「誰もが乗りやすいバス」とは 心の段差なくせ 大分でフォーラム

低床バスは増えつつあるものの、スロープの種類や形状もさまざま。バス停によってはスペースがなく使えない場合もある (自立支援センターおおいた提供)
低床バスは増えつつあるものの、スロープの種類や形状もさまざま。バス停によってはスペースがなく使えない場合もある (自立支援センターおおいた提供)
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 バスや電車の採算が伴わないとして事業者が路線や便数を減らす傾向が強まり、地域の「足」が細りゆくなか、「障害者・高齢者誰もが利用できるバスを考えるフォーラム」が2月末、大分県別府市で開かれた。車いす利用者や支援団体、バス事業者、行政関係者らが登壇し、弱者にも優しいバスのあり方について意見を交わした。公共交通網の維持だけでなく、より使いやすいバス運行を目指すには、経営面や「心のバリアー」など現実を直視しつつ、関係者が合意形成を積み重ねながら一歩ずつ前に進む以外に道はない‐。そんな思いと「本気度」が伝わってくる議論だった。

 「誰もが乗りやすいノンステップバスなどを、もう少し普及してほしい」。フォーラムの事務局「NPO法人自立支援センターおおいた」理事長の後藤秀和さんは基調講演でこう訴えた。同法人は障害のある当事者らが障害者の自立を支援する活動に取り組み、後藤さん自身も車いすを使う。

 ●ちぐはぐな設備

 低床バスの中でも床面の地上面からの段差がほとんどないノンステップバスは、介助者がいなくても車いすの人が利用しやすい。

 国は2020年東京五輪・パラリンピックを契機に、バスなどのバリアフリー化を一層推進する方針。だが九州運輸局によると九州7県のノンステップバスの導入率は対象車両約5200台のうち25・5%、大分は16・3%(17年3月末)止まり。導入には「1台当たり2200万~2500万円」(後藤さん)のコストが事業者にのしかかる。

 後藤さんは一方で、低床バスが導入されていても「スロープの形状や種類はさまざまで、統一基準があるわけではない」と問題提起。バス停でもバスの床面との段差をなくすためにかさ上げされた歩道がある半面、縁石などが邪魔になったり、そもそもスロープを出すと車いすのスペースがない所も。ちぐはぐな設備面の現状を明らかにした。

 ●予約ができても

 議論で焦点になったのは「接遇」のあり方だ。

 普段からリフト付きのバスを利用するという車いすの北地恵さんは「前日までに予約して乗るようにしているが、運転手から聞いていないと言われることもある」と吐露。低床バスの運行をめぐっては「時刻表には低床と載っていない。時間帯も分からないので利用できない」と、運行上の“見えぬ壁”を指摘した。

 車いすは手動だけでなく多岐にわたり、電動式は本人の体重と合わせて200キロに及ぶものも。電動式を使う首藤健太さんは「小回りがきかず、重いので一度、バスに置いて行かれたこともある」と打ち明けた。

 バス事業者の間では運転手が車いすの乗客の乗降方法などを確認する研修も進んでいるが、より当事者目線に立った実践的な介助の取り組みが求められる。

 ●本音で語り合う

 大分県バス協会の脇紀昭さんによるとバス会社の乗合事業は赤字で、県内の輸送人員はピーク時の約2割。「黒字路線を赤字の穴埋めに使っている」と厳しい経営を説明した。老朽化車両の代替えには県の補助金などを活用、ノンステップバスの導入を図ると言う。

 利用のしにくさが乗客減の一因となり、赤字に直結する悪循環‐。印象に残ったのは、18歳の時の事故で車いす生活になった押切真人さんの正直な発言だ。「健常者の時、車いすの人はバスに乗らないと思っていた。今考えれば最低だが狭くなるし乗ってくるなと」。自身が車いすとなり、そんな目で周りに見られると勝手に考え、ずっとタクシーを利用してきたという。今回のフォーラム前にあらためて乗ってみると「意外に運転手が笑顔で、お客さんも『手伝おうか、ゆっくりいいよ』と声を掛けてくれて、気持ち良かった」。

 諦めに似た思い込みが利用を妨げているとすれば、設備や接遇に課題が残るとしても、それぞれ本音をぶつけ合うことが、配慮や環境改善の第一歩となる。公共交通に限らず、弱者を支える社会づくりを実現していくには「声を上げ、課題を共有する」ことが結局は近道なのだろう。

 コーディネーターも務めた後藤さんは「きょうのフォーラムを第一歩に」と呼び掛けた。会場から大きな拍手が湧いた。

=2018/03/15付 西日本新聞朝刊=

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