「脱中国」で門戸拡大 台湾 交差するアジア(4)

東南アジア系の人々でごった返す台北駅構内の広場=台北市
東南アジア系の人々でごった返す台北駅構内の広場=台北市
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 車座になって談笑する人、スマートフォンで写真を撮り合う人。女性たちの頭をすっぽり覆うのは、イスラム教徒が使う赤や黄色のスカーフ「ヒジャブ」だ。台湾の交通の中枢、台北駅構内の広場は、毎週日曜日になると東南アジア系の人々の「集会場」と化す。

 無料で一日過ごせる広場は、出稼ぎ労働者たちの憩いの場だ。同郷の仲間が集まり、最後はきれいに片付けて帰る。最初は迷惑がる台湾人もいたが、今はほとんどが好意的。2年前にはイスラム教徒用に4畳ほどの礼拝室も設けられた。

 片隅で、台湾人の王江来さん(62)が車いすの母親(93)と弁当を食べていた。住み込みで母親を介護するインドネシア人のスパミさん(32)を慰労するために通っているという。「私たちを気持ちよく受け入れてくれる台湾に来て本当に良かった」。9歳の娘を祖国に残すスパミさんは笑顔を見せた。

   ◇   ◇

 台湾政府は1992年に外国人の雇用を広く認める就業服務法を施行した。最大の特徴は、日本では許可されない家事や介護、建設などの単純労働者を受け入れたこと。背景には、少子高齢化の進行や政府プロジェクト推進があった。

 台湾の出生率は1・18%(2015年)と低く、共働き夫婦が多いため家事や介護の担い手不足が深刻化。91年に始まった「国家建設6カ年計画」で公共事業が急増し、建設現場も人手不足に陥った。そこで、台湾人労働者の補充として外国人雇用を解禁したのだ。

 さらに、蔡英文政権が、中国依存型経済から脱却するため東南アジアとの交流を進める「新南向政策」を開始。昨年10月に就業服務法を改正し、外国人単純労働者に対する3年に1度の出国義務を撤廃。20万元(約74万円)に上る再入国費用が不要になった。

 外国人雇用は年々拡大し、16年は62万5千人に。東南アジア出身者が大半で、トップのインドネシアが24万5千人を占める。

 経済部商業発展研究院で新南向政策を担当する何景栄氏は「東南アジアの女性にとって男女差別や雇い主の暴力が少ない台湾は魅力的な働き場所だろう」と指摘する。

   ◇   ◇

 外国人労働者の大量流入は摩擦も生んでいる。

 2000年まで3%未満だった失業率は一時5%を超え、現在も4%近い。失業者らの間では、外国人に職を奪われる不安がある。

 待遇への不満などから失踪する例も後を絶たない。これまでに総計24万人が行方不明になり、現在も5万人が不法残留している疑いがある。

 それでも台湾は「移民」に寛容だ。そこには、信教の自由や人権重視を国際社会にアピールし、孤立化を防ぐ狙いも透ける。

 昨年12月、台北市の国際移民デーの催しで蔡総統は外国人労働者の前で力を込めてあいさつした。「台湾は移民社会。扉を開き、包容力を持って多元的文化を受け入れる。皆さん、台湾に来てくれてありがとう」
(台北・中川博之)

=2017/03/17付 西日本新聞朝刊=

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