超短時間雇用で職場の「戦力」に 障害ある人の新しい働き方 東大・近藤准教授が提唱

東大の先端研で新しい働き方のモデル「超短時間雇用」を提唱している近藤准教授。9月に福岡市内で講演した
東大の先端研で新しい働き方のモデル「超短時間雇用」を提唱している近藤准教授。9月に福岡市内で講演した
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 ●「切り出し」「15分間」形態さまざま

 精神障害や一部の発達障害のある人は、働く能力があっても長時間の勤務が難しい特性がある。彼らを同じ職場で働く「戦力」として企業が迎える新しい働き方を、東京大先端科学技術研究センター(先端研)の近藤武夫准教授(41)が提唱している。業務を見直し、一部を「切り出す」ことで超短時間の就労を可能とするシステムで、既に全国で実践例もある。障害者雇用のあり方に一石を投じそうだ。

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 9月、福岡市であった「NPO法人発達障がい就労支援ゆあしっぷ」のセミナーで講演した近藤さん。もともと専門は心理学で、障害のある子どもの教育参加支援に携わってきた。

 生徒が卒業後、就労に移行する中で感じたのが、精神障害者や発達障害者が増加傾向にあるにもかかわらず「基本的に働く人、社会で活躍していく人と想定されていない」こと。週30時間以上働けなければ原則、企業に義務付けられる法定雇用率にも反映されない。

 こうした人たちは得意分野で高い能力を発揮するにもかかわらず、働く意欲があっても、1週間元気に働いた翌週はぱったり動けなくなることも。「働けないために生活保護など社会保障だけに頼らざるを得ない」ことにも疑問を感じた。

 就労の機会の格差をなくし「週3~5時間しか働けない人」でも社会参加できる手法として「超短時間労働」を考案した。

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 具体的には、職場で社員の職務を分析し「その人がやることで価値のある仕事」と「その人がやらなくてもよい仕事」に切り分ける。例えば営業職なら、客に商品を説明し、契約を取るのは本人しかできない職務であるのに対し、契約書を電子化して管理するのは、短時間しか働けない人でも十分対応が可能だ。こうした週当たり数時間程度の仕事を切り出して雇用につなげる。結果的に業務を効率化できる利点もある。

 障害の特性によってあいまいな指示では混乱してしまう人もいるため「はっきりと職務を定義することが前提だ」と近藤さん。自身の研究室でも研究補助業務に携わるスタッフを超短時間で雇用しており「15分間の皿洗い」で250円を支払う勤務も設定した。

 既にソフトバンク(東京)が昨年から先端研と連携し、障害によって長時間勤務が困難な人が週20時間未満で就業できるようにする「ショートタイムワーク制度」を本格導入。約20の部署で障害のある人がチラシデザインの制作や資料の英訳などに携わっている。

 先端研は政令市の川崎、神戸両市とも共同研究契約を結び、ノウハウなどを提供。川崎市では病院やホテルなど20社が障害者を雇用し、うち17社が雇用を継続中という。

 いずれも「通常の職場の中で障害のある人と一緒に働く枠組み」が特徴。近藤さんは「障害による理由であいさつができない、身だしなみが多少悪い人などがいても、その職務を遂行する上で問題なければそれを理解し、配慮することが大事だ」と強調した。

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 もちろん、この枠組みは法定雇用率には換算されない。ただ実際に雇用した企業に対してヒアリングすると「人手不足が解消した」「残業が減った」など満足度は高いという。

 近藤さんは「できれば、現在障害者の雇用義務がない50人以下の企業に参加してほしい」と願う。今後、雇用義務の対象企業は、より少人数の事業所にも拡大される方向。「今のうちに障害者と一緒に働くことに慣れ、生産性を上げていく方法を知ってもらう」ことが、障害の有無によって生まれがちな境界や偏見の解消につながると考えるからだ。

 「将来的に目指すのは、一人の短時間労働者(障害者)が複数の会社に雇用され、社会参加の場を広げられる地域モデルの構築」と近藤さん。多様性を認め合う社会の実現が叫ばれる中、その道筋は見えにくい。雇用面での具体的かつ実践的な方法として注目されそうだ。


=2017/10/19付 西日本新聞朝刊=

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