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見えにくい障害、どう寄り添う?「わがまま」誤解も 避難所での支援課題 自閉症スペクトラム

約700人が参加した「自閉スペクトラム症の人々と自然災害-支援のあり方を考える-」シンポジウム=2日、福岡市
約700人が参加した「自閉スペクトラム症の人々と自然災害-支援のあり方を考える-」シンポジウム=2日、福岡市
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 ●福岡でシンポ

 熊本地震や九州豪雨など大きな災害が後を絶たない中、より困難さを強いられる災害弱者がいる。外見からは分かりにくい発達障害のある人々だ。このうち、自閉症スペクトラム障害(ASD)の当事者への支援を考えるシンポジウムが2日、福岡市で開かれた。障害を理解した上でどう「寄り添う」のか。その意味を深く考える機会となった。

 ASDは個人差はあるものの、他の人とのコミュニケーションや社会的な行動が不得意とされる。被災後の避難生活は「苦痛」に違いない。「日本自閉症スペクトラム学会第16回研究大会」の一環として開催されたシンポでは、パネリストとして熊本地震や東日本大震災で支援や心のケアに携わった4人が登壇した。

 ▼身近な人頼み

 東日本大震災、熊本地震の避難所でケアに当たった室蘭工業大の前田潤教授は「ASDの方と会うことは少なかった。おそらく車中泊やテント生活だったのでは」と証言。被災時、こうした人々の避難生活は家族や身近な支援者頼みである現実を、まず提起した。

 実際、熊本県大津町の入所施設「三気の里」の松本慎太郎さんは昨年4月の熊本地震で、避難を“自己完結”した体験を語った。「情報が交錯して、一体どこで何が起こっているか分からなかった」と振り返る。

 入所者68人中、57人が自閉症。震度6強を記録した未明の本震後、グループホームや短期入所の利用者を含む88人を、職員12人が、玄関に寄せた車10台に避難させた。1時間以上かかったものの、パニックにはならなかった。ただ余震が続いたため、翌日の昼まで、全員が車中で過ごした。

 影響は地震後に徐々に現れた。体重が減り、自宅で「いつでも避難できるよう」帽子をかぶって過ごす人。障害の特性上、仮設住宅には入居せず、今も短期入所を延長して利用する人…。「どうすることが正しかったのか。また起きたら…」。松本さんは今も自問する。

 ▼人災の側面も

 こうした発達障害がある人のうち特に子どもについて、東日本大震災で当事者を調査した九州大の田中真理教授は「3重の災害弱者だ」と指摘。子どもで、障害もある上に「障害が可視化できないことによる弱さやもろさ」があると言う。

 きれいに並んだものに魅せられる傾向があり、仮設住宅を毎日見に行って「こんなところに住めていいなあ」と言う▽真っ白なご飯は食べられるが、ふりかけが掛かっていると無理-。田中さんはこうした子どもの例を挙げ「特性が理解されず、周りから不謹慎やわがままと受けとめられ、避難所などにいることができなくなる」と訴えた。無理解から追い詰められるとすれば、それは「人災」の側面もあると言えそうだ。

 ▼安心な場所を

 社会への理解が道半ばでもあり、具体的な被災時の支援策としてはやはり安心な「場」づくりが欠かせない、との認識で一致した。

 熊本地震で熊本市の特別支援学級の児童・生徒らを支援した福岡市発達教育センターの森孝一所長は、(1)特別支援学校を障害児に特化した福祉避難所に指定(2)一般避難所に福祉避難スペースを用意-することを検討していると明らかにした上で「真剣な事前の備えが必要」と力を込める。

 半面、興味深かったのは、田中さんが、こうした障害者の特性として「災害に強い存在」でもあったと強調したことだ。避難所で一晩過ごし、やっと配給されたおにぎりを、周りの大人一人一人に「食べた?」と気遣い、やっと自分の口に入れた子。別の子は、田中さんの研究室で崩れた本棚の本を率先して「片付けに来る」と言ってくれたという。

 「助ける人、助けられる人という関係は相互に入れ替わる。そういうことに気がつく周りの人を育てることも重要だ」と田中さん。支援者、要支援者という固定的な観念をなくすことが、真の意味の「共助」につながることを、絶えず意識したい。


=2017/09/07付 西日本新聞朝刊=

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