て、色覚障害のある人でも使いやすい折り紙を開発した。見分けにくい青と紫を区別できるよう、青と水色を薄くし、折り紙の裏に色名を記した。

 長男(9)は緑の物をオレンジと言ったり、スイカを「赤と黒のしましま」と言ったりしていた。4歳のとき、眼科で色覚障害が分かった。「この折り紙を通して、色覚障害のある人がいるということを多くの人に知ってほしい」と語る。

 折り紙の色は、NPO法人「カラーユニバーサルデザイン機構」(東京)が監修した。同機構は2004年の設立以来、自治体や企業の印刷物や製品について、色の見分けやすさに配慮しているかを検証し、基準を満たしていれば認証マークを提供している。当初、認証件数は年間数件だったが、現在は年約200件に上り、印刷物や文具、家電、電子広告など暮らしのあらゆる物に広がっている。副理事長の伊賀公一さんは「色覚障害のある人が困らない社会になるよう支援していきたい」と話す。

 折り紙は石塚さんが管理するホームページ=https://ohmykids.jp=から注文できる。15色入りで250円(送料別)。


=2019/04/05付 西日本新聞朝刊=

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