支援は枠を超えて 小児科なくても医ケア児を受け入れ 福岡・久山療育園でシンポ 訪看ステーションがガイド本

シンポジウムに登壇した(左から)今嶋達郎さん、山下郁代さん、中野智見さん=6日、久山療育園
シンポジウムに登壇した(左から)今嶋達郎さん、山下郁代さん、中野智見さん=6日、久山療育園
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「いちばん星」が作成した重症心身障害児のためのガイドブック
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 重い障害があっても自宅で暮らす人が増えるなか、病院や訪問看護ステーションが本来の役割の「枠」を超え、こうした家族の支援に乗り出すケースが増えている。福岡県久山町の重症心身障害児者施設(重心施設)「久山療育園重症児者医療療育センター」でシンポジウムがあり、具体例が披露された。たんの吸引など医療的なケア(医ケア)が必要な人を一時的に預かる受け皿は十分ではなく、24時間介護に明け暮れる親たちの支援が徐々に広がっている。

 シンポジウムは、同園が毎年開催している公開講座の一環。「在宅重症児者との共生と支援」をテーマに開かれ、当事者家族や医療、福祉施設関係者ら約100人が参加した。

 まず登壇したのは二日市徳洲会病院(52床、同県筑紫野市)院長の今嶋達郎さん(54)。小児科専従の医師はいないものの、親の負担軽減(レスパイト)などを目的に、在宅で医ケアが必要な子どもを短期間、入院の形で受け入れている。

 「小児患者の入院先は急病に対応する急性期病院の小児科か、慢性期の患者を受け入れる重心施設となり、中間的な施設がない」と指摘。同院は神経難病患者らが7割以上入院する障害者病棟で、「小児科の診療はできないが、状態が安定した子どもの預かりは可能と考え、少しずつ受け入れるようになった」という。

 子ども用に7床を確保しているが、子どもは容体が変わりやすく、神経難病の大人の患者と一緒にケアをする看護師の負担は大きい。また一時預かりの利用は、運動会や入学式、卒業式などきょうだい児の行事がある時期に希望が重なるため「どうしても全部は受け入れられない」と今嶋さん。「受け皿を増やすには小児科医でない医師の協力も必要ではないか。基幹病院や患者家族らと関係を密にして情報を共有・発信し、地域全体の取り組みに広がるよう少しでもお手伝いできたら」と語った。

   ◇    ◇

 訪問看護ステーション「いちばん星」(同県古賀市)は本年度、重症心身障害児のためのガイドブックを発行。参加者にコピーを配った所長の山下郁代さん(54)は「私たちは普段、さまざまな家庭を訪問するので、たくさんの情報や体験談が集まる。こうした情報を横のネットワークへと広げるお手伝いも、訪問看護の大切な役割の一つ」とその動機を説明した。

 同ステーションは開設12年目。設立当初は小児の訪問看護の認知度は低く、利用者も30人程度だったという。徐々に新生児集中治療室(NICU)から退院して自宅に帰る子どもが増え、利用者も拡大。地域にも重症児を預かるレスパイト施設や放課後等デイサービス、ヘルパー事業所などが増加し、小児在宅の支援態勢は充実しつつある。

 このためガイドブックは成長の時系列に従って利用できる制度を分かりやすく記載。誕生から自宅退院、福祉サービスの導入、療育、学校選び、その後の進路-など「見たいところをすぐ開けるように」工夫し、実際の家族の声も盛り込んだ。「どんな進路や制度があり、どんなときに使えるのか、支援する私たちも理解しないと先を見越したアドバイスができない」と山下さん。作成には訪問のスタッフ全員で取り組んだ。

 山下さんは「福祉制度が使えず、疲弊している家族がいるのも現実。近くの事業所とできることを出し合い、助け合う関係を築くことも大切だ」と強調した。

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 ともに障害があり、全介助が必要な中1の長女、小5の長男と同県宇美町の自宅で暮らす中野智見さん(40)もシンポジストとして参加。実家の親たちの助けも借りながら、子育てを続けてきた母としての12年間を振り返り「割と支援は行き届くようになったが、障害児者の訪問入浴が自治体によっては認められないなど差があり、十分ではない部分も多い」と訴えた。

 ケアが必要な子どもが安心して気軽に通える送迎付きの施設が増えてほしい▽訪問看護師の自宅以外での利用も広く認めてほしい-などの具体的な要望点も挙げた中野さん。「不安だけど誰にも相談できず一人で抱え込む母親もいるかもしれない。気づいてもらえないことがまだたくさんあり、こつこつ訴えていきたい」と誓った。医療、福祉、教育など従来の縦割りや「線引き」にとらわれず、より一層柔軟な制度運用が求められる。

=2018/11/15付 西日本新聞朝刊=

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