社会へ巣立つ前に「大学校」へ 発達障害などの若者に向け試み 高卒後の4年制 基礎・自立訓練+専門・就労支援

五灯館大学校の第1回入学式には、新入生3人が出席し、歓迎を受けた=4月23日、福岡市・天神
五灯館大学校の第1回入学式には、新入生3人が出席し、歓迎を受けた=4月23日、福岡市・天神
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 高校を卒業し、発達障害などがある人に対し、日常生活を営むために必要な訓練をする自立訓練事業(2年間)と、就職するための就労移行支援事業(同)の障害者総合支援法に基づくサービスを、計4年間の「修学年限」がある“大学”と見立て、切れ目なく提供する試みが広がりつつある。4月、福岡市・天神にも新たに「五灯館大学校」がオープンした。都心部にこうした拠点を置く事業者の狙いとは-。

 「開校」したのは、福岡県内で障害者向けの通所、入所施設を展開する社会福祉法人「野の花学園」(本部=福岡市・天神)。不登校の経験がある生徒が多く通う私立立花高校(同市東区、普通科)の敷地内に2014年、自立訓練事業所「キャリアワーク立花」を開所したのがきっかけだ。

 ●抵抗感がない名称

 発達障害はコミュニケーションが苦手な特性があり、なかなか就職できなかったり、就職しても長続きせず家にひきこもったりすることも。不登校経験者の一定程度は発達障害があるとみられ、進路の定まらない同校の卒業生などを受け入れ、生活訓練や地域活動を通して社会性を養うのが目的だった。キャリアワーク立花での訓練を終えた後は各地の就労移行支援事業所に移ってもらい、企業就労につなげる。ただキャリアワーク立花には同年、立花高の卒業生のうち6人が1期生として入所した半面、本人や親が障害を受容できず、福祉の事業所利用に二の足を踏むケースも少なくなかったという。

 文部科学省によると、学校教育法に定められた「大学」とは異なり、「大学校」との名称を用いることを制限する法律はない。今回は、キャリアワーク立花と同様に生活訓練を行い「基礎課程」とする事業所を天神に新設し、同法人が16年、近くに開設していた就労移行支援事業所の利用を「専門課程」として“通学”してもらう大学校とした。

 同様に「カレッジ」などの名称をつけ、4年通年で自立訓練と就労移行支援を行う施設は、全国でも少しずつ増えている。

 「まずは名称から抵抗感をなくしたかった」と教務長の古川慎太郎さん(45)。「必要な人を一人でも多く、福祉サービスにつなげたい」との思いからだ。

 ●都心部にある利点

 基礎課程で教務主任を務めるキャリアワーク立花の支援課長、小方国恵さん(46)は「焦って就職する必要はない。就労訓練の前に基本的な生活動作やコミュニケーション力を身に付け、特性に応じた支援をすれば、みな目に見えて変わっていく」と手応えを語る。

 キャリアワーク1期生6人のうち、男性4人が一般企業への就労を実現。例えば不器用で力加減が分からず、不安感から荒々しい行動に出がちだったAさんは、力の入れ方を「5段階の2」などと数値化して教えるなどし、1年4カ月で自立訓練を終えた。就労移行支援も経て昨年11月、リサイクル会社の職に就いた。同じく当初は何事にも無関心だったBさんも、人に伝えて話をする機会を増やし漢字を学び直すなどして、今は九州大の施設で働く。

 「葛藤していた親御さん方も、子どもが福祉施設を利用して慣れるとほどよい距離感が分かってくる。知り合いや支援者が増える利点にも気づく」と小方さん。ただキャリアワークは市中心部から遠く、距離的な理由で「福祉利用のきっかけを逃す人」も。天神での立地を選んだのは、交通の利便性が高いからだ。

 企業や店が集積する「地の利」も生かし、社会経験の場としても、企業側に協力を呼び掛けている。将来的な就労をにらみ「障害者の雇用実績がない企業側への理解を広げたい」(古川さん)との狙いもある。

 4月の入学式には20~40歳代の「新入生」3人が出席。立花高の卒業生で、20歳代の次女の晴れ姿を見守った母親は「社会に出る前の体験の場として、自分の内面ともしっかり向き合い、自主的に生きていく力を引き出していってほしい」と願った。

=2018/05/10付 西日本新聞朝刊=

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