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障害ある子の潜在力伸ばす iPadなどを活用、自立の道へ 福岡の支援学校教諭 福島勇さん 講習続けて20年、広がる可能性

ジョークを交えながらiPadの使い方を話す福島さん。ICTの活用方法や講習会の動画を、インターネットの「YouTube」のサイト=「174iamsam」で検索=で公開中
ジョークを交えながらiPadの使い方を話す福島さん。ICTの活用方法や講習会の動画を、インターネットの「YouTube」のサイト=「174iamsam」で検索=で公開中
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 ICT(情報通信技術)を生かし、肢体の不自由な子どもの自立や社会参加を促すヒントを20年以上、教職員や保護者らに伝え続ける先生がいる。福岡市立今津特別支援学校の福島勇教諭(56)だ。最近はスマートフォンのiPhone(アイフォーン)、タブレット端末iPad(アイパッド)の活用法を伝授する講師として、九州各地で引っ張りだこという。その人気の秘密とは-。講習会をのぞいてみた。

 大会議室のスクリーンが、iPadの画面を大きく映し出す。端末の設定を変更し、明るい画面を「まぶしさが苦手な子ども向けに」真っ暗に反転表示させたり、端末に専用のスイッチをつなげて「うまく指が動かなくても」画面上の操作ができるようにしたり…。「スイッチが1個あれば五十音キーボードで意思表示もできるし、言葉を登録すれば声を出せるアプリもある。リモート機能で家電を動かすことも可能です」と福島さん。参加者から何度もどよめきが上がった。

 この日は市立心身障がい福祉センター(中央区)の療育スタッフたちが対象。参加者の机には10台以上のiPad。視線で入力できる装置を取り付けたパソコンなども並んだ。すべて福島さんの私物という。

 スマホなどの普及に伴いiPhoneやiPadを使う人が増えても「どんな障害がある人でも使いやすい工夫や機能がある」(福島さん)ことはあまり知られてない。センターの加治木ちさ子療育第1係長は「日ごろから設定をいじることは少ない。踏み込んで使ってみようとする意識が大事ですね」と感心しきりだった。

   ◇    ◇

 福島さんは旧今津養護学校に初めて着任した1989年、こうした障害者テクノロジー研究の先駆者だった中邑賢龍さん(現東京大教授)の本に出合った。翌年、中邑さんに直接会いに行って意気投合し、誘われる形で旧厚生省の心身障害研究員に。学んだノウハウを伝えていく校外での講習会は95年ごろから始めた。

 99年には旧文部省から派遣され、米国の8州11市を視察。日本より一足先にインターネットが全盛で、脳性まひと診断された肢体不自由の女性は自宅で電話番号案内のオペレーターを務め、ネットで番号を調べて機械の音声で応じ、その稼ぎで自宅を買っていた。電動車いすの高校生2人組はヘッドレストに固定したスイッチやキーボードを操って合成音声でコミュニケーションし、そうした機器のデモンストレーターとして企業に雇われていた。「障害を『強み』ととらえる発想にも驚かされた」と言う。

 特別支援学校の生徒が卒業した後の自立や就労は、教師たち共通の願いだ。体が思うように動かない重度の障害児は「(身体機能を維持して)生きるだけで頑張っている」と福島さん。ICTが20年前よりさらに発達し、手軽に、身近になった今こそ、こうした子どもが「頑張らず、楽に稼いでいく」チャンスが広がるのでは-。福島さんはそんな思いで講習会を続けている。

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 市内各校への異動を経て、福島さんは今年、今津に戻った。7月。「目も見えず耳も聞こえていない」と診断されている小学部の児童に、視線入力装置を使い、パソコン画面上の風船を見つめれば割れるゲームをしてもらった。普段はほとんど目をつぶっている児童が、ふわふわ漂う赤や青の風船を目で追い掛け、次々と撃ち落としていった。「明らかに見えていた。医者に見せたいぐらいでしたよ…」

 重度の子どもたちの潜在能力を、可能性を、われわれはどこまで信じているだろう。大人が勝手に、その限界を決めつけてはいまいか。


=2017/08/17付 西日本新聞朝刊=

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