男性介護者 本音のつどい 全国ネット交流会 悩み深いから共感 苦労を分かち気持ちリセット

交流会で介護に関わる近況を報告する男性介護者たち=15日、福岡市
交流会で介護に関わる近況を報告する男性介護者たち=15日、福岡市
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 「夜寝るとき、おむつの横漏れがひどくて毎朝の世話が苦痛でした。それが専用パッドで解消された。朝のうれしさといったらないですね。つどいで情報を教えてもらったおかげです」

 認知症の母親(92)を自宅介護して6年半。福岡市東区の久野寛さん(75)が「最も悩ましい」排泄(はいせつ)について語る言葉に、周囲の参加者がうなずいた。

 15日、同市で開かれた「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」九州ブロック交流会。参加者の近況報告からは、介護の多様な実態が垣間見えた。古里に1人で暮らす認知症の父(80)を遠距離介護している記者(52)にとっても排泄は悩ましい。施設入所を判断する材料の一つでもあり、大いに共感した。

 久野さんが「おかげ」と語るつどいとは、公益社団法人「認知症の人と家族の会」福岡県支部が奇数月の第1水曜に開く「男性介護者のつどい」。この日、二十数人が参加した交流会にも多くの会員が集まった。

 仕事中心の生活で、とかく地域から孤立しがちとみられる男性だが、つどいは介護を知る貴重な窓になっている。認知症の妻(73)をグループホームに預ける男性(75)は入所前、徘徊(はいかい)や入所に悩んだ。つどいに参加するようになって「心にたまったものを吐き出すと気持ちが収まる。介護がどんな経過をたどるのかを教わり、助かっている」と感謝の言葉を繰り返した。

 介護の実践や工夫を学ぶ機会にもなる。そう感じたのは、母親(81)を自宅で介護する福岡県筑紫野市の畑山郁夫さん(63)の報告だった。車いすの母親が自分の肩を持って歩行訓練できるように、取っ手となる幅広のひもを肩の部分に縫い付けたつなぎを自作した。「訓練を始めて3カ月で言葉が出るようになった。手の震えも止まって動きが良くなるなど認知症が改善した」。こうした様子を描いた4こま漫画も配ってくれた。

 会場が和んだのは、福岡市西区の男性の報告。施設に認知症の妻を訪ねたところ、妻から「お父さんはこんなにはげていない」と言われ、帽子をかぶると「やっぱりお父さんかね」。職員たちと一緒に笑い合ったという。記者自身も感じていることだが、日々の介護には笑いもある。

      ◇

 今や介護者の3人に1人が男性という。全国ネットの事務局長、津止(つどめ)正敏立命館大教授によると、全国100カ所以上で男性の交流会が開かれており「想像以上の広がりを見せる」。それだけ交流を求める人が多いということだろう。

 支援者の女性は「まじめで優しい男性は多い。だからこそ介護と向き合い、悩むのでは」と指摘した。そんなつどいの参加者は、悩みが深いからこそ共感できる。介護の苦労を分かち合い、精神的に解放され、気持ちをリセットする。

 つどい後は懇親会が恒例になっている。デイサービスから帰る妻(65)を迎えるため、いったん離席するという男性(71)がつどいへの思いを口にした。「本音をぶつけ合えば気持ちが行き交い、何かを得られる。互いに『おい』『お前』と呼び合える仲間になれるんです」

 ◇同県支部=092(771)8595

 ●「お節介士」が支える 大阪中心に100人超

 交流会には、介護する側を支援する一般社団法人「日本エルダーライフ協会」(大阪市)の柴本美佐代・代表理事も参加し、地域介護を支える人材育成を目指して独自に制定した資格「お節介(せっかい)士」について紹介した。

 お節介士は、介護を始めるときに必要な知識や情報を身に付けたボランティア。家族らの介護が必要となった人を孤立させないように声を掛け、専門家や介護の窓口につなぐ。3時間の養成講座を受講した人に認定証を発行。大阪を中心に108人が認証された。

 堺市も地域介護を支える存在として注目。養成講座や勉強会の開催などを同協会に委託するなど連携している。柴本さんは「介護制度は初めての人にとって分かりにくい。そんな状況に困っている人を見つけてサポートするのがお節介士。介護者を支える地域のボランティアとして育てたい」と話している。


=2016/10/20付 西日本新聞朝刊=

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