一人一人の「伸びる力」支えよう 熊本で多職種セミナー 障害や難病の子どもに「暮らしの選択肢」を

障害や難病のある子どもたちの「伸びる力を信じる」と題し、開催された「小児在宅多職種連携セミナー」=2月25日、熊本市の熊本保健科学大
障害や難病のある子どもたちの「伸びる力を信じる」と題し、開催された「小児在宅多職種連携セミナー」=2月25日、熊本市の熊本保健科学大
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 重い障害や難病のためたとえ寝たきりであっても、子どもたち一人一人には「伸びる力」がある。毎日の食事や学び、遊びの場などで一工夫すれば、より笑顔になれる-。医療や療育、教育など各分野の立場からこうした環境づくりのあり方を考える「小児在宅多職種連携セミナー」が2月、熊本市で開かれた。どんな子どもでも自宅や地域での暮らしを楽しみ、選択肢のある社会を目指そう、との認識を共有した。

 子どもの在宅生活を支えるさまざま活動に携わる認定NPO法人「NEXTEP(ネクステップ)」(熊本県合志市、島津智之理事長)が主催。熊本、福岡、大分、佐賀県から児童指導員や看護、介護の専門職ら約120人が参加した。

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 こうした子どもはのみ込む力が弱く、食べ物などが気道に流れ込んで誤嚥(ごえん)性肺炎を起こすリスクもある。摂食方法を調整すれば安全にのみ込むことができ、「食事の時間が楽しみや挑戦、達成感を覚える機会になる」と話したのは、社会福祉法人・小羊学園の重症心身障害児施設「つばさ静岡」(静岡市)の医師、淺野一恵さん。

 例えば、流動性のあるゆるいペースト食を口に入れると舌の前後運動にとどまる一方、ある程度形があるまとまったペースト食では、舌で押しつぶす動きが出ることなどを紹介。「食事が機能を引き出す」と述べ、ペースト食を改良する工夫を提案した。

 胃ろうなどで管を使った栄養注入が必要な子でも「家族と同じものを胃から食べられれば、においや色彩、味も楽しめる」と強調。「食事はコミュニケーション。本人も好き嫌いを表現できるし、その表情で介助側も喜びや苦痛を理解し、互いに成長できる」と食事にこだわる意味を訴えた。

 「学びはチャレンジの積み重ねであり、豊かな成長の場」。東京都立小平特別支援学校武蔵分教室主幹教諭の田添敦孝さんは「学校は障害の有無や軽重に関係なく、計画的に発達を支援する所だ」と指摘した。

 たん吸引など医療的ケア(医ケア)が必要な子どもが通学する際には親が付き添いを強いられることも少なくなく、結果的に学ぶ機会が奪われる子もいる。

 田添さんは、東京都が新年度から特別支援学校で医ケアの子ども専用のスクールバスを運行することなどを紹介。視線でパソコン入力できる装置など情報通信技術(ICT)を使ったコミュニケーション指導など「学びを拡充する」さまざまな各地の試みも挙げた。

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 関心を集めたのは、綾野剛さん主演で周産期医療の現実を描いたTBSのドラマ「コウノドリ」のプロデューサー、鈴木早苗さんの特別講演。新生児集中治療室(NICU)などの関係者を実際に取材した経験談から「医療スタッフたちは日々命に寄り添い、家族にとって一番良い選択を考えている」と、医師や看護師たちの思いを代弁した。

 一方で「(無事な出産という)奇跡の後には現実が待っている」と問題提起。出産後の赤ちゃんと親への対応、障害のある子どもの子育てなど「退院後」の暮らしを支えていく視点の重要性にも言及した。

 NICUを退院する子どもや親の支援については、熊本再春荘病院(熊本県合志市)地域医療連携室の笠育美さんが、同病院だけでなく、他院のNICUなどの患者も受け入れて行う「退院支援」を説明。在宅生活を始める前の2~3カ月、同病院に転院してもらい、家族と主治医、訪問看護師、相談支援専門員らでカンファレンスを数回開き、医ケアの指導や精神面のケアを行っている。

 主催したネクステップも「どんな境遇でも、すべての子どもたちが笑顔で暮らせる地域に」をモットーに、小児専門の訪問看護事業などを先駆的に手掛けるなど、その取り組みは全国的に注目されている。

 従来の支援制度は医療、福祉、教育など行政上の縦割りで線引きされ、前例にとらわれがち。あくまで子ども本人の「育ち」に何が必要か、何ができるのか、という視点で考えれば、枠を超えた支え合いが広がっていくのかもしれない。そんな思いを強くした。

=2018/03/08付 西日本新聞朝刊=

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